表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/83

リリスさんとのお話2

 「でもそうですか、クーロさんの方から…。クーロさんは、なんて言ってたんですか?」


 なんて、か…

 あの時の情景はすごく覚えてる。

 いつも通り、寝る前に見ていた天井…

 真っ暗で何も見えないはずだったのに、目が慣れてそれが見えてた。


 そしてなんて、か…


 「俺に、もうクーロは必要ない。そう言われました…」

 「そうですか…」


 俺がなんとか吐き出した言葉に、リリスさんも重々しく返してきた。


 必要ない、か…

 確かにそれまでの俺は…

 

 金はない。

 家はない。

 人脈もない。

 知識もない。

 魔物も倒せない。


 こんな状態だった。

 どうしようもできなかった。

 絶対に一人では生きていけなかった。

 だから、クーロが差し出してくれた優しさに甘えてた。


 でも今はどうなんだろうか。


 今はブライスのとこでお世話になっている。

 でも、もしそうじゃなかったとしても…

 今は魔物も頑張れば一人で倒すことはできる。

 

 ならきっと、苦しいなりにも生活はできるだろう。

 そう考えれば確かに、俺にクーロはもう必要ないのかもしれない。

 でも…

 

 一人で考え込んでいた俺…

 そんな俺に、リリスさんのぼそっと吐き捨てた声が聞こえてきた。


 「めんどくさ。」


 しっかりと耳にまで聞こえてきたそんな言葉。

 俺はその言葉に釣られるようにリリスさんへ顔を上げると、リリスさんはビーアを口から流し込んでいた。


 「あ゛っ。旨い!!」


 その姿はまさにおっさんだった。

 色気も何も感じない、その辺にいるような…

 でも…

 なのに…

 リリスさんが持っている大きなあれがすごく揺れていて、それはもう…

 

 すごかった。

 もう一度言う。

 

 すごかった。


 俺はリリスさんの身体の一部分に視線を奪われていた。

 だけどすぐに、身の危険を想起した。

 だって、胸へと視線を向けると、クーロはすぐに気づいていたから。

 何度痛い目に…

 きっと、リリスさんも…

 

 だから同じ轍をふ踏まないために、俺はすぐさま視線を外す。

 そして顔へと視線を戻すと、リリスさんは笑っていた。

 悪い顔で…


 「これだから童貞は…」


 ど…


 「はっ?お、俺童貞じゃないし。」

 「ふ~ん。」


 リリスさんはじっと俺の目を見てくる。

 疑うような、見透かすような視線で…

 

 う…


 リリスさんからの圧で、目を外したくなる。

 でもだめだ。

 今外したら、俺があれだということがばれてしまう。

 だから、絶対に外したらダメだ。

 絶対に…


 そしてゆっくりと、リリスさんの口が動き出した。


 「童貞。」


 はっ?


 「な、なんで?」

 

 だって、目を外さなかったのに…

 なのに…


 動揺する俺、そんな俺を小さく嘲笑ってから…


 「たけしさん、目バッキバキですよ?童貞特有の…」

 「バッキバキ…?」

 

 俺そんなバッキバキだったの?

 へっ?

 

 「すごく、気持ち悪かったです。」

 「きも…」


 心にどっすーんと、何か重いのが乗った気がした。

 こう、メンタルをペチャンコにしてくる感じで…


 辛かった。

 童貞ってばれるのも痛かったけど、きもいって言われるのもなかなかに…

 死のうかな…

 というか死の。


 あぁ、どうか神様、来世では、ハーレム人生になりますように。

 

 俺はいるかどうか分からない神様に祈りを始めた。

 だけど、そんな必要はないらしい。

 

 「触ってみます?」


 目の前に、女神がいたから。


 「へっ?」

 

 口から勝手に、そんな言葉が漏れ出す。

 でもそんなことはすぐに忘れてしまった。


 「いいんですか?」


 俺の頭の中には、いつの間にか期待100ということしかなかった。

 そしてリリスさんは、笑顔を浮かべてから小さく頷いてきた。


 えっ?

 えっ?

 良いの?

 本当に良いの?

 ほんとうに…


 頭の中では、いきなりのことに疑問しか湧かない。

 でも、身体は正直だ。

 いつの間にか俺の手は、リリスさんの方に向かっていた。

 ゆっくり、ゆっくりと…


 近づけば近づくほど、期待が膨らむ。

 あ~、どんなに柔らかいのかな。

 どんな感触なのかなと…

 気づいたら、相棒も起きていた。

 相棒も期待が膨らんでいるみたいだ。

 自分が膨らみながら…


 そしてもう少しで神秘に手が届きそうだ。

 あと少し、あと少し…

 あ~~~~~~…

 あ~~~~~~~~~~~っ!!!


 そして…


 「冗談ですけどね。」


 はっ?

 へっ?

 ふぁっ?


 「リリスさん、今なんて…?」


 俺は自分の耳を疑いたかった。

 でも悲しいことに正常だったみたいだ。


 「冗談ですよ。触らすわけないじゃないですか。」

 「」


 なんも反応を起こせない俺。

 そんな俺に、リリスさんはさらに言葉を加えてくる。


 「そんな簡単に触らす人なんていませんよ。痴女以外は。」


 ごもっともだった。

 なんも間違ってない。

 だけど…


 俺、この人嫌い。

 すごく嫌い。

 童貞の純情弄びやがって。

 ほんと嫌い。

 ほんと嫌い。


 リリスさんは、俺の顔を見ながら楽しそうな笑みを浮かべている。

 そしてまた…

 

 「触ります?」

 そんなこと言ってきた。


 えっ、好き…


 俺は手を伸ばす。

 そして…

 

 「いいんですか?」

 「いや、嘘ですけど。」

 

 ピシャリだった。


 この人嫌い。

 ほんと嫌い。


 こうして、リリスさんとのおしゃべりは終わりを…


 「リリス~~。どこーーっ?」


 リリスさんの同僚の声が聞こえてきた。


 「やば…」


 目の前ではそんなことを呟いてるリリスさん…

 そして、その同僚にリリスさんはすぐに見つかって…


 「あんた、もしかして酒を…」

 「飲んでない、飲んでないです。」

 「へーそうなんだ。じゃーギルド長の前でも同じこと言ってよね?」


 その言葉一つで、一瞬にして青くなるリリスさん。


 「嫌。嫌です。怒られる。絶対に怒られる。だから嫌ーーーっ!!」


 こうしてリリスさんは、同僚に引っ張られながら連れていかれましたしたとさ。


 ざまぁみろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ