やらかし…
「「ハァハァハァ…」」
俺とクーロ、二人の口からこんな音が漏れ出している。それは何故かと言うと、もちろん…
「クーロのバカ。なんで、こんなところで火魔法なんて使うんだよっ!!!」
「しょうがないじゃんか。とっさのことだったんだし。それに、火消えたんだからいいじゃんっ!」
確かに火は消えた。というか、消したんだ。
「良くねぇよ。お前、ここに来る前に自分でなんて言ってた!?草原エリアで火は使えないって自分で言ってただろっ!なんで使うんだよ!お前やっぱり、バカなのか?」
「言ったじゃんっ!とっさのことだったんだって。しょうがなかったんだよ。それに君なんて、変な声上げてただけじゃんかっ!」
変な声…
「あれは、しょうがない、だろ…」
だって、うさぴょんが可愛すぎたせいだ。でも、こればっかりはしょうがない。だって老若男女、可愛いものには目がないんだから。
「君だって、似たようなものだよっ!」
言われてみれば、確かに…
可愛さにほだされて動けなかった俺…
それと、即座に動いたけど草原エリアを丸焼けにしようとしたクーロ、確かにどっちもど…
なんか、スケール違くね?クーロの方が,壮大すぎるというか…
そして、俺とクーロのこんな言い合いに割って入る人がいた。いや正確には、割って入ってはいない。
「必死なクーロ様も、すてき…」
そう、俺たちが助けた少女だ。その少女から、そんな呟きが聞こえてきた。
この言葉を聞いた瞬間、すごくあいまいな、照れくさそうな表情になるクーロ。そして…
羨ましい。なんで、クーロなんだよ…
冷や水をかけられたような俺、この対比がすごく悲しかった。
俺が少し、ほんの少しだけ落ち込んでいると、クーロの声が聞こえてきた。
「そう言えば君、大丈夫?怪我とかしてない?」
一瞬、俺のことかと思って顔を上げた。だけど、クーロの向けている視線の先は少女の方だった。
”君”って呼び方、こういう時は紛らわさしいな…
そう思いながらも、俺は二人の会話を傍観した。
「はいっ、大丈夫ですっ!」
さっきまで、魔物に襲われていた人の返事とは思えないような良い返事だった。
「そ、そう…?」
「はいっ!」
何故か少しだけ、クーロは目をキョロキョロとさせてから…
「他に人はいないみたいだけど、今日は一人で?」
「はい、そうですっ!」
「そっか…。帰り道、一人で大丈夫?もし厳しいなら、私たちが一緒に帰るけど…」
「いえ、大丈夫です。クーロ様のお手を煩わせるわけにいかないのでっ!」
「そっか…」
なんだろう。少女の熱意に押されてか、クーロが良く分かんない表情をしている。もしかしたら、人に尊敬されるのが初めてで、どういう表情をしたらいいのか分からないのかもしれない。というか、きっとそうだな。クーロだし。
こうして、俺たちと彼女は別れた。
これが俺とクーロ、そして彼女との出会いのきっかけだった。
そう言えば俺、名前すら聞かれて…
いや、忘れよう。忘れるんだよ。その方が…
というか、そうじゃないと…
そして再びいつものゴブリンのいる森の中に再び潜った、俺とクーロの今日の戦果はいくらと言うと…
「6000ユーリです。」
6000…
「内訳聞いてもいいですか…?」
俺は目の前にいるリリスさんにそう尋ねた。いやさ、細かい。すごく細かすぎるんだよ。
今俺たちは、常時クエストを終えて冒険者ギルドへと帰ってきていて、そしてリリスさんに討伐の証を出して、報酬をもらっているところだ。
「内訳ですね、ゴブリン三体で4500ユーリ、アルミラージの角が二つで1500ユーリですね。」
うさぴょん…
アルミラージって言うのか。うさぴょんの方が可愛いのに…
で、角一つが750…
なんでそんなに刻むんだよ。いいじゃん、1000ユーリで。なんか、せせこまし過ぎるわ。
はぁ…
「そうなんですね。ありがとうございます。」
「いえいえ、いいんですよ。」
リリスさんがきれいな笑顔を向けてくれた。すごく可愛い。これ、営業スマイルなんかじゃないよね。きっと、俺への気持ちを…
ん?
さっきまできれいな笑顔だったのに、なぜか笑顔に不気味さが漂い始めた。そしてその笑顔をクーロに向けて…
「で、クーロさん…」
「はいっ!」
リリスさんのきれいな声で、クーロがピシャッと良い姿勢になった。
「私が言いたいこと、分かりますか?」
「分からない、です…」
クーロの言葉は段々と小さくなっていた。
「そうですか。ならしょうがないので…」
リリスさんのこの言葉に、クーロは何を勘違いしたのか明るい顔になった。だけどその明るい顔をどん底へと突き落とすように、リリスさんは…
「クーロさん、前も言いましたよね?草原エリアではコントロールできもしないのに火魔法を使うなって。他の冒険者から聞きましたよ?クーロさんが”また”草原を燃やしてったってっ!」
また…
クーロお前、”また”なのか…
じゃー、俺への説明は体験談だったのか…
あんな力説していたのに…
いや、だから力説できたのか。
リリスさんに怒られているクーロの顔は、どんどん悲しそうな顔になっていく。だけどリリスさんは、そんなの気にしていないみたいだ。
「前、どんだけ燃やしたのか忘れたんですか?半径30メートルですよ?その間、どんだけの人が生活に苦しんだことか。ちゃんと反省しているんですか?」
「はい、しています…」
クーロは泣き出しそうな声だった。
というか、半径…
それ…
「それでですね…」
リリスさんのお説教は長いこと続いた。そう、15分くらい…
なんというか、段々とクーロが可哀相だった。ただ、やらかしているのはクーロだ。そして、クーロはまだ色々とやらかしているらしい。それを俺は今から知ることになるみたいだ。
これといった理由は思い浮かばない。だけど、そんな予感がしたからだ。だって…
ギルドの端の方のテーブルに座っている俺とクーロ。その俺たちに…
「今、いいか?」
昨日、俺たちに話しかけてきた三人組の冒険者…
その中の一人である、男が話しかけてきたのだから。




