うさぴょん…
クーロが魔法で吹っ飛ばした白い影…
その白い影は俺の足元へと飛んできていた。
白い小さいうさぎ。もしかしたら、俺のひざ下よりも、ある一点を省けば小さいかもしれない。ある一点…
そう、長く伸びた角だ。黄色、いや金色か?そんな感じの色の角が長く伸びている。
そして、その角の持ち主である小さいうさぎは、今はピクピクとしている。どうやら、気を失っているようだ。さて、問題はというと、こいつをどうするかだ。
いや、分かっているんだ。こいつは魔物。そう魔物なんだ。だけどさ、鬱陶しいことに見た目がさ、とってもとってもとっても可愛らしいんだよ。こんなに可愛いのを殺す…
はは…
それ、どんな拷問なんだよ。
俺は短剣をうさぎへと向ける。だけど切っ先が別のところへと向かおうとする。おかしい。本当におかしい。この短剣にそんな機能なんてあるはずが…
「君、早くそいつ殺ってよっ!」
「へっ?」
クーロから信じられない言葉が飛んできた。こいつを殺す…?俺が…?こんな愛くるしい生物を…?はは…
そんなの無理に…
決まっているはずなのに…
クーロの一声が俺の意志を速攻で折り曲げた。
「早くやらないと、そしつまた目を覚まして襲ってくるよ?それに、報酬だって…」
報酬…
報酬か…
俺はピクピクと未だに痙攣しているうさぎを見つめる。報酬…、お金…
うぅ…
報酬、お金、報酬、お金、お金、お金、お金、お金、お金、お金…
そして気づくと…
いつのまにか、俺の短剣にうさぎが刺さっていた…
あ~、ごめんよ。うさぴょん…
でも、今の俺にはお金が必要なんだよ。しょうがなかったんだ。
俺は心に深い傷を負ったまま、クーロの元へとたどり着いた。するとそこでは、不思議なことが起こっていた。
そこにいるのは当然、クーロと俺たちがなんとか助けることができた女性だ。女性が座り込んでいて、クーロが手を差し伸べているとこなんだけど…
まずは女性、少女?の見た目から…
灰色の髪、きっと脱色したのではなく、元々その色なのだろう。髪先まできれいに艶がある。そしてその髪先はと言うと、肩にまでいかないくらいの長さだ。そんな髪の長さが後ろ、それとサイド…
前髪の端の方の髪の毛であっているのだろうか、その伸びた髪をサイドへとまとめて流すことで、結果的にもみあげの部分を隠すような髪型になっている。そして、耳の後ろへと流れている髪の毛の一部分は、片側だけ編み込みがされている。そこだけで、アシンメトリーみたいにになっている。
そして、顔は…
小顔のせいなんだろうか、少し丸っこい顔をしている。鼻は別に高くも低くもなく、可愛らしい顔をしている。年は、俺と近いのかもしれない。幼い顔で、その幼い顔が可愛らしい顔に拍車をかけているようにも見える。そしてそんな彼女が今どんな表情をしているかといえば…
いえば…
頬を赤らめて、少しすわった目をしている。簡単に言うとそうだな…
トロンとした目でいいだろうか。そんな感じの目だ。そんな目が向けている先はもちろん俺…
ではなく、俺の相方…
そう、クーロに対してだ。クーロに対して、慕情の表情を向けている。
羨ましい…、間違えた。羨ましい…
あんなかわいい子に、あんだけ熱のある視線を向けてもらえるとか…
クーロ、頼むからそこ変わってくれよ。頼むからっ!!!
あーっ、なんで俺じゃなくて、クーロなんだよ。俺じゃなくてっ!!!
くぅー…
俺のこんな儚い気持ちなんて知らない二人は、勝手に会話を進めていく。切り出したのは、灰色の髪の子だ…
「お名前はなんとおっしゃるのですか?」
可愛い声だった…
その彼女の声に対してクーロは…
「クーロだけど…」
「クーロ様とおっしゃるのですね?あ~、なんて素敵なお名前…」
「「様…」」
俺とクーロの呟きが聞こえていたのか分からない彼女は今も、クーロに色濃い目を向けている。
「ほんと、すてき…」
変わって欲しかった…
今すぐにでも…
どうして、俺じゃないんだ…
「あはははは…」
クーロは気まずそうに笑っているだけだった。なら、変わってくれたらいいのに…
そしてそんなとき、ガサガサと草木の揺れる音がした。
「「!!!」」
俺とクーロは音がした方、背後へと振り返る。そこには、うさぴょんがいた…
あっ、かわ…
「【ファイアーボール】」
クーロが間髪入れずに、魔法を打ち込んだ。当然、燃えて死に絶えるうさぴょん…
「あっ…」「すてき…」
気づくと、俺の口から儚げな声…
それと、俺とは違う人からそんな声が聞こえた、気がした。
さて皆さんは、今ここがどこだったか覚えているだろうか。そう…
草原だ。
そして、今も燃えているうさぴょんは当然草の中…
ということはだ…
パチパチッ…
ボッ…
「「あっ…」」
こうして、俺とクーロの苦しい生活は続いていく…
たまにはこんな感じで




