ゴブリン狩りをやってみよう…
目の前にはゴブリンが3匹、そして俺とクーロはやつらになるべく近い木の陰…
「君、いける?」
クーロから作戦実行の最終確認の合図…
正直、自信はない。だけどそもそも、この世界に来てから自信というものを持った記憶なんてない。だって、大したギフトを貰えなかったんだ。それが当たり前のはずだ。
だけどまぁ、俺にはクーロがいる。他力本願だけど、それは今に始まったことじゃない。それに、クーロの瞳には不安なんて見えない。なら、信じるしかない。
「オッケー。」
俺の返事に、クーロはうなずく。そして鋭くなった視線を、ゴブリンたちへと向けた。木から、クーロは指を出して、そして…
「いくよ?【ファイアーボール】」
クーロがそう唱えると、指先から急に火が引火して大きくなる。そして、発射した。
勢いよく発射された魔法は、いいスピードで一体のゴブリンへと向かって行く。だけど、狙ったのとは違う、1対のゴブリンが魔法に運よく気づいた。
「ぐぎゃ…」
他のゴブリンへと知らせるためだろう。焦ったように変な声を上げる。だけど、どう見ても遅かった。
気づいたゴブリンの上げた声は空しく…
「ぐぎゃああああぁぁあぁぁ!!!」
1対のゴブリンへと、火魔法が炸裂した。
魔法を喰らったゴブリンは、そのまま火の中でもがき苦しんでいる。そして先に気づいていたゴブリンは、火魔法が飛んできた方角である俺たちの方をきょろきょろと見渡している。どう見ても、魔法の使った主を探している。もう1対は、火にもがいているゴブリンに夢中だ。つまり…
チャンスだ。
「いくよ。次もすぐに準備するから…」
「あぁ…」
俺はクーロの合図が来るのを、じっと短剣を握りしめて待つ。そして…
「【ウィンドボール】」
合図だ。
俺はめいいっぱい地面を踏み込んだ。そして、その力を瞬発力に変えて、もう一歩を踏み出していく。その中で、クーロからの風魔法が視界に移った。それに俺は、安心感を感じる。でも、安心するのは今じゃない。
俺の進む速さより早く、クーロの魔法が進んでいく。当り前で、いつも通りだから気にしない。今俺が集中すべきなのは…
俺が進んでいく先、そしてそこにいる、最初に俺たちに気づいたゴブリンだ。
そのゴブリンは、すぐに俺とクーロの動きに気づいて、すでに臨戦態勢をとっている。とはいっても、俺と魔法とでの挟撃。そしてゴブリンは、クーロの短い射程、その距離から発射された魔法を躱せるほどの敏捷性はない。だから、あいつにできることは、クーロの魔法に身構えるだけだ。
グングンと俺より先に進んでいく風魔法、それがやつにぶつかった。
身構えていたおかげで、ぶつかった衝撃を背中から地面におしりから落ちるだけにとどめるゴブリン。だけどそれで十分だ。
地面に座り込んで今どうしようもないゴブリン、俺はそいつの胸を一突きした。
重力に逆らえなくなって、首がガクッと落ちる。ちゃんと、絶命してくれたみたいだ。
だから残るは…
俺がやったゴブリンが風魔法が衝突してようやく、俺とクーロの存在に気づいたゴブリンだけだ。
もう容易い。そう感じてしまう。だけど不安なことは、今の俺の位置と最後のゴブリンとがクーロの射線に被っていそうなことだ。で、やっぱり…
「君っ!のいてっ!!」
嫌な予感が当たってしまっているみたいだ。
そして都合の悪いことに、最後のゴブリンは俺目掛けて突っ込んでくる。1メートル、ヤツとの距離はそれくらいかもしれない。
俺がとっさに交わしたとしても、クーロが最後に用意している魔法は間に合うかは怪しい。だから俺に残っている選択肢は3つ。
・短剣での対抗
・ギリギリで回避
そして…
俺は握りしめている、魔法剣に力を籠める。今込めている力とは違う力を。そして目の前にいるやつが俺へと届く前に…
俺は短剣を振り払った。
いつものように魔法剣から斬撃が飛んでいく。急に現れたそれを、ゴブリンはガードするために腕を前に出した。
よし…
俺はゴブリンが防御態勢を取り始めたの確認してから、クーロの射線をあけるように後ろへとステップを踏む。だけど、俺の予想に反して…
ザクッ…
斬撃が、この前と同じようにゴブリンを切り裂いた。
「あれっ!?」
とりあえずは、俺たちの作戦が成功した。
なんでっ!?




