ブライスの…
初の人は、良かったら2話前から…
クーロと別れてから10数分後、ブライスとトゥーリさんがようやくギルドへとやって来た。
そして邂逅一番、ブライスから…
「よー、お前さん。家にいないから心配したぞ。」
「心配した。」
ブライスに従って、トゥーリさんからも同じ言葉が出てくる。
「いやー、ごめん。」
俺はなるべく、あっけらかんと返す。
でもこれにプラスして、良い感じの気の利いた言葉は出てこなかった。
「まーいいけどよ。それより…」ブライスは俺のすぐ隣まで距離を縮めてきて…
「逃げなくたっていいだろ。せっかく誘ってやったのに…」
別に、ブライスの言葉が低くなったわけではない。
なのに耳元で呟かれたその言葉は、俺へと圧をかけてきているみたいだった。
なんで逃げたんだって…
その言葉を聞いた瞬間、俺の身体はピシッと硬直した。
も、もちろん恐怖で…
当然、身体と一緒に脳も喉も凍結されている。
だから言葉なんて出てこない。
そしてブライスは、俺の言葉が出てこないことを察したみたいだ。
「まーいいや。時間もチャンスもいくらでもあるからな。また今度、”一緒に”行こうや。」
ブライスから、いつも通りの人の良い笑顔が向けられる。
でもこの瞬間、俺の心には吹雪が吹雪いた。
もしかして俺…
童貞の前に処女を…
クーロと過ごした、さっきまでの幸せな時間が恋しかった。
幸せって、あとから気づくよね。
「二人とも、何話してるの?」
トゥーリさんの、いつも通りの抑揚の少ない言葉。
「いやなんでもないぜ。」
ブライスはそう呟いて、ここでの会話は終わった。
いや、俺が憶えてないだけかもしれない。
今日俺たちが向かうのは、いつも通りのゴブリンが密集する森。
今はその森へと向かう、森と街の間の草原。
俺たちは、そこを歩いていた。
先頭はランランと足取りの軽いブライス。
その後ろに、俺とトゥーリさんが付いて行っている。
そして俺とトゥーリさんは楽しそうに歩くブライスを見ながら、二人で会話をしている。
「ブライス、今日は機嫌が良い。」
「そうですね。」
「ほんとにそう。」
そして俺には、何故ブライスの機嫌が良いかの心当たりが…
昨日、俺は逃げ出した。
だけどあのあと、きっとブライスは…
俺の頭にはそれが真っ先に頭に浮かんだ。
というか、それしか思い浮かばない。
そしてそれは、間違いじゃないだろう。
「ブライスはたまに機嫌悪くなる。で、魔物にストレス発散し始めるの。ここ数日も…」
ここ数日…
ストレス発散…
それってつまり…
このパーティーに入った初日…
ブライスが魔物を狩りまくるせいで、俺はまったく攻撃参加できなかった。
そのことを俺は、新手のイジメだと思っていた。
だけどそれはイジメじゃなくて、ブライスが欲求不満だったってことか。
で、昨日すっきりしたと…
いや、人に当たるんじゃなくて、魔物に当たってからきっと良いことだよね。
本人も、ストレスたまった時の発散方法を分かってるし。
きっと、良いことなんだよね。
うん。
俺たちは歩いていく。
ここは狩場兼、別の狩場への道中…
ということは当然…
「よ、ブライス!」
「おー、お前さん。」
冒険者が何人も往来する。
当然だ。
そしてブライスがしゃべっている間、俺とトゥーリさんは目の前で、繰り広げられている会話を大人しく見えていた。
「ブライスお前、今日は機嫌が良いな。もしかして…」
「あぁ!」
そんな会話が聞こえてきたけど、俺は気にしないことにした。
知りたくないし、思い出したくなかったから。
何も…
また道中…
「おう、ブライスじゃねぇか!」
「おー、お前さん!」
また会話が始める。
そして…
「ブライスお前、また行ったのか?」
「イッタさ!お前さんは?」
「最近、俺はいけてねぇな。」
「はー、もったいねぇな。あんなにすげぇのに。今度一緒に行くか?」
「そうだな。おともするわ。」
「」
またまた道中…
「ブライス、久しぶりだな。」
「おう、久しぶりだな。」
「また…」
「おう。」
森への道中、こんなやり取りが何度も目の前で繰り広げられていた。
きっと何も知らなかったら、俺はブライスをただのコミュ強としか思わなかっただろう。
でも俺は知ってしまった。
ブライスと男たちがナニについて話しているのかを…
そしてこの光景に何か思うのは俺だけじゃない。
「ブライスと男冒険者。いつも何かしゃべってる。何についてなんだろ…」
隣にいたトゥーリさんからこんな言葉が湧き出てくる。
当然の疑問だと思う…
でも俺はこの言葉に、何も答えれなかった。
ごめん。
でも、許してほしい。
だってこんなの答えれないじゃん!
口に出すのも嫌だし、申し訳ないしで!!
あー、なんでこんなのに、心削らないといけないんだよ!!!
あー、あー、あ〜〜〜〜っ!!!
こんなことがありながらも、俺たちはいつもの森へと歩みを進めた。
しんどいよ…




