ブライス…
今ギルドにある食堂、そこのテーブルの一角に俺たちはいる。俺とクーロ、それと…
「俺はブライスって言うんだ。よろしくなっ。」
そのブライスは爽やかな笑顔を俺に向けてくれた。
ブライス…
えっ、名前かっこよ…
しかも、俺とは違って外見も名前負けしていないし。いや、俺も負けてないけどな。俺、めっちゃレミーロ顔だし。めっちゃ、俺にお似合いの名前だしっ!
そのブライスは、少し色彩の薄い明るい茶髪、爽やかで穏やかな顔、そして、今は座ってしまっているから、細かなところまでは分からないが、なかなかに身長が高い。180は少なくともあるように見える。そして、細身だ。身長の高さから相対的にそう見えるのかもしれないが、ザ・筋肉モリモリではない。だけど、服から出ている腕などから、ちゃんと筋肉質なのは分かる。総合的に言うと、細マッチョだろう。
悔…
いや、別になんでもない。悔しいとか思ってないからっ!
爽やかな挨拶をくれたブライス、その彼に俺も返事を返さないとな。
「俺はレミーロだ。よろしく。」
俺もなるべく、彼に習って爽やかさを意識した。そして、やっぱり効果があったのだろう。すぐに、その効果が彼の反応にあった。
「お前さんがレミーロっ!?ほんとかっ!?」
はぁっ!?
ブライスはそう言ってから、俺をじっくりと見つめてくる。そして、そのすぐ後に、彼からして斜め前、俺の隣にいるクーロに確認の視線を送る。そして、そのクーロは渋々頷いた。
「まじか…」
その”まじか”はなんの”まじか”なんだろうな。はは…
この世界のやつらは、ほんと人の名前にケチばっかりつけやがって。俺がレミーロとっていったら、レミーロなんだよ。ほんとっ…
じゃーさ…
「ブライス…、お前的には何が俺に似合いそうなんだ?俺の名前…」
自分の頬がピクピクと震えるのを感じながらも、頑張って尋ねた。そんな俺をブライスはじっくりと見つめてくる。そして…
「たけし…?あぁ、きっとたけしだな。」
「あ゛ぁ…?」
「お前さん、たけし顔だよ。うん。」
ブライスは納得のいった顔だった。てかさ…
「どいつもこいつもなんだよっ!人をたけしたけしって。なんだよ、たけし顔ってっ!!どんな顔だよっ!!!訳分かんねぇよっ!あ~~~っ!!!」
トントン…
両手で頭を押さえている俺に、横にいたやつが肩を叩いてきて…
「私は、君にすごくお似合いだと思うよ?その名前…」
こいつ…
「うるさいっ!ショタコン…」
「ショタじゃないからっ!ただ、幼い男の子が少しだけ、みんなよりほんの少しだけ好きなだけだよっ!」
「いや、それをショタコンって言うからな。」
「う~~~~~っ…」
クーロが悔しそうに俺を上目で睨んでくる。きれいな顔、なのにストライクゾーンが残念過ぎる。いや残念と言うか終わってる。
そんな感じで、クーロと軽くバチバチしていると、正面からブライスの声が聞こえてきた。彼の方を見ると、苦笑いだった。
「お前さんらっ、仲良いな。」
はぁっ!?
「「仲良くないから(よ)っ!」」
「そ、そうか…」
ブライスはやっぱり、苦笑いだった。だけど、それでも前のやつはかっこよかった。
はぁ~~~~~…
悔しいよ…
「で、ブライス、どういう用だったんだ?」
「あ~~~…」
当の本人なのに、本題を忘れてたみたいだ。何度か視線を動かした後、どういう表情か分からないあいまいな顔をしてきた。
「お前さん、今日の狩り、どうだった?」
どう…?
何を聞きたいんだろう…
狩りか…
普通、って言葉もつかえないし。言葉にするのが難しいな。とりあえずは…
「しんどかったな。やっぱり…」
端的に言うなら、これだと思う。
「そうか…」
ブライスは口元辺りに手を当て、何か考え込む。だけどすぐに、顔をあげた。
「うん。やっぱり、お前さん、そいつは止めとけ。」
クーロのことだろう…
急に…
「なんでだ?」
俺の言葉にブライスは意を決した表情になった。
「まずな、射程3メートルしかない魔法使いってなんだよっ!」
「うっ…」
横にいるクーロからも苦しそうな声が聞こえてきた。なかなかにクリティカルだったみたいだ。
で、ブライスの言いたいことも確かに分かる。けど…
「クーロは最近魔法使いになったばかりなんだから、射程が短くてもしょうが…」
ないんじゃないか…
って俺は言いたかった。
「確かにそいつは、最近魔法使いになったばかりだ。だからしょうがないのかもしれない。射程が短いのも、途中で魔法を止められないのも分かる。だけどなっ…」
ブライスは少しヒートアップしている。そして、異様にクーロについて詳しい。そう言えば前に、クーロは他のグループにいた的なことをいっていた。で、ブライスのこの詳しさ…
もしかして…
「ブライス…。もしかしてお前、以前にクーロとパーティだったのか…?」
「あぁ…」
ブライスは苦しそうにそう吐き捨てた。
嫌な予感…
「な、何かあったのか…?」
「俺のパーティにはなぁ、息子持ちのやつがいるんだがよ…」
あっ…
「そいつがな、その息子にいろいろ吹き込んだんだよ。巨乳は悪だ、とか。巨乳死すべし、とか。貧乳は至高。胸は小さければ小さいほどいいだとかな。それだけでも問題なのにな、そいつ…」
ゴクッ…
「その息子と一緒にホテルに入っていこうとしたんだよ。意味わかんねぇだろっ?幸い、なんとか未然に防げたし。息子も意味が分かってなかったから、何とか良かったんだよ。でもな、そいつが絡んでからその息子…、母親の胸を見ただけで叩くようになったんだよ。もー、それからその母親、少し病んじゃってよ。だから、お前さんもなるべく早めに別れた方が身のためだぞ。」
クーロは気まずそうに下を向いていた。
「クーロさん、マジで何してんのっ!?あほなのか?馬鹿なのか?よくさっき、自分をショタコンじゃないとか言えたなっ!?どう考えても、生粋の変態じゃねぇか!!!」
「いや、あれには理由が…」
「ほう、どんな理由だ?」
俺の言葉に、クーロが目を右往左往させ始める。そして、小さく呟いた。
「つい可愛かったから…。それに胸のでかいやつなんて死ねばいいんだよっ!」
はは…
こいつ、やっぱりだめかもしれない。
「絶壁ショタ…」
つい俺がそうつぶやくと、クーロの頬がむーっと膨れだした。
「君だって、似たようなもんじゃんっ!私の胸は触るし、スキルはないし、魔法も使えないし。それに、攻撃手段だって、その短いのだけじゃない!!!」
「触ってねぇよっ!!!それに短い言うなっ!違う意味にとれるだろっ!」
「触ったよっ!!!それと、実際に短いじゃんっ!!!」
「はぁっ!?」「むーっ!!」
俺とクーロのそこそこの激しい言い合い。ちょっと、長引きそうだった。だけど、もう一人のつぶやく声ですぐに終焉を迎えた。
「えっ!?魔法とスキルが使えない?魔力がSなのに…?はぁっ!?」
小さな呟き。だけど、俺の耳にはしっかりと聞こえた。その次の言葉も…
「やっぱいらね…」
今すぐにでも泣きたかった。俺だってわかってるんだ。だけどさ、そこまで言わなくてもいいじゃん。
うぅ…




