ブライスパーティーで戦闘へ… 3
ドスンッ…
そんな嫌な足音…
俺はそんな地響きがした方を振り返る。
場所で言うと、トゥーリさんが隠れている茂みと俺のちょうど中間くらいからだろうか。
俺はそこにへと振り返る。
そして大きな足音の主が現れたが、その主はやっぱり…
ホブゴブリンだった。
ホブゴブリンからして前方にある茂みを、またぐでも避けるでもなく、踏むつけながら出てくる。
木の葉が揺れる音、枝が折れる音の両方が聞こえてくる。
そしてホブゴブリンが通り過ぎると、そこを通ったと分かるくらい茂みはぼこぼこになっていた。
そんなことよりも…
俺は大声で…
「ブライス!どうするっ!?」
俺の声に何拍か置いてから、ブライスからも返事があった。
「トゥーリと二人でそいつを頼む!トゥーリーっ!!!」
ブライスの呼びかけで、トゥーリさんも茂みから出てくる。
きっと、射程と射線を広げるためだろう。
茂みの奥からだと、木で射線が消えるから。
ただ、問題はどっちが仕留めるか…
正直、貰った指示が少ない。
だけどブライスは、今もゴブリンと戦闘をしている。
だから、しょうがなくはある。
とりあえず、俺は気を引くためにホブゴブリンへと近づく。
ホブゴブリンが俺を視界に映しているのかを確認するように、一歩また一歩と様子を見ながら…
そして数歩歩いただろうか。
俺が地面を踏み込んだ瞬間、ホブゴブリンは俺の方に顔を振り向けてきた。
そして振り向いてすぐ、俺へとニタァと気持ちの良い笑顔を向けてくれた。
気分は悪かった。
だけど、ちゃんとホブゴブリンの注意を俺にへと向けれたらしい。
今、ホブゴブリンとの距離は5メートル弱。
魔法剣の射程を考えると、もう少しだけ近づきたくはある。
でもこれ以上は、近づきたくなかった。
理由はなんとなく察しがついた。
だって近づいた瞬間、以前のホブゴブリンとの戦いがフラッシュバックされたから。
でかい図体のホブゴブリンが、身を小さくして大きい弾丸のように突進してきた光景が…
手が一瞬震える。
自分の手に、力が入っているのかどうかわからなくなった。
でもそれだけ…
それだけだ。
ふー…
俺は一度大きな息を吐く。
まだホブゴブリンは動いてこない。
だから、これくらいの余裕があった。
息を吐いたことで、全身の力が一度抜けた気がした。
怖くはある。
でも今は最悪、ホブゴブリンのヘイトをかせぐだけでもいい。
だから、それに専念しよう。
俺は魔法剣にいつもの力を込める。
そして、すぐに振り払った。
そしてそれが、ホブゴブリンとの回線の合図になる。
顔へと向けた斬撃、その斬撃から身を守るように、ホブゴブリンは手で顔を庇う。
でもまぁ、結果は明白だ。
距離は5メートル弱…
だから…
ボフっ…
いつものこの音だけだ。
手に何も違和感がないことに、ホブゴブリンは不思議そうに手を回して一生懸命見ている。
そして何もないことを理解した後、ホブゴブリンはキッと厳しい視線を向けてくる。
一瞬だけ、身体が硬直した気がしたけど、俺は次の行動に当たる。
ホブゴブリンからトゥーリさんが死角になるように、ゆっくりトゥーリさんとは反対方向へと歩く。
そして俺の動きに釣られるように、ホブゴブリンの顔が動く。
顔だけで俺の動きを追えなくなったら、身体も合わせて…
そして、トゥーリさんがホブゴブリンの視界から消えた瞬間…
「【ストーンアロー】」
そんな言葉が聞こえてきた。
そして声のすぐ後、トゥーリさんの正面に一本の石の矢が現れる。
矢尻の方から、徐々に石が形作られながら。
その光景に、良くないとは思いながら視線を奪われる。
でも、そんな感情は無駄だったみたいだ。
すぐさま石の矢は形として形成され、そして…
飛んできた。
ホブゴブリンからは死角。
だから当然、気づくのなんて不可能だ。
だから…
俺へとニヤニヤとした笑みを向けてくるホブゴブリンは、石の矢で…
心を射抜かれてしまった。
射抜かれたことに、ホブゴブリンは一瞬驚きの動きを見せる。
何に射抜かれたのかと、手で胸の辺りを探るように…
だけどすぐに硬直し動かなくなる。
そして、地面へと倒れた。
ドサッ…
それが、ホブゴブリンの断末魔だった。
ホブゴブリンの最期を見送った後、俺はすぐさまブライスの方を確認する。
するとブライスも、瀕死で横に倒れているゴブリンに、止めを刺していた。
そして止めを刺した後、ブライスは手を振ってくる。
ゴブリン討伐も、全て終わったようだ。
身体から緊張が抜けていってる気がした。
疲れた。
まぁでも、これで終わ…
ガサガサ…
ドスンッ…
そんな音が聞こえてくる。
全員して、音のした方に振り返る。
するとそこにいたのは、3匹のホブゴブリンだった…




