久しぶりの…
今俺は、ギルドの外に一人でいた。
そう一人でだ。
それは何故一人かって?
それはね…
家に帰りたくなかったからだよ。
クーロに捨てられた俺は今、ブライスたちのパーティーが借りている借家にお世話になっている。
なっているんだけどさ、問題は…
昨日の夜。
夜の街。
ブライスに連れられて…
俺は男が男にご奉仕をするお店に…
これ以上、思い出したくなかった。
だって思い出すだけでも、身体に鳥肌が…
いやさ、逃げ出さずに今日のクエストを、というだけでも褒めて欲しいんだよ。
バックレてもおかしくないだろ。
というか、普通バックレるだろ。
でもバックレたら、冒険者業は…
そうなったら、生活費が…
つまりは飢え死に。
なんでこの世界、こんなに世知辛いの…
そう言うわけで、俺はブライスとトゥーリさんを待っている。
そしてもう一度言う。
ここは冒険者ギルドの前だ。
ということは…
「「あっ…」」
当然ここには、クーロもやって来る。
目が合った瞬間、俺とクーロの二人ともがフリーズしてしまった。
当然、気まずさから…
喧嘩別れをしたわけではない。
でも、円満な別れをしたわけでもない。
だから、しょうがないことだった。
そして、数秒の時がそのまま流れていく。
気まずい。
だけどそれ以上に…
可愛くてきれいだった。
きれいな金髪。
ちゃんと手入れしているのか、髪質があれていることはなく艶がある。
少し、きつい目つき。
その目つきのせいで、どうしても可愛いという感想を抱きにくい。
なのに…
片方だけで髪をくくっていることで、少し幼さを感じとれる。
それがクーロを可愛く思わせる。
その可憐さは…
今の傷ついた俺の心、その心にしみわたる。
恐怖と絶望で埋め尽くされそうだった俺の心に、平和が戻ってきてくれたみたいだった。
そしてやっぱり…
絶乳だった。
ない、やっぱりない。
ほんとに女性かと疑ってしまいそうなほどに…
昨日もふと思ったけど…
もしかしてクーロって実はおと…
「君はほんと君だよね。」
俺はある部分に向いていた視線を上げて、クーロの顔を見る。
そしたら、下劣なものを見下すような冷たい目だった。
数日ぶりにあった、人に向けるような顔ではない。
「何がだ?」
「何がって…」クーロは一度嫌みっぽくため息をついてから…
「人の胸を、そのむかつく顔で見てくるところがだよっ!!」
「へっ?」
俺、そんな顔してたのか…
というか、そんなに顔にまで出てたのか…
思い当たる節はあります。
だって心の中では可哀相、というか貧層だなって思ってるし。
いや貧層という言葉すら、クーロには勿体ないと感じてる説も…
「いやクーロ、それは誤解だ。」
それでも一応、俺は取り繕った。
意味があるかは知らないけど…
当然、クーロは怪訝そうな顔を向けてくる。
「へー。じゃ―私の胸、どう思ってるの?」
どー…
そんなの…
俺は、またクーロのないのを見てから…
「絶…、あー違う。貧…、これもまずい。ぜっぱ…、違う違う。えー、すごく良いと思うよ…」
出てくる言葉、全部がまずかった。
でも最後のでちゃんと褒めたから、なんとか許されたりは…
しないみたいだ。
それはそう…
「ほんと、君って言うやつはっ!!!」
「クーロっ、ちょっと、ほんのちょっと間違えただけなんだよ。」
「死ね。マジで死ね。」
心に来た。
いや、悪いのは俺なだけどさ。
「クーロ、ごめんって。」
「知らないっ!」
こうして、俺とクーロは別れた。
申し訳ないとは思う。
だけどさ…
こんな会話でも、久しぶりにクーロと話せたのは嬉しかった。
そう感じている俺がいた。




