表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/83

クーロは…

 【クーロ目線】


 さて、今日の私はいつものようにゴブリン討伐に来ていた。

 今目の前で焼けているので、今日3匹目だ。

 私にしては順調だった。

 でもけっこう焦げてるから、またリリスさんに怒られちゃうかな。

 見分けがつかないって…

 謝れば、許してくれるよね…


 そんなことを思いながら、私は次の獲物へと足を向かわせていた。

 そして…


 「やっ…、来ないで…」


 こんな声を聞いてしまった。

 声は若くて可愛らしい…

 きっと、若い女の子の助けを呼ぶ声だった。


 私は声が聞こえた方に向かう。

 グングンと先に向かい…

 そしてその先にいたのは、私と同じ年くらい…

 20歳手前の女の子と…

 そして…

 何の運命なんだろう…

 またホブゴブリンだった。


 この辺の区画は、ゴブリンしか生息しない地…

 だから、ホブゴブリンがいることはおかしなことではないんだけど…

 でもここは、その生息地の中でも浅い階層…

 だから本来、ホブゴブリンがいるはずがない場所。

 なのに目の前には、女の子と、その彼女を襲って…

 いや、今にも襲い掛かろうとしているホブゴブリンがいた。


 とっても疑問だった。

 けど、今私がするべきことは…


 「【ファイアーボール】」

 「グワァァ!!」


 私は火の玉を生成して、背後からホブゴブリンへとぶつけた。

 不意な攻撃に、ホブゴブリンが痛みからくる野太い叫び声をあげる。

 完全な不意打ち…

 そのおかげで、良い場所に入ったみたいだった。


 火が消え失せると、ホブゴブリンはすぐに魔法を放った私にへと振り返ってくる。

 忌々しく、怒気を含んだ表情で…

 

 やっぱり…

 私の魔法ごときじゃ、痛みは与えられても致命傷は与えられないみたいだ。


 怖くて震える。

 自分よりも圧倒的に強い魔物に、獲物として標的にされてしまう。

 身体だけじゃなくて、身体の奥…

 心まで震えてるみたいだった。


 でも…

 それでも…


 視線の先には、女の子が…

 だから…


 「【ファイアーボール】」


 私はまた、火を生成した。

 そして…

 またホブゴブリン目掛けて放つ。

 

 その火を、ホブゴブリンは手で軽々と跳ねのけた。

 

 知ってた。

 でも、それでいい。


 ホブゴブリンの視線…

 その視線には、今はもう私のことしか映してないみたいだった。

 だから…

 私は駆けた。

 

 森の奥に行く気はない。

 ただ、今の森の深さを維持するように移動するだけ…

 そしてある程度走ったら、私も森を抜ける。

 そのつもりだった…


 


 かなりの距離を走った。

 

 そして、ちゃんと私の後をホブゴブリンは追いかけてきてくれた。

 だからきっと、さっきの彼女もきっと今頃は安全で…

 もしかしたら、もう森を抜けだしているかもしれない。

 だから、あとは私も離脱すれば…


 私がそう思った、その時…


 「えっ…?」


 2匹のホブゴブリンが、私が進んでる先…

 その先の、木の陰から現れた…


 なんで…


 私はとっさに、左足で地面に急ブレーキをかける。

 前後に挟まれても、左右に逃げれば…

 そう言う考えだった。


 なのに…


 ズルっ…

 「えっ…?」


 足が滑った。

 こんなときに…


 ドスっ…

 滑ったせいで、腰から地面に落っこちた。

 「ッ!!!」


 すごく痛い…

 身体の芯に響くような、鈍くて重い痛み…

 すぐさま、動くのは厳しい。

 それがすぐに分かった。

 でも今は、それどころじゃ…

 

 その通りだった。


 目の前には、2匹のホブゴブリン…

 背後にも1匹…

 しかも距離は数メートル…

 完全に挟まれていた。


 終わりかな…

 私はすぐに、そう悟った…


 目の前にいる2匹はニチャァと、気味の悪い笑顔を向けてくる。

 そして、背後のは…

 怒りを纏った表情…


 一思いに、一発で殺してくれ…

 ないよね、きっと…


 嬲ったりして、痛みつけてくるんだろうな…

 すごく痛いだろうな。

 嫌だな…


 でもそんなことよりも…

 死にたくないな…

 もっと、生きていたかったな。


 ちょっと後悔しちゃうよ。

 女の子庇ったこと…

 でも、しょうがないんだよ。

 だって、優しいお姉ちゃんに憧れちゃったんだもん。


 私には、5歳上のお姉ちゃんがいる。

 そして私たち姉妹の家系は、代々貴族に使える家だった。

 だから私も、小さい頃からその貴族に仕えてた。


 でも私は、やっぱり昔から不器用で…

 何度も同じ失敗をして、何度も怒られて…


 でもお姉ちゃんは…

 一緒に怒られてくれて…

 慰めてくれて…

 たまに、私の代わりに怒られて…


 それでも私に、優しくしてくれて…

 褒めてくれて…


 そんな優しくて、器用なお姉ちゃんに憧れてた。

 でも私は不器用…

 お姉ちゃんみたいにはできなかった。

 

 でも…

 それでも…

 人に優しくすることはできる。

 だから私は、人に優しくしようと決めたんだよ。

 お姉ちゃんみたいに…

 

 だから…

 さっきの女の子を庇ったことに後悔なんか…

 後悔なんか…

 なんか…


 ある…

 すごくある!!!

 もっと、色んなものを見てみたかった。


 お洋服…

 おいしいご飯…

 おしゃれな街…

 景色…

 それに…

 可愛い男のk…


 おっと、また怒られる…

 でも誰にだろう…

 今誰もいないのに…

 いてくれないのに…

 私から、選んだのに…

 なのになんで怒られるんだろう…

 なんで…


 一人の男の子の顔が浮かんだ…

 私と同じくらいの年…

 私よりも、背が高くて…

 太くも細くもない体型…

 そして、普通の顔…

 イケメンでもなくて、不細工でもない。

 そんな普通の顔…


 なのに、すごく鮮明に思い浮かぶ…

 一緒にいた期間はそんなに長くもないのに…

 なのに、すごく…


 好きとかそう言うのは分からない。

 でも、少なくとも彼が大切な存在だったってことは…

 ほんとは分かってた。

 

 でもダメなんだよ。

 私といたら…

 だって彼には…


 目の前には、やっぱりホブゴブリン…

 いたぶられるくらいなら…


 「【ファイアーボール】」


 そう呟いて…

 私は手の平に、火を生成した。

 その火を見て、奴らは顔をしかめて警戒してくる。


 その光景に少し思ってしまった。

 このまま火を出し続けたら、ずっとこのままかなって…

 そんなわけないんだろうけど…


 手の平の火を見る。

 赤く揺らめいていて…

 すごく熱そうで…

 痛そうで…


 嫌だった。

 無理だった。

 こんなの自分で自分に向けたくなかった。


 火が消える。

 嫌だ。

 自分で自分を殺したくない。

 

 そして、ホブゴブリンが近づいてくる。

 でも死にたくもない。

 

 だから…

 だから…

 助けてよ…

 誰か、お願いだから。


 でも…

 そんな私の願いなんて届くことなく、ホブゴブリンの手が私に伸びてくる。

 そして…


 血が舞った。

 

 ホブゴブリンから…


 「えっ…?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ