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誂う…

 「まぁでも、お二人が無事で良かったです。」


 冒険者ギルドで未だに会話を続けている俺たち…

 そして俺とクーロに、リリスさんが温かい視線を向けながら、そう言ってきた。


 来たけど…

 さっきの辛辣な言葉を聞くと…

 今リリスさんが言ってることが、本心なのか疑ってしまう自分がいた。


 「あ、ありがとうございます…」

 「あ、ありがと…」


 クーロも、なんというか少しためらいがあった。


 「いえいえ。お二人の…。いや、冒険者さんたちが少しでも安全にというのが、私たちの仕事でもあるのですから、気になさらなくいいですよ?」


 どの口が…

 そう思ってしまう俺は、もしかして性格が悪いんだろうか…

 いやでも、しょうがなくね…


 まぁいいか…

 良くない気もするけど…

 

 で、お仕事か…

 そう言えば…


 「そう言えばリリスさん…」

 「なんですか?」


 幼い子供みたいにリリスさんが首をコテッと傾けてきた。

 かわ…

 

 ギュッ…


 「った!!」


 クーロが何故か、俺の手をギュッとつまんできた。

 そしてクーロの方を向くと…

 顔を不満そうに、尖らせていた。


 「クーロさん、痛いんですけど…」

 「そうなんだ。へー…」

 

 クーロの低い声…

 不満そうじゃなくて、不満なのは伝わってきた。


 「へー、って…」

 

 どういう意図か知りたくて俺はそう言ったけど、クーロは何も言わずに、俺と反対側に首をプイッと傾けた。

 

 なにこれ…

 なんか、幼くて可愛いんだけど…


 ただ、話が進展する気配はなかったから…

 また俺は、リリスさんの方に視線を戻した。


 なんだけど…

 明後日の方を見ていたはずのクーロが、こっちを見てきていたのが、横目でなんとなくわかった。


 俺は、視線をまたクーロに戻す。

 だけどまたすぐに…

 プイッと、クーロが反対側を見始めた。


 ん?

 どういうこと…

 

 良くわからなかった。


 だからまた、リリスさんの方に視線を戻すと…

 リリスさんは目をパチパチと、大きな目を何度も瞬きしていた。

 そして、ニマァという顔になった。


 「へー、そうなんですね。」


 リリスさんには、何か分かったらしい…


 「どういうことなんですか…?」

 「はぁっ!?これだから非モテは…」


 なんか辛辣なことを言われた。


 非モテ…


 「いや俺…、非モテじゃないんですけど…」

 「現実が見えない系、いえ、見たくない系ですか…」

 

 リリスさんは小さくそう呟いてから、ため息をついてきた。

 そして…

 

 「アーソウナンデスネ。良かったですね。」


 クソ棒読み…

 

 なにこの人…

 クッソ、腹立つんだけど…


 「いやホントに…」

 「いや、分かってますから。だから、大丈夫ですよ?」

 

 何が大丈夫なんだろうか…

 

 「でもまぁ、今回はそれのおかげで面白そうなので、私的にはいいんですけどね?」

 「面白そう…」


 この人…

 やっぱりさ、性格悪いよな…


 「クーロさんはどう思います…?」

 「へっ…?」

 「どう思います?」


 リリスさんはニマァとした顔のまま、同じことを二回尋ねた。

 そしてクーロは苦虫をつぶしたように、苦い顔をしている。

 そしてそれを見たからか、リリスさんはより悪い顔になった。


 「そう言えばたけしさん…」

 「な、なんですか?」

 

 急に話を振られたこと…

 そして、リリスさんの悪い顔に少し動揺してしまう。

 ただそんな俺の気持ちなんて、リリスさんはお構いなしのようだ。


 「この前の夜は、素敵な夜でしたね?」

 「ん…?」

 「えっ!?」


 夜…

 きっと、ブライスたちとの打ち上げ中の俺をリリスさんが無理やり連れ出して、俺とリリスさんの二人でクーロの話とかをした日のことだろう…


 あのときはお酒を飲んでたのもあって、少し記憶があいまいな俺…

 一応、その時の記憶を思い出すけど…


 どうだっけ…

 そんなに、素敵な夜だったかな…?


 素敵って言えるほどの、情景が全く出てこなかった。

 なんだけど…


 「ほんと、熱い夜でした…」

 「なぁーーっ!?」


 リリスさんが変な言葉を…

 そしてクーロが奇声を発した。


 ただ俺に、そんな記憶はない。

 だから…

 

 「そうでしたっけ…?」

 「そうでしたよ。あ~、ほんと素敵な夜でした。あんな夜、そうそう忘れれませんよ。」

 「えー?えーっ?えーーーーーっ!?」


 クーロがわなわなし始める。


 「だって、言ってたじゃないですか…」

 「何をです…?」

 「私の胸を触りながら、やっぱりおっぱいは大きいのに限るって…」

 「はぁっ?」

 「みゃ゛ーーーーーーーっ!?」


 触ってなくね…

 俺はそう思った瞬間に、クーロがすごい奇声を発した。

 そしてそんな奇声にびっくりしてクーロの方を見ると…

 すごい、形相で俺を睨んでした…


 頬は赤く…

 瞳は涙ぐむように、ウルウルと…

 だけど、何故か俺を強く睨んで…


 そんな表情だった。

 そして…

 俺の襟をつかんでから…


 「君は!君は!!君ってやつは!!!!

 死ね!死ね!まじで死ねーーっ!!!!!」


 クーロはそう言いながら、俺を

 首を前後に…

 

 だから、景色が前後して…

 ぐちゃぐちゃで、揺れる世界…

 そして首はまったく俺の言うことは聞かず、ずっと前後に…

 痛い…

 というか、意識が…

 意識が、飛んで…

 いく…

 

 最後に、聞こえたのは…


 「冗談ですけどね。」

 「えっ!?」


 リリスさんとクーロの、そんなやりとり…

 だったような気がする…

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