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ブライスパーティーで戦闘へ… 4

 現れたホブゴブリン。

 幸いなことに、手には何もない。

 だから、武器は持ってないらしい。

 ただ、幸いだったのはそれだけだ。


 元々、今のこのパーティーはDランクのパーティー。

 だから、Dランクの魔物であるホブゴブリンの討伐はそこまで難しくはない。

 でも今は違う。


 元々3人パーティーのうちの一人が抜けた。

 なのに補充できたのはEランクの俺。

 しかも、まだ入って3日目。

 どういう視点で見ても、人数という観点でしか穴埋めができていない。


 問題点はまだある。

 だけど、とりわけ大きいのは2つ。


 1つは、トゥーリさんの魔力。

 さっきの多数のゴブリンとホブゴブリン、その双方で残り少ない魔力を酷使した。

 トゥーリさんの言葉を信じれば残りは約2割。

 だけどまだ日が浅い俺には、あとどの程度のことができるのかが分からない。

 でも、そんなに多くはないだろう。


 そしてもう1つ。

 現れた場所だ。

 ホブゴブリンが現れたのは街の方。

 つまり俺たちがこの場から逃げるには、大きく迂回してから逃げるか、森の奥へと進むしかない。

 迂回がうまくいけばいい。

 けど下手に迂回したせいで、ばったりと他の魔物に出くわしてしまうと、魔物たちに挟まれることになる。

 逃げるとしたら最悪迂回だが、決して取りたい手ではない。


 ただまぁ、迂回くらいの話だけなら最悪というほどでもなかった。

 だって、逃げられる可能性も十分にあるのだから。


 これの何が最悪なのかと言うとだ…

 現れたホブゴブリン、そいつらの一番近くにいるのが、よりにもよって遠距離タイプのトゥーリさんだったことだ。

 しかもトゥーリさんの位置から、俺とブライスとは距離がある。

 ほんと、最悪だ。

 それ以外に、言いようがない。


 今、トゥーリさんとホブゴブリンとの距離は5メートルくらい。

 ただ、よりもっと距離を開けようと、トゥーリさんはホブゴブリンがいない方にへと後ずさりを始めた。

 少し遠くにいる俺からも見て取れるくらいに、身体を震わしながら。

 そしてそんな状態で後ずさるとどうなるか…

 そう…


 トゥーリさんは、後ろへと出すはずの足が地面に引っかかってしまい、落ちるようにおしりからこけてしまった。

 

 ドサっ…


 そんな鈍い音が聞こえた。

 ただトゥーリさんには痛がる様子なんかなく、必死に手と足で体を後ろにへと追いやる。

 でもその努力の効果は乏しく、ホブゴブリンが踏み出した一歩に比べたらないのも同然だった。

 

 きっと、あと数歩で…

 どう見てもやばい。

 このままじゃ…


 俺がそう思った、その時…

 視界の中に、重そうな鎧を身に付けた男の走る背中が見えた。

 しかもその背中は、どんどん小さくなっていく。

 そして…


 「あ゛あああぁぁぁっ!!!」

 

 そんな掛け声と共に、先頭のホブゴブリンへと体当たりした。

 

 よろめきながら体勢を崩すホブゴブリン。

 そんなホブゴブリンをよそに、ブライスはトゥーリさんとホブゴブリンとの間に立って盾を構えた。


 「トゥーリ!今のうちに!!」

 「う、うん。」


 トゥーリさんはそう返事をするけど、なかなかと立ち上がれない。

 手が滑って体勢を崩し、なんとか身体をひっくり返して四つん這いになる。

 ただ、次は足が…

 でも諦めることはなく、小鹿の様におぼそかな足で必死に立ち上がろうとする。

 

 しかしそんな間を、ホブゴブリンが黙って見ているわけがない。


 今ブライスに体当たりされたホブゴブリンは、キッと厳しい顔をブライスにへと向けている。

 そしてそいつは、両手の指と指とを固く組み合わせながらギュッと強く握った。

 がちがちと固そうな合わさった拳、その拳を神に何か捧げるかのように、両の腕をめいいっぱい真上に振り上げてから…

 そして…


 組んで合わさった拳を…

 ブライス目掛けて、思いっきし強く振り下ろした。


 ガンッ…

 

 盾からそんな音をさせながらも、ブライスはなんとか盾で受ける。

 

 ただ、真正面からだ。

 しかもホブゴブリンは上からだから、きっと体重も乗ってある。

 そのせいで、反動を殺すことなんてできず、ブライスは小さくのけぞってしまう。

 ギリギリと、苦しそうな体勢。

 でも負けじと、膝を地面につけ腰を入れ直すことで、なんとかブライスはホブゴブリンに抗う。

 その甲斐あってか、なんとか拮抗し合う。

 

 でもブライスの目の前にいるホブゴブリンは、1匹じゃなくて3匹だ…

 

 ブライスに攻撃している、ホブゴブリンの両脇を他の2匹が埋めている。

 そして、奥にいたホブゴブリン…

 そいつが…

 腕を後ろに振りかぶって、そしてブライス目掛けて拳を放ってくる。


 ブライスもその攻撃を察知しているみたいだ。

 でも、察知できているだけ…

 

 今ブライスは、拳を上から振り下ろしたやつの攻撃をなんとか耐えているところ。

 だから新しく攻撃してくる相手に何か抗うことなんてできるはずもなく…

 そのままその拳を受けてしまった。


 

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