森への道中でおしゃべりを…
今俺とクーロは草原にいる。
もう少し言うなら、草原と草原のとを区分する、草が抜かれていてそこそこきれいに整備されている道を歩いている。もちろん森へと行く間に、草原にいる魔物と鉢合わないようにだ。
草原の中での戦闘は、また草を燃やしかねないからね。どっかの誰かさんが…
そんな感じで俺たちが一応辺りを警戒しながら歩いていると、クーロが強い視線を向けてきた。
「今日はホブゴブリンにはいかないよ。」
武器屋で昂った気持ちも一日経って冷めたから、ホブゴブリンにとかそういう気持ちはなかったんだけど、クーロが先に釘を刺してきた。
「えっと…」
「絶対に嫌だからね。」
強い意志を感じた。
まぁ確かに、昨日はクーロの魔法がほとんど通じた様子はなかった。だから今日もホブゴブリンに行ったところで、倒すとかそういうのは無理だろう。そう思うと、クーロの意見は至極当たり前だ。
「はい…」
「よしっ。」
俺の返事にクーロは満足そうに笑顔を作った。
まぁそもそも、ホブゴブリンはÐ級の魔物らしい。そして、俺たちはE級。リリスさんから昨日聞かさえた話的には俺たちはホブゴブリンに行くべきではないだろう。というか、まじでもっと早く教えてくれよ。下手したら、まじで死んでたよ。
「あーそういえばさぁ…」
「どうしたの?」
「なんで昨日は、ホブゴブリンに行くのオッケーしてくれたんだ?冒険者ランクとか魔物のランク知らなかったとはいえ、けっこう危険な話だったのに…」
そう、昨日のホブゴブリン討伐は俺がクーロに言い出したことだった。
最近の俺たちはそこそことゴブリンも倒したことだし、いっちょ行ってみてもいいかなと思ってたんだ。まぁ、それだけではないのだけど…
俺の言葉に、クーロは一気に気まずそうな顔になった。というか、可哀相な人を見る目かもしれない。
「それはね…」
何が飛び出してくるんだろうか…
俺のそんな疑問に、クーロはすぐに答えてくれた。
「君がちょっと可哀相だったからかな。」
気を使ったような、困った笑顔でクーロはそう言った。
可哀相…
あー、もしかしてばれてたのかな…
返答しない俺に、クーロは言葉を続けてくる。
「あれだよね?勇者様と聖女様って、たぶんだけど、君と一緒に召喚された人たちだよね?」
「そう、だな…」
やっぱしばれてたみたいだ。
「で、君は悔しいのかなーって。一緒に召喚されたのに、他の人たちは勇者様や聖女様になっていて、君はこんなで…」
こんな…
なんかその言葉、ちょっと引っかかるものが…
でも…
「その通りです。」
「だよね。まぁだから、それくらいのわがまま、私だけでも聞いてあげようかなって。」
この時のクーロの顔は困り顔ではあったけど、その中に母性的な優しさがあった。
「クーロお姉ちゃん…」
「クーロお姉ちゃん…。クーロお姉ちゃん…、お姉ちゃん…」
俺のちょっとふざけた呼びかけを何故かクーロが反芻し始めた。で、何故か頬を赤らめ始める。
そして俺へと、嬉々とした目を向けてきた。
「ねぇ君、さっきのもう一回言ってくれないっっ!?」
刺さってしまったらしい。嫌なところに…
はぁ…
頼むから、これ以上は頭おかしくならないでくれ…
「嫌。」
「えーっ!!」
すごく残念そうだった。
ふざけた俺も俺だけど、こいつもこいつだよな。
まぁ、昨日はクーロがかなり気を使ってくれたみたいだし、ホブゴブリンなんかによそ見せずに、今日は頑張ってゴブリンを狩りますか。
こうして俺たちは、いつもの森の中へと入っていった。




