逃げた先で…
ゴブリン3匹から必死に逃げてきた俺たち、というか最後はただの物音…
いや、止めておこう。まるで俺たちがクソザコにしか思えなくなってしまいそうだ。いやでも実際…
まぁ、そんな俺たちは今、森の外で木に背中を預けてぼんやりと視線の先を眺めている。だいぶ走ったから、ちょっとした骨休めだ。
「なぁクーロ、俺たちってさぁ…」
俺のこの言葉に、額に汗びっしょのクーロがこっちを振り向いてきた。
汗で金色の髪が顔に鬱陶しそうにくっついている。だけどそれ以上に、クーロの肌を汗がキラキラと反射させて、いつもよりも数段、クーロの顔がきれいに見える。
中身と胸…
こっちも中身か…
双方の中身があれば、ほんと好みなのになぁ…
はぁ…
ギロッ…
「何!」
クーロが強い視線と言葉を向けてきた。
う…
なんで、こうすぐに分かるのだろうか。ほんと鋭い。こういう時だけは…
「いや…」
クーロの視線で、何を言おうとしたか抜けてしまった。えっと、たしか…
あっ!
「俺たちってさ、ちょっと弱すぎないか…?」
そう、これだ。だって。ゴブリン3匹に必死に逃げる冒険者…
何それって、感じだろ。ほんとに…
そしてクーロからも…
「そうだね…」
当然のように、肯定の言葉が出てきた。ただ、それ以外の言葉が出てこなかった。
「俺たち、どう成長すればいいんだろうな。」
気づくと、この言葉が口から出ていた。きっと気まずくなる言葉。だけど必要な言葉でもある。だから、出てしまったこの言葉を取り消すのも違う。俺はやってしまった感を持ちながらも、クーロからの言葉を待つ。
「……………」
だけど、クーロはなんも返してくれなかった。
だから少しの間、気まずい時間が過ぎる。そしてその時間を嫌うかのように、クーロが立ち上がった。
「あ~~、あっついっ!」
そう言って、クーロは羽織っていた赤いローブを脱いだ。
さて、ここで今の俺たちの状態のおさらいだ。今俺とクーロはゴブリンから逃げるために、森の中を必死に走ってきた。そしてそのせいで、クーロの顔は汗びっしょ…
ということはだ、当然クーロの体も…
白いYシャツモドキの服、その服が汗で透けることで、クーロの煽情的な、煽情的な…
「クーロって、ブラしてたんだ…」
いや、服が透けることでクーロの下着がうっすら見えてるんだよ。でもさ、クーロって絶壁…
だから普通思うじゃん?絶壁って、ブラ付けるんだ~って…
みんなも思うだろ?だからこれは当然の疑問で、だからさぁ…
「クーロごめん。悪気はなかったんだ。」
俺はすぐさま、俺をじとーっと睨んできているクーロに謝罪を申し上げた。
「悪気…?へー、さっきの言葉に悪気はなかったんだ。へ~、そうなんだ…」
う…
「いや、ただ口から自然と出てきてしまっただけで…」
俺は選ぶ言葉を間違えてしまったのかもしれない。
「自然と…。あ~、自然となんだ。つまりあれだよね?さっきの言葉は、君の素直な感想ってことだよね?」
「いや…」
もう、こんな言葉しか出てこない。
「あー、私がブラをつけてるの、そんなに不思議…?」
「いや、そんなことは…」
ただ、付けることに何の意味があるんだろうとは思っているけど…
俺は心の中でそう思った、はずだった。
「君、口に出てるよ…?」
口に…?
「何が…?」
「何の…、私がブラをつけるのに何の意味があるんだろうって言うのが…」
へ…?
「出てた…?いや、気のせいじゃ…」
俺は一寸の希望を込めた。だけど、クーロはきれいな笑顔で首を振ってきた。
はは…
「もしかして俺、もうダメ?」
俺は尋ねてみた。するとやっぱり、クーロからの答えは決まっていた。
そう、きれいな笑顔で頷く、ただそれだけだった。
「クーロごめ…」
「問答無用だよっ!」
こうして俺は、いや俺たちは野外プレイを楽しんだ。
楽しかったかって…?
楽しいわけあるかっ!!!
相棒…
ほんと痛かったよな、分かるよ。だって、俺もだから…




