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武器屋で…

 俺たちはリリスさんが上司に怒られているところをしっかり確認した後、冒険者ギルドを出た。そして今、リリスさんが教えてくれた武器屋の前に来ていた。


 まずは武器屋の外観の話をしたいけど、先にリリスさんについて少し思ったことを話させてくれ。


 もしかしてリリスさんってさ、人を揶揄うのに夢中になりすぎて色々説明忘れてたんじゃないかと思うんだよ。つまり今度もあの人のところに行くと、きっと俺たちは今後も大事な情報を教えてくれないんじゃないか…


 そう思ったんだよ。うん。


 今度から別の人のとこ行こ…


 ということで、武器屋の外装だ。ぼろい。以上。


 俺たちはそのおんぼろな武器屋へと入っていく。


 店がおんぼろなのに入っていくのかって?


 そうだよ。こういうとこって老舗感あって、きっといい掘り出し物があったりするんだよ。それにもしだめだったら、またリリスさんの上司さんにお願いして、リリスさんを怒ってもらえばいいし。というか、そっちの方が見ていて楽しいし。


 ということで中だ。


 やっぱり中もきれいではない。だけど心が躍る。


 いやだってさ、剣やハンマーといった武器がたくさん壁一面に立てかけられているんだぜ。だって日本だった

ら、実際に剣をみたことある人だってすくないんじゃないか?それなのに壁一面にたくさん。これは心躍るよ。あっ、モーニングスターだ。見た目いかつっ…


 俺が傍目からしたらきょろきょろとしていると、クーロの声が聞こえた。


 「おじゃましま~す。」


 奥に響いていくような声だった。


 そう、いまここには俺たち以外に人がいなかった。だけど奥に続くように、ドアを引っぺがしたように隣の部屋へと道が続いていて、その奥からチカチカと赤い光が光っている。きっと奥で作業でもしているのだろう。だからクーロは、その人を呼んだ。


 待つこと少しして、赤い光が止んだ。そして…


 「あいよ…」


 全くやる気のなさそうな声とともに、背の低い老人が置くから出てきた。


 「おじさん、武器見せてもらっていい?」


 「好きにしな…」


 やっぱりおじさんは気だるげだった。


 でもちゃんと許可がもらえたことだし、俺たちは気ままに武器を見ていく。なんだけど…


 「高いね…」


 「あぁ…」


 そう、武器一つ一つが1万ユーリくらいは軽く超えているものが多い。今の俺たちの収入では、少し懐が…


 というか、俺は全財産出しても全く足りてない。ひもじい…


 でも、貯金あるらしいクーロならきっと買えるんだろう。まっ、だからといって、さすがにそういうのは言葉にしにくい。俺は黙って、クーロが物色していくのについていくことにした。


 ひぃぃ…


 この長剣、5万もするのか…


 はー、たっか…


 この時の俺は、お金のない小学生がゲーム売り場に来ている感覚だった。懐かしい。俺、16歳だけど…


 そして暫くの間武器を眺めていのだけど、急にクーロから気まずそうな顔を向けられた。


 「いこっか…」


 クーロ的にも、さすがに厳しかったみたいだ。それにけっこう見ていたのに、何も買わないということに気まずさを持ったのだろう。でも、じゃ―何か一つテキトーにというような安価な値段でもない。


 「おじさんごめんね。私たち、もう行くね。」


 クーロがそう言うと、おじさんは顔をしかめた。


 「冷やかしが…」


 ぼそっと言った言葉。だけどしっかりと俺の耳にまで届いた。そして、クーロにも…


 「はは、ごめんね。」


 クーロはそう告げて、外へと向かって行く。俺もそれに付いて行こうとしたその時…


 「おい、おいっ!そこのお主っ!」


 急に呼びかけに俺とクーロは立ち止まった。


 「お主っ、男の方じゃ。こっちに来いっ!」


 俺か…


 「はぁ…」


 俺はおじさんの方に向かう。そして、おじさんの目の前まで行くと、おじさんが俺の短いのを引っこ抜いた。もちろん、短剣の方ね。


 「あっ…」


 急なことに、口からそんな声が漏れる。だけど当のおじさんは気にもしてないようだ。ずっと、俺の短剣を手で転がしながら見ている。そして…


 「頼む。これを、この魔法剣を売ってくれっ!!」


 へっ…?


 「なんで…?」


 急なことで何がなんだか分からない。だから俺は、おじさんに理由を尋ねた。だけど…


 「……………」


 おじさんは黙り込んでいた。ただ、魔法剣を鋭い眼光で睨みつけている。


 ふむ…


 もしかして…


 この武器って、すごいやつなのか…?何回か傷を負わせることはできた。だけど今までほとんどが、ボフボフと中身のない斬撃しか飛ばせていない。だからゴミクソで鼻くそ武器かと思っていた、だけどおじさんのこの反応、もしかして、というか絶対にすっごい武器だろう。そうに違いない。だって、おじさんは今も魔法剣を睨みつけている。こんな表情をしているのに、ゴミ武器なんてありえるわけがない。俺には分かる。もうこれは、国宝級とかそんな感じのに違いない。つまりだ、俺がこの武器の潜在能力を引き出せば…


 俺の無双物語に…


 むふふふふ…


 あ~、心の中で笑いが止まらない。


 「すまんな、おじさん。これは売れないんだよ。」


 「お主、でもこれは…」


 おじさんが苦々しい表情になっている。


 きっと売ってもらえなくて、悔しのだろう。つまりそれくらいすごい武器…


 はぁ、なんか気持ちが昂ってきた。今なら、ホブゴブリンだって倒せる気がする。きっと…


 俺は魔法剣を返してという意思表示のために手を差し出して…


 「じゃ―俺たち、もう行くから…」


 「グググ…」


 おじさんからそんなうめき声が聞こえてくる。それくらい悔しいのだろう。だけどおじさんは諦めたようにため息をついた後、俺の魔法剣を返してくれた。


 こうして俺たちは、武器屋を後にした。


 「~~~~~~~」


 去り際、おじさんが俺たちへと向かって何かを言っていた。そんな気がした。

これ、2章終わったらたぶん閑話出します

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