ブライスパーティーでの初戦闘を…
俺たちは茂みの中で盗み見ている。
何をか…
そう、ゴブリン様御一行様をだ。
視線の先の団体様は、合計5匹のゴブリンがいる。
全員で固まりながら、どこかに向かって歩いて進んでる。
俺たちの視界を横切るように…
そしてもう少しだけ補足すると…
俺たちが潜んでいる茂みから、右斜めの方向に距離で10メートルくらいだろうか。
もう少しで、茂みの正面に到着しそうだ。
そんなゴブリンたちは、周囲を警戒…
いや、獲物を探すように、周囲をキョロキョロしている。
不格好に足を大きく開いた…
人とは違う異様な歩き方で…
また、何匹かは木の棒を手に持っている。
それが目に入ると、さっきのこともあってか、少し身が縮こんでしまう。
だから震える身体を誤魔化すために、俺は相棒を強く握った。
ここで言う相棒というのは…
あっちの相棒じゃなくて、あの相棒だから…
さすがの俺でも、こんなところではあっちの相棒は握らないから…
でもどこで握るのかと言うと、そりゃー…
まっ、そんな感じで団体様が少し進んだ。
今はもう、団体様が正面に差し掛かりそうだ。
俺は左にいるブライスへと視線を向けた。
いつ来るかわからない合図を見逃さないために…
そして隣を振り向いて目に入ってきたのは…
ブライスと奥のトゥーリさんが正面をじっと見つめている真剣な顔だった。
「トゥーリ…」
合図が来た。
指示を受けたトゥーリさんは杖を握りしめて…
「うん。【ストーンバレット】」
そう呟いた。
トゥーリさんの呟きからすぐ、尖った石がいくつも現れる。
10もはないと思う。
だけど、ぱっと見では正確に数えられないくらいの数。
そしてすぐ…
尖った石の礫たちがゴブリンたちの方に飛んでいった。
まるで、グングンと伸びていくような一直線の軌道…
だけど…
「「ぐぎゃ。」」
ゴブリンの何匹かは、石の礫が到達する前に気づいた。
そして、連鎖的にゴブリンが動き出す。
つぶてに気づいたゴブリンは…
手に棒を持っていなかった2匹は回避へと、持ってる2匹は棒を前へと構える。
まだ気づいていない残りのゴブリンは、何事かとあたふたと首を振っている。
そして飛んでいった石の礫、その結果は…
回避に移った2匹…
そのうちの1匹はきれいな回避を、もう1匹は回避したところに来た礫で…
棒を構えた2匹…
1匹は礫で棒が弾かれながらもなんとか傷を負わなかった。
だけどもう1匹は、棒が弾かれた後に追撃のように来た礫に肩と足が貫かれた。
そして最後の1匹は訳も分からないまま…
どう見ても、ゴブリンパーティーは壊滅しかけだった。
だけど石の礫の魔法の経過を見送った後すぐ、ブライスから…
「いくぞっ!」
遠慮はしないようだ。
俺はその声の通りに、茂みから出る。
もちろん、言い出しっぺのブライスも一緒に…
ブライスは御一行様に向かって一直線に…
俺は迂回するように右から軽く円を描くように…
ブライスはそこそこ重そうな装備に盾と剣を持っている。
どう見ても、魔物のヘイトを自分に集めるタイプだった。
そしてブライスからも、作戦会議で自分がヘイトを稼ぐ役割というのは聞いていた。
だから俺は、ブライスにヘイトが集まるのを待つために途中で足を止めた。
なんだけど…
当然ブライスは突撃していく。
そして…
突進の勢いそのままに、まずは目の前にいたゴブリンを剣の切っ先で喉を串刺しに…
そしてその隙を襲ってきたゴブリンを盾で弾いてから、剣を振って両断。
そして最後に残った、座り込んでいた手負いのゴブリンへは、ゆっくり歩いて行って一思いにグサリと…
簡単に言うと、惨殺だった。
そして、この情景に付き合わされた俺の心情はと言うと…
俺、何もしてないんだけど…
まさに、これだった。
俺がぽかーんとしている間に、トゥーリさんもやってくる。
「ブライス、ナイス。」
いつもと比べて、少しだけ抑揚のある声だった。
それに…
「トゥーリもナイス!」
ブライスも、いつもどおりの爽やかな笑顔で返した。
でもさ、おもうんだよ。これ…
俺どう入っていけばいいんだろうね。
この会話に…
なんというかさ、いらなくね。
というか、普通にいらなくね?
このパーティーに俺…
いったい、今のどこに入る余地が…
いや、まだこれからだよな。
きっとそうだよな。
そうに…
そしてそのためにも、人間関係はきちんとしとかないとな。
うん。
俺は無理に笑顔を作って…
「ふ、二人ともナイス。」
一応、頑張った。
だけど…
「お、お前さんも良かったぞ…」
何が良かったんだろうか…
はは…
こうして、ブライスパーティーでの初戦闘が終わった。
早く新しい就職先でも探そ。




