ギルドへ
防具屋を出てから、テキトーに歩き回る俺たち…
ただ、俺の頭の中にあるのは…
3千万…
3千万か…
どうやったら、そんなに稼げるのか…
正直、金額が金額過ぎて、どうしたらいいのか全く見当もつかない。
んー…
内臓でも…
俺がそんなことを考えている間も、俺たちは道を進む。
進むごとに、景色が移り変わっていく。
いつも見慣れた景色に…
そして…
俺の視界に、ギルドの看板が目に入った。
ギルドとは言っても、冒険者ギルドの看板じゃない。
そう、商業ギルドの看板だ。
商業…
商い…
つまり、知識チートだ。
前世にあった、何かしらの娯楽の知識を売れば、金になるのでは…
俺はそう思った。
だって、前世にいた頃に読んだ漫画で、そういうシーンはたくさんあったんだ。
なら俺もきっと、億万長者に…
勝手に、笑みがこぼれてくる。
心が…
心が浮きだつ…
やば…
未来が…
俺の未来がまぶしい。
「ねぇ、気色の悪い顔してどうしたの?」
クーロからの突然の言葉…
「気色悪いってひどくないですか!」
「いやだって、気色悪かったから…」
「ひどいな…」
「いつもよりも気持ち悪いから、言ってあげた方がいいかなーて…」
何、その無駄な親切心…
しかも…
「いつもよりって何っ!?まるでいつも気色悪いみたいじゃん!!」
プイッ…
俺がそう言うと、クーロは俺から顔を逸らした。
「そ、そんなことは…」
「最後まで言えよ!あと、こっち見て言ってくれ!!頼むから!!」
クーロは視線を、俺へと戻してくれた。
だけど…
「良いと思うよ?」
「何がだよ!!」
「顔…」
「その言い方、絶対良くないだろ!!」
「そんなことは…」
プイッ…
最後まで言わずに、クーロは顔を背けた。
いや、背けやがった。
こいつ…
まぁいいや。
「ちょっと俺、中入ってくるわ。」
「へっ…?」
「悪いけど、少し待っててくれ。」
「えっ、ちょっ、君―っ!」
クーロから最後…
なんか言われた気がするけど、俺は気にせず扉を開けて中に入っていく。
中に入った感想…
冒険者ギルドとは違って、きれいだ。
以上。
雑過ぎるか…
でも、きれい…
それくらいしか…
いやもう一つ、湧いてきた感想があった。
それは…
すごく、周りからの視線を感じる。
場違い…
そんな奴が入ってきたという視線だ。
少し、そんな視線に怯んでしまう。
でも、怯んでいても何も始まらない。
だから俺は、カウンターまで足を運んだ。
目の前には、受付の女性。
俺よりも、少しだけ年上の女性。
でも、ちゃんと若くてきれいだ。
そんなお姉さんから…
「今日は、いかがしました?」
なんて答えるのがいいのだろうか…
面白い話を…
これか?
いや、違うな。
これは違うわ。
さすがにそれは分か…
「あのー…」
「は、はい。面白い話を持ってきました!」
あっ…
やちった…
で、お姉さんも、鳩みたいにぽかーんとしている。
そして何回か瞬きした後…
クスクス…
笑い始めた。
心が…
身体が震える。
身体中から、熱がばーっと上がってきた。
やばい…
マジでやばい。
汗が…
汗が…
汗が…
恥ずかしさがやばい。
今すぐ、ここを立ち去りたい。
いや、死にたい。
死にたい。
すごく死にたい。
あ~~~~~~~~~~~~~~~~~。
そしてさっきよりも、周りの視線を強く感じる。
聞こえたのか…
聞こえたのか…?
みんな、もしかして聞いてたのか…?
やばい、やばい、やばい!!!!
俺は今すぐ、ここを立ち去りたかった。
だけどそれは、逆に目立つ。
我慢だ。
我慢…
ぎゅうぎゅうと締め付けられる心…
すごく苦しい…
痛い。
心臓が痛い。
「で、どんな面白い話ですか?」
お姉さんが優しい笑顔でそう尋ねてきた。
優しかった。
身に染みた。
「俺と今度、デー…」
「そういうのは結構ですので…」
「は、はい…」
一瞬だった。
それはそう…
もう少しだけ、商業ギルドでの話は続く。




