朝のひととき…
何もない暗い世界…
その世界で、急に思考が動き出した。
いや、動き出したというよりかは、浮上したの方が分かりやすいのかもしれない。
ただどっちにしても…
この感覚を、俺は知っている。
いつも…
産まれてから今までずっと感じてきたものだから。
そう、眠りから目が覚める時の感覚だ。
まただるいながらも、なんやかんや楽しい一日が始まる…
はずなんだけど…
意識が浮上して気づいた。
右頬に、日頃は感じない感触を感じる。
これは…
「なぁクーロさん、何してんの…?」
「あっ、起きた?」
「起きたっていうか…。起こされたんけど…」
君に…
まだぼけーっとしてて、眠い…
それに身体も少しだるい。
でも違和感があることは分かった。
どんな違和感か…
こう…
ちょっととんがったもので、頬を突かれてる感じだろうか…
具体的に…
俺の直感的に言うと…
たぶん誰かさんの人差し指だろうか…
誰かさんって言いながら、犯人は一人しかいないけど…
でも、一応は尋ねてみる。
「何してたの…?」
そんな俺の一声に、クーロは可愛らしく首を傾けて…
「暇つぶし…?」
「楽しそうだね?」
人の睡眠妨げといて…
「そこそこかな…」
「人の眠り妨げといて、そこそこかー。」
せめてめちゃくちゃ楽しかったとかなら、救いようが…
ないな。
どっちにしてもないわ。
起こされた時点で、激おこぷんぷん丸だからね。
古いのかな…
きっと、古いな。
「でもあれだね。突かれると嫌そうな顔をするのはちょっと楽しかったよ?」
「クーロさん、ちょっと性格悪くない?」
「気のせいだよ。」
「そっか、気のせいか…。」
「そう、気のせい。寝顔も変な顔だなーっとか思ってなかったよ?」
「思ってたのかよ!朝から辛口すぎるわ!!」
朝くらい優しくしてよ。
いや、朝じゃなくても優しくでお願いします。
そして俺の言葉に、クーロはフフフと小さく笑う。
朝からご機嫌そうだ。
でまた、俺のほっぺたを突きだした。
「何してんの?」
「突きたくなったから、突いてるだけだよ?」
「そっか…」
大丈夫か?
こいつ…
「楽し?」
「そこそこかな。」
「またそこそこか…」
「うん、そこそこ。」
人のほっぺた突いて楽しいのかねー…
俺も今度してみようかな…
いや、したら衛兵さんにご厄介されてる未来が見える。
というか、その未来しか見えなかった。
すごいだろ。
俺、未来が見えるんだぜ。
16年間生きてきたおかげでな。
辛いよ…
そして数分後…
ツンツン…
「クーロさん、飽きない?」
「ん-、飽きないよ?やってみると、けっこう楽しいんだよ。」
ふーん…
「どう楽しいの…?」
気になったから、尋ねてみた。
そしてクーロは、目をパチパチとしてから、首をコテッと傾けた。
「どうかー…。こう、胸が…、胸が…」
言葉を口にすると、段々とクーロの顔が赤くなっていく。
そして、目が俺とは全く違うところに行ってしまった。
「クーロさん…?」
「うっさい!死ね!!」
「なんで!?」
「なんでもないよ!いいから着替える!!」
「横暴な…」
ずっと突いてて、今まで俺が布団から起きにくくしてたくせに…
「いいから!」
「はい!」
俺はクーロの命令通り、着替えを…
「何してるのっ!?」
いつものように…
寝巻のパンツに手をかけていると、クーロから声が上がった。
「着替え、だけど…」
「こんなところで着替えないでよ!外で、外で着替えてよ!!」
「外!?外で着替えんの!?」
それ…
ガチで衛兵さんにお世話になるやつなんだけど…
「えっ…、あっ…」
クーロも、さすがにそれが問題だと気付いたみたいだ。
「えっと、どうすればい…?」
「え、あっ…、わ、私が外にいる…」
そう呟いて、クーロはせっせと外に出ていった。
なんか、クーロの様子がおかしい…
今までは全く…
これぽっちりも、気にもしてなかったくせに…
もしかしてあれか…?
思春期か…?
遅咲きの…
それなら確かに…
絶乳であることの、理由にも…
止めよ。
これ以上無駄に考えて、うっかり口にでも出したら本当に殺される。
上から下までぼっこぼこに…
確実に…
だから、これ以上このことを考えるのは止めとこ…
まじで止めとこ…
口から出ないように、忘れてしまお。
そうしよ…
そして5分後くらい…
俺も着替え終わり、クーロも部屋に戻ってきていた。
「で、今日はどうする?」
そう、今日の予定だ。
ほんとは、昨日のうちに話しておくべきだったんだけど、色々ありすぎて疲れてたから、今日の予定も決めずにすぐに寝てしまった。
だから、そのしわ寄せだ。
「どうしよっか…。ゴブリン狩りは、今日できないし…」
「だよな…」
別の魔物を狩りに行ってもいいけど、俺たちが行ってもいいのはゴブリン以外だと…
森の手前の草原とコボルトの森…
草原は…
クーロの魔法で焼け野原になってしまいそうだし…
コボルトは…
鼻が良くて、奇襲ができない状態での俺たちの苦手な集団戦…
どっちも気は進まない。
悩ましい…
だからたまには…
「今日はお休みってことで、お買い物とか行くか?」
「お買い物…?」
「そう、お買い物。クーロのローブとか…」
「ローブかぁ…」
そう、今クーロはローブを持っていない。
元々は持っていたけど…、ホブゴブリン戦でダメになってしまったから今はなしだ。
それにこの世界に来てからはほぼ毎日魔物の狩りに行っていた。
だから、たまには休みもいいかなって感じだ。
そしてクーロは、少し頭を動かしてから…
「そうだね。そうしよっか。」
「うし。じゃー、買い物行くか。」
「うん!」
こうして今日俺たちは、お買い物に行くことに決まった。
昨日から新しいのあげてるので、良かったら…




