リリスさんとお話を…
初めての飲みの席、前の世界ではばか騒ぎという印象の強い飲み会。
その飲み会よりかは盛り上がっていない今の席…
だけど、十分に楽しめていた。
そんな楽しい時間に…
「少しいいですか?」
そんな言葉で水を差された。
俺たち一同は声がしてきた方に顔を上げると、そこにいたのはリリスさんだった。
「いいですけど、どうしました?」
リリスさんの言葉に、ブライスが要件を聞き返す。
その言葉を聞き終えると、リリスさんがこっちを振り向いてきた。
さっきまで笑顔だった表情は何処へやら、蔑むような視線で…
へ?
な、なんで?
戸惑いの気持ちが湧いてくる。
だけど、そんな気持ちを誰も解決してくることはなく…
「これ、借りていいです?」
「どうぞー。」
「(コクコク)」
リリスさんの言葉に、二人が肯定した。
しかも、これって…
あとさ、本人の意見も聞いてくれない?
別にいいんだけどさ…
「じゃ―、貰いますね。行きましょうか、屑。」
「え、は…、えっ???」
なんか今…
「リリスさん、今屑とか言いませんでした?」
「言ってませんよ?屑…」
「え?また…」
「言ってませんから。早く行きますよ。屑さん。」
「いや、思いっきり言ってますよね。」
「気のせいですよ。」
「どこがっ!?」
こうして、俺はリリスさんに連れられて行った。
そして連れ去られるときに見た、さっきまで俺がいたテーブル…
そのテーブルでは…
ブライスは会ってからずっと何ら変わらない爽やかな表情…
だけど…
トゥーリさんは、見て分かりやすいくらいの笑顔だった。
なんか俺、
もしかして邪魔者…?
そんな寂しいことを感じてしまった。
リリスさんに連れられ、新しく席についたリリスさんと俺…
そんな俺に、座って早々リリスさんが…
「すごく楽しそうでしたね。パーティーを抜けて、すぐさま新しいパーティーに入った屑さん。」
いきなり辛辣なことを言い放ってきた。
「えっ?」
衝撃的過ぎて、聞き間違いかと思ってしまった。
というか、思いたかった。
けど…
「屑。」
それだけ言葉にして、リリスさんはゴミを見るような目で見てくる。
でもその目、癖に…
何でもないです。
「リリスさん、なんで俺、屑呼ばわりされてるんですか?」
「自分の胸に聞いてみたらどうですか?」
胸か…
んー…
でも、悪いことした記憶はないんだよな。
俺が頭を捻っても何も出てくる様子がないのが見て取れたのか…
はぁー。
そんな大きなため息をついてから…
「これだから屑男は。クーロさんのことですよ。クーロさんのっ!」
「クーロ?」
正直、クーロのことで屑認定されるようなことは、俺には思い浮かばなかった。
いや、一つだけあった。
「クーロの絶乳をいじってたことですか?」
リリスさんは目を何度かパチパチとしてから、プっと小さな音を漏らした。
「違いますよ。確かにクーロさんは絶…。まったくありませんけど。いや、そんなどうでもいいことじゃなくて…」
リリスさんの方がひどかった。
どうでもいい…
クーロが聞いたら、きっと泣くだろうな。
可哀相に…
まぁいいか。
「なんです?」
「クーロさんを捨てて、新しいパーティーに鞍替えしたことですよ。」
捨てた…?
捨てたのは俺じゃなくて…
そして俺が戸惑っていると、クーロさんから独り言らしきものが聞こえてきた。
「ほんと、これだから屑男は。すぐ胸の大きい女性に蔵替わりするんですよね。ほんと屑ですよ。でもたしかに貧乳の方の方が、浮気や捨てられるって話はよく聞きますし。貧乳の方、すごく可哀相です。良かったです、私のは大きくて。」
どう考えても、最後の言葉で全世界の貧乳を敵に回していた。
これ聞かれると、俺まで貧乳の方々の敵認定を受けるのでは…
しかももう既に、別卓の胸があれな人たちからすごく怖い視線が飛んできてるし。
肌にまで、ピリピリと何か感じるんですけど…
すごく、怖いんですけど…
あれです。
俺は、貧乳すごく良いと思います。
貧乳は至高。
そんなことを思っている間にも、まだリリスさんの言葉は続く。
「これ逆に、貧乳であるクーロさんが…。むっ。」
さすがに、手で口を塞いだ。
帰り道で俺、死にたくないから。
まだ、死にたくないから。
しかも原因が、貧乳と罵倒されたからとかいう意味不明な理由なんかで。
しかも、俺は一言も言ってないのに…
口を塞がれたリリスさんは、それが気に食わないのだろう。
不機嫌そうに見てくる。
俺、リリスさんの命の救世主なのに…
この話続けてたら、後ろから刺される未来が見える。
俺、今だけは未来が見えるんだ。
だから、本題に戻ろうと思う。
俺はリリスさんの口から手を離して…
「あれですよ。俺がクーロを捨てたんじゃなくて、クーロが俺を捨てたんですよ?」
自分で言ってて辛くなる。
また、その現実を見ないといけないことも…
そして俺の言葉を聞いた、リリスさんは何度も目をパチパチとさせ始めた。
「そうなんですね…」
少し気まずそうに、言葉を落としてくる。
言葉と一緒に視線も一緒に落ちて行って、今はじっとどこかを見つめている。
そしてすぐに、ぼそっと…
「人を選べるサイズでもないのに、あの人は…」
聞いてない、聞いてない。
俺は何も聞いてないし、知らない。
俺はこの場にいなかったんだ。
そうだ。
そうなん…
リリスさんは、可愛い笑顔を向けてきた。
「身の程を…。胸の程を知れっ、ですよね?」
頼むから…
巻き込まないで…




