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リリスの反応

 あれからどれだけの時間がたったのだろうか…


 意識を取り戻した俺…

 そんな俺と…

 そして俺をそうしたクーロは、またリリスさんの前に座っていた。


 「あの…、ごめんね…」

 「いや、気にしなくていいよ。」


 気まずそうに謝ってきたクーロに、俺はそう返す。

 いやだってさ…

 俺を気絶させたのはクーロだけどさ…

 でもその原因を作ったのは…


 俺はリリスさんに視線を向けた。

 そんなリリスさんは、ニコニコと笑顔だった…


 「えらいですね、クーロさん。ちゃんと謝ることができて。」


 この人の子の言葉…

 一体どこ目線なんだろうか…

 

 いや、気にしたら負けだ。

 確実にそうだ。


 本題に…

 いい加減、聞きたかったことを聞こう。


 「そう言えば今日…」


 そう今日…

 今日の話だ。


 「なんかたくさんホブゴブリンがいたのと…」

 「そうですよね?その話、他の冒険者さんからも聞いて…」

 「あと、”悪食”ってやつも…」

 「はぁっ!?えっ?”悪食”ですか!?えっ!?」


 リリスさんが見て分かりやすく、取り乱し始めた。


 「いたんですか?あの”悪食”が…」

 「たぶんいましたよ。ブライスたちと一緒にいた時に、ブライスがそう言ってて…。で、そのホブゴブリンが黒く変色したのを自分も見たんで…」

 「黒く変色まで…。これはもう…。でも救いはホブゴブリンだということ…。で、ブライスさん見られたということは、きっとブライスさんの担当にすでに話が…。でも一応、私の方からも上に…」


 リリスさんは考えるように呟いていた。

 そして纏まったみたいだ。


 「たけしさん、クーロさん、少し待っててくださいね。」


 そう言って、リリスさんは席をはずした。


 「悪食、ほんとにいたんだ…」

 「いたよ。なんか色が黒でおぞましかったよ。」

 「へーそうなんだ。」




 俺とクーロがそんな他愛もない会話を少しの間していると、リリスさんが帰って来た。


 「お待たせしました。それで”悪食”、たけしさんが倒したんですね?」

 「えっ!?」

 「あー、そうですね。」

 「本当なんですね…」

 「そ、そうなの!?」


 リリスさんは少し呆れ…、いや困惑していて、クーロは驚いていた。


 「まぁ、そうだよ。」

 「そっか、そうなんだ。すごいね!だってあれ、すごく強いって話なのに、それなのに君は!!!」


 クーロがキラキラと輝いた視線を向けてくる。

 う、嬉しい…

 それにかわいい…


 「そ、それほどでもあるよな。」

 「そうだよ。すごいよ!」

 

 なんだろ…

 すごく、そこはかとなく気分が良い。

 何もしなくても、頬がニヤついてきそうだった。

 

 「あれだけ戦うなって言ってるのに…。まぁいいです。無事だったんですから。で、ですね…」

 「はい…」


 何か続きがあるみたいだ。

 

 続き…

 こういう時…

 強い魔物を倒した冒険者…

 その冒険者にギルドの人からしてくる話、それはきっと…

 昇格…

 それに間違い…


 「当分危ないので、ゴブリンの区画には入らないでくださいね。」

 「へっ?」


 なんか、予想と全然違ったんだけど…


 「入らないでくださいね。」


 しかも、念押しされた。


 「昇格とかそう言う話は…?」

 「あるわけ。」

 「ない、のか…」

 「ないです。」

 「まじか…」

 「マジです。」


 まじか…

 けっこう期待してたのに…


 「でも俺、悪食の魔物の倒したんですよ?」


 俺は少し、諦めきれなかった。

 そんな俺に、リリスさんは…


 「あれですよね?悪食が無様にこけたところに、たまたまたけしさんの短いナイフが刺さったとかそう言う話ですよね?」

 「えっ、いや…」

 「運、良かったですね?」


 リリスさんに、良い笑顔を向けられた。

 この笑顔に、悪意は見えなかった。

 だけど…

 リリスさんからの、俺への期待度が丸見えだった。


 辛いよ…


 「はい…」


 もう、こんな言葉しか出てこなかった。

 そしてクーロが、優しく俺の背中を撫でてくれる。


 少し嬉しかった。

 でも、これ…


 撫でてくれる理由が…

 伝わらなくてどんまい、なのか…

 図星をつかれてどんまい、なのかは聞きたくなかった。


 そんな感じで、俺が少しメンタルブレイクしていると、リリスさんの声が聞こえてきた。


 「ということで、森の異変の調査を他のお強いパーティーにしてもらうので、その間はちゃんと自重してくださいね。」


 「「はい(…)。」」


 こうして、これ以上俺と森の異変とは関わることがなかった。

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