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浮かんだのは…

 視界の端…

 そこに見えたのは、赤く揺らめいている火の光と…

 それを使ったと思われる人間…

 クーロだった。


 何故クーロが…


 そういう疑問が湧くも、すぐに解決した。


 ここは、魔物が生息する森…

 そして俺たちは冒険者…

 なら、当たり前のことだ…


 そしてそれよりも、俺は自分自身のことを心配しないといけない。

 今も俺たちを追ってきている、黒いホブゴブリンについて…

 だから…

 

 俺が視線を外そうとした時、見えてしまった。

 クーロと一緒にいる存在…

 ホブゴブリンが…


 黒いホブゴブリンと比べたら、大したことないかもしれない。

 でもクーロからしたら、ホブゴブリンはかなりの脅威だ。

 だから、助けに…


 俺は少し前のことを思い出した。

 クーロの捨てられたって事実を…


 それなのに、助けに行くのか…?

 今自分が危機的な状況なのに…

 何故…

 どうやって…?


 自分の中にいくつか疑問が浮かぶ。

 でも一番強く疑問に抱いたことは…

 

 どうやったら、助けられる…?

 

 これだった…


 これを疑問に抱いている時点で、自分が今どうしたいのかが分かった。


 「ははっ…」


 自然と口から、笑いがこみ上げてくる。

 女々しいのかな…

 ブライスも、気味悪そうにこっちを見つめてきている。

 それはそうなるわ。


 「なぁ、ブライス…」

 「な、なんだ?」

 「行くとこが出来たから、先に逃げててくれないか?」

 「はぁっ!?」


 ブライスからはびっくりした声と、なんか信じられないものが目の前にいるように顔をされた。

 でもきっと、そんなに時間の猶予はない。

 だから…

 

 俺は魔法剣に魔力を込める。


 「おいっ!?」

 

 俺の動きをみたからか、ブライスからそんな声が上がる。

 でも気にしない。

 俺はいつもの斬撃を、ホブゴブリン目掛けて放った。


 飛んでいく斬撃…

 

 でも距離的に、ダメージはない。

 いつもやる、ただのヘイト稼ぎだ。


 黒いのは手で受ける。

 だけどやっぱり、ダメージはなかった。


 でも視線の向ける先が、逃げてる人間たちから俺に変わった気がした。


 「またあとで…」

 「おいっ!?」


 こうして俺はパーティーの進む先から外れて、クーロのいた方角へと緩やかに迂回した。

 その俺の動きに、黒いのもついてくる。

 

 

 

 少し…

 数百メートルくらい進んだだろうか。

 俺は足を緩めた。

 それに習うように、黒いのも緩めてきた。


 そして、互いに立ち止まった。


 互いに相対する。

 格上は向こう…

 そして、時間がないのはこっち…


 最悪な状況だった。

 でも…

 やらないといけない。


 俺はゆっくりと黒い奴に向かって近づく。

 ゆっくりと…

 すぐに、回避行動できるように…


 その俺の動きを、黒い奴はじっと注視してくる。


 そんな状態で数歩歩いただろうか…

 もう、ほんの数メートル…

 そんな距離で、黒いのが右手を振りかぶってきた。


 俺はその動きを見て、タンタンとバックステップで後ろに下がった。


 黒い奴は、俺がそう動いたことに、上げてた手を下ろした。

 でも忌々しく、そしてうざったそうな顔を向けてくる。


 怖い。

 その気持ちはずっとある。

 でも、やることは決まった。

 だから、あとは進むだけ…


 バクバクとうるさい心臓を鎮めるために、小さく、だけどゆっくり呼吸を吸う。

 吸って…

 吐いた…


 そして準備ができた。

 心も…

 案も…

 

 よし。

 

 俺は前に進む。

 黒い奴に向かって。

 たださっきと違うのは…

 勢いよく走って向かっているということだった。


 俺のいきなりの動きに、黒い奴は少し戸惑いを見せた。

 でもすぐに平常心に、そしていやらしい笑みを浮かべる。

 

 で、俺を向かい打つために何をしてくるか…

 それは…

 さっきと同じように、拳を向けてくるために腕を振りかぶってくることだった。


 俺は構わず、前へと進む。

 そんな俺に…

 俺の顔に向かって、振りかぶった腕からすごい速さで拳が飛んでくる。

 徐々に拳が加速でもしているかのように、視界に断続的に映る。

 

 当たれば死ぬ…

 もしくは致命傷…

 当たってしまうと、結局どう転んでも死ぬだろう。

 

 だから俺はすることは…

 向かってくる拳…

 それを俺は…

 

 下に躱した。

 足から滑り込んで…


 そして景色が移り変わっていく。


 正面からの拳…

 頭上を抜けていく拳…

 腕の裏側…

 黒い奴を下から見た画…

 膝…

 股下…

 そして暗い森…


 ここまで来てから、俺は左足の踵を地面につける。

 踵が地面に引っかかることで、徐々に体勢が上がってくる。

 すると勝手に、右の足裏が地面について…

 次は左足が…

 

 気づくと…

 少し体勢が悪いものも、俺は立ち上がっていた。


 でも、まだこれで終わったわけじゃない。

 いや、本題はここから…


 俺はバランス悪く立ち上がった身体を、右側後方に重心を向ける。

 そしたら、重心に従うように身体が右後方に傾いていく。

 するとここからどうなるか…

 そう、勝手に右足が前に動く。

 俺の意思とは関係なく、反射的に…

 

 俺は勝手に踏み出した足の裏に力を入れて、踏みとどまる。

 そして、もう片方…

 左足を前に運ぶ。


 結果的に…

 黒い奴の股下をスライディングで抜けた俺は、背後から黒い奴の右回りをすることになった。


 そして俺の目の前にいた黒い奴が、ここからどういう動きを取ったか…


 視界から下に消えた俺を見つけるために…

 無様にも…

 俺がいる方とは、逆向きに身体を捻った。


 でも、これはしょうがないこと…

 

 二足歩行の生物が、とっさに後ろを振り返る時…

 基本は聞き手、利き足の足を引いて振り返る。

 利き足の方が重心を動かすことに慣れていて、腰も右側の方が回しやすいこと…

 だから一歩が出やすい。

 

 だから、黒い奴の動きはしょうがないこと。


 でもだからって、何もしないわけではない。


 俺は黒い奴の横顔目掛けて、斬撃を放った。

 当然、ゼロ距離で…


 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 黒い奴は、顔を抑えながら泣き叫ぶ。

 でも、俺は気にしない。


 次は右足…

 右手…

 右腕…

 胴体…


 奴の自由を奪っていく。

 

 そしてここまで切ったところで、黒い奴は力なく地面に落ちる。

 そうして、膝でなんとか立っているだけになった。

 弱弱しく、虫の息だ。

 でも、許してなんか上げない。


 俺は力なく立っている奴…

 その首を刺した。

 

 刺した瞬間…

 黒いホブゴブリンは、ピクピクと小さく痙攣する。

 だけどすぐに…

 正面から重力に従うように、地面に臥した。


 こうして、黒いホブゴブリンとの戦闘は終わった。


 苦しい。

 疲れた。

 でも…


 俺にとって、これは単なる前哨戦だ。


 俺は一息つくことなく…

 すぐに、クーロの元へと向かった。

新しい作品出したので、良かったらそっちもどうぞ

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