初クエストを終えて…
俺とクーロは今、冒険者ギルドの端の方にいる。ギルド内には、食堂が内設されているらしい。だから、俺たちはそこでご飯を…、いや、まずは話し合いするべきだと思う。だってさ、2250円って…
この先の絶望を感じている俺と、なんだかウキウキしているクーロ。正直、なんでクーロがこんなに楽しそうなのかが理解できない。
「なぁ、クーロ?」
「どうしたの?」
何から話そう…
でもまずは…
「なんでそんなに楽し気なんだ?」
「私、そんなに楽しそうだったーっ?」
どう見ても、クーロの表情は笑顔だった。
「そう見えたけど…」
「そっかー。そうだよね。実は私ね、冒険者になってから今日初めてお金もらったんだよっ!」
今日初めて…
初めて…
「えっ?はっ!?」
「前いたパーティーではね、色々とあってお金どころ…、いやこれは止めとこうかな。」
「えっ?」
んっ!?
なんか今、やばい言葉が…
「一人でクエスト受けたのも、この前君を助けた時が初めてだったんだよ。で、その時は君を助けるのに必死で、ゴブリンの耳を取るどころじゃなかったんだよ。だから、今回が初めてだったんだよ。」
誤魔化してきたんだけど…
というかさ、コメントしづら…
助けてもらった時の話出すとかずるくない?俺もうさ、すっこぐしゃべりにくいんだけど。申し訳なさ過ぎて、聞きたいこと、何も聞けないんだけど…
「そうだったんだな。あの時はありがとな…」
これしか、出てこねぇよ。
はは…
「どういたしまして。」
クーロはきれいな笑顔だった。
はは…
でも、お金の話はしないといけない。しないと、不安過ぎる。というか、死ねる…
「クーロ、一日2250ユーリじゃー、さすがに厳しいよな?」
細けーな…
「んー…」
クーロはそう口にして、頬に人差し指を当てる。絵にはなる。だけど、それどころじゃない。将来の不安が強すぎる。
俺の不安を少し焦らしてから、クーロは返事を返してくれた。
「でも、私の貯金があるよ?」
ん!?んーーっ!?
なんか、一気に違う不安が襲ってきた気が…
なんかこう、人をダメにしてきそうな、そんな不安が…
「それでも、2250ユーリは…」
「それもそうかもね…」
なんだろう…
なんでこんなに、俺とクーロで温度差があるんだろう…
いや、貯金の差か…
それはそうだよな。ほぼ一文無しの俺と比べたらいけないよな。でも俺は、絶対にそれをあてにしてはいけない。し始めたらきっと、俺はダメになる。それは、それだけは分かる。
働かずに、その辺の道端で…
いや、止めておこう。想像できる未来がちょっと暗すぎる…
「クーロはいつから冒険者になったんだ?」
「最近だよ?ほんと最近。まだ、1ヶ月も経ってないんじゃないかなぁ…」
なるほど…
「だから、魔法の射程が短いんだな。なるほどなっ!」
「いやそれは私が不…、そうだよっ!まだ始めたばかりだから、どうしても難しいんだよっ!」
「お、おう…」
クーロが何か違うことを言おうとしてたような…
それに、誤魔化すようにすごく焦って…
「君はどうだったの?初のクエストはっ!」
俺が思考している時間を邪魔するかのごとく、クーロが話しかけてきた。まぁでも、気のせい、だよな…
きっと…
で、どう、か…
結局、今のとこ、魔法剣は使い物になってないし、魔法剣からの斬撃が効いた理由は分からないし、ゴブリンですら怖し、クーロは絶妙に役に立たないし、お金は安いし…
あれっ!?
苦しいことの方が多かったような気が…
生きるのが苦しそうな感想ばかりが頭に浮かんでくる。そんなとき、クーロの顔が視界に入った。何か焦ってるような顔が…
ほんと、コロコロと忙しい人だよな。顔はきれいなのに色々と残念な。貧、絶乳だし…
まぁでも、結果としては、なんとかゴブリンも倒せたことだし、お金も少ないながらも手に入ってたし、こっから先なんとかやってはいけそうかな。うん。
「ぼちぼちかな。」
「そっか、そうだよね」
こうして、俺の、いや俺たちが会ってからの二日目が終わりを迎えた。




