起きた先で…
ッ!!!
カンカンとした日差し…
そのまばゆい日差しが、俺の瞼の裏までも照らしていた。
俺はその光に照らされて、ゆっくりと目を覚ます。
そして目を開いて初めて見たものは、太陽だった。
太陽が倒れている俺を、真上から照らしている。
どうやら、今は昼頃らしい…
そして何故か、照らしてくる太陽が何かで遮られた。
そしたら、まぶしさで眩んでいた目が次第に回復してくる。
そのおかげで、周りの状況が理解できた。
まばゆい太陽と俺…
そのの間に、なんか変な生物がいた。
緑色でスキンヘッド。
そして、ヘンテコな顔…
俺のいた世界には、どう見ても実在していなかった生物だ。
「こんにちわ~。」
一応…
俺は言葉が通じるか、試しで声をかけてみた。
さぁ、なんて返ってくるかなぁ。
楽しみだなぁ。
そして、俺の期待通り言葉が返ってきた。
「ぐぎゃぁぁぁぁ!!!」
ごめん、声じゃなくて音だったわ。
叫び声的なやつ…
その声とともにモンスター…
いや隠す必要もないだろう…
ゴブリンが俺へと腕を振り下ろしてきた。
ッ!!!
俺はとっさに横へと転がった。
さすが身体能力Aの身体だ。
こんな一瞬の隙間しかなかったのに、容易に躱すことができた。
そして俺は、立ち上がってゴブリンを見る。
奴は子供かと疑ってしまいそうなほどの身長だった。
腕も足も、短くて細い…
さっき俺がいたところは、奴の攻撃で別にえぐれた様子もない。
差はあれど、きっと俺たち人と同じくらいの筋力なんだろう。
まっ、だからといって怖くないわけはない。
変な形相の生物…
ぞわーっと…
それを見るだけで身体がすくみあがる。
正直しょうがないことだろう。
立ち上がった俺は、自分の服を探る。
何か武器になるものを探すためだ。
服についているポケットを隅から全部だ。
そして、色々と分かった。
あいつら…
俺の財布もスマホも全部奪いやがったなっ!
くそがっ!!!
マジあいつら許さねぇ。
俺は、俺をこの世界に呼び出した奴らを恨むことに決めた。
武器…?
そんなものあるわけねぇだろっ!!!
くぅ…
そして…
目の前にいるゴブリンは俺の様子を伺っているのか、俺の方へ向かってこない。
だから俺は、寝起きの頭で考える。
取れる選択肢をだ。
一つ目、逃げる。
二つ目、逃げる。
三つ目、逃げる…
うん、一択しかなったわ。
で、どっちに逃げようか…
正面にはゴブリン…
右は、奥まで続く木の地平線…
反対側も…
そして当然、後ろも…
はは…
うん、決めたわ。
というか、簡単だったわ。
だってこれすら、選択肢という選択肢じゃなかったから…
ゴブリンとは反対側。
それしかないよね。
だって何一つ、ヒントになるものがないだもん。
いやあったわ。
ゴブリンが…
クソかな…?
はー、もう運だな。
これ…
俺はゴブリンを見つめる。
どうやら、未だに奴は仕掛けてくる様子がない。
だから俺は呼吸を整える。
走り出すための、自分の中の最善のタイミングを見つけるために…
すーはー…
すーはー…
すー…
うし…
俺は初めの一歩を踏み出して…
そして…
駆け出した。
さっき言った通り、ゴブリンとは反対側をかけていく。
走っていく先…
さっきまであった光が…
全くと言っていいほどなくなってしまった。
あるのは…
薄暗い森…
甚だしくい木々…
分厚い茂み…
それだけだった。
ここまでで十分わかるが…
どうやら、俺は森の中に捨てられたらしい…
ほんと、ご丁寧なことになっ。
俺は、そんな木と木の間をすり抜けていく。
抜いては正面…
抜いては正面に…
ずっと変わらない景色だけが、俺の視界に映し出されている。
そして、木が俺の進むのを邪魔してくる。
なかなかに、速さが出ない。
そして、どこまで続くのだろうか…
俺の視界の先…
進めど、進めど…
全くと言って…
光も道も、何も見つけ出せない…
ゴールの見えない…
ゴールが存在するかどうか分からない道…
そんな道を走らされるのは…
追われるのは、かなり心労に来た。
疲れたし、しんどい…
度々、俺は後ろを振り向く。
すると奴は、木が邪魔で速度が出てないはずの俺に付いてこれていない。
奴も、同じらしい。
このままだなら逃げ切れる。
俺はそう確信して…
もう後ろを振り向くことなく、可能な限り全速力で前へと進む。
前へ…
前へと…
木が一本、二本…
もう数え切れない量の気を越えていく。
そして、10分くらい走っただろうか。
奴は、後ろにいなかった…
ハァハァ…
呼吸が乱れる。
なかなかにきつい…
俺は膝をに手をついて、頑張って息を整える。
でも、整わない…
限界だった…
だから俺は…
自分の弱い心に甘えて、木に背を預けて座り込んだ。
そして、何度も息を出し入れする。
手に力が入らなかった…
だから俺は、手から力を抜いた。
すると、自然と手が地面へと落ちていく。
息だけじゃなくて、四肢までもが限界だったらしい…
でも、それが功を奏したらしい。
手に、地面とは違う固い何かが当たった感触があった。
俺はすぐさまそれを確認する。
すると…
そこには短剣があった。
ぶ、武器っ!!?
ふぁぁぁぁぁぁっつ!!!!!
神様ありがとぉぉぉぉぉぉおおお!!!!
俺は初めて神様に感謝を伝えたかもしれない。
いやほんと…
持つべきものは神様だね。
一生崇拝させていただきます。
きっとだけど…
俺はその武器を確認する。
刃にひびはない。
しかも、刃の面に”魔法剣”と書いてあった。
「はははははは…」
笑いが止まらない。
ご都合主義?そんなの知るかっ!!
こんなわけの分からない世界に、訳の分からない場所に、しかも持ち物まで剝ぎ取られたんだぞっ!
これくらいのご都合主義くらい良いだろっ!
俺はニマニマと剣を見つめる。
短く…
そして装飾がない。
でもそれが味がある。
俺の物語が始まった…
そんな予感がした…
!!!
俺が剣を見つめていると、俺が来た方とは別の方から草木の物音が聞こえてきた。
俺はそっちへと振り向く。
するとそこには奴がいた。
どうやら、決着をつけないといけないらしい。
こうして、俺と奴は再び相対するのであった。