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鑑定…

 光輝いた世界…

 その後に見えた景色は… 


 白…

 まるで銀白を基調としたような、

 奥にも縦にも、広々と広がった部屋だった…


 ここは一体…


 急なことに、俺は訳も分からず辺りを見回たす。


 すると何人もの人がいた。

 俺を…

 いや俺たちを、左右から挟むようにきれいに一列ずつ並んで…

 

 そしてその列が導く先には、階段のような段差があり…

 そこを駆け上がった先にある、たった一つだけ置いてある仰々しい椅子…

 その椅子に座っていた、艶やかな服と王冠を身に纏った…

 丸いおっさんが立ち上がった。

 そして…


 「ようこそダメンズ王国に。儂はダメンズ王国国王、ヨワール・ダメンズじゃ。よく遠路はるばる、我が国を救うためにおいでなさった、勇者の皆様方!!!」


 自称王様が、俺たちへとそう名乗りを上げた。


 ん-、と…

 なんというかまず名前なんだけどさ…

 大丈夫…?

 それで。

 

 王様…

 もしかしてさ…

 名前つけてもらった人に、嫌われたりとかしてない…?

 と言うか、絶対…


 いやまぁ、あんな堂々と名乗ってるし、きっと気のせいだよな…

 きっと…


 てか、あとさ…

 もしかして今、勇者って言った!?

 自称王様の名前があれすぎてちょっと印象薄かったけど、言ったよね…?

 今、勇者って…

 

 で、勇者って言うとあの勇者だよね。

 世界を救う的な…

 もしかして、俺がその…


 なんというか…

 心の中で、ワクワク感が凄かった。


 ただ、さっき名乗りをあげた自称王様は、なかなか次の言葉を続けてこない。

 そして何か喋ってくる様子もなくて、じーっと俺たちの方を眺めているだけだった。


 そしてそんな誰もしゃべらない、静かな時間…

 一緒にここへと連れてこられていた二人組の女の子…

 そのうちの髪型がボブの方の女の子が、心に抱いていた疑問を口にした。 


 「あ、あなたたちは誰…?そしてここはどこなの…?ねぇ、私たちをどうするつもりなの!!」


 不安な気持ちの曝露…

 そしてその気持ちを段々と叱責に変えていった…


 そんな辛くて悲しい叫び…

 それを、王様は飄々と返す。


 「さっきも言ったが、ここはダメンズ王国。そして儂はヨワールじゃ。主らにはこの世界を救ってもらうため、厳密に言えば憎き魔王を殺してもらうために、別の世界から召喚させてもらったんじゃ。」

 「別の世界…」


 ボブのからそんな声が漏れる。

 そして、もう片方のポニーテールの女の子も呟きで追従する。


 「ここは夢…、そう夢なの…。だからきっと、ほんとは私、家で寝ているのよ。きっと…、きっとそう違いないの…。」


 言葉を続ければ続けるほど、悲痛の声が強くなっていた。

 

 きっと…

 ここが現実であると、ほんとは分かっているような…


 でも、気持ちは分かる。

 こんなわけの分からないとこに連れてこられて、世界を救え?

 意味が分からない。

 何言ってんだ、って感じだ…


 懐疑的で…

 不安な俺たち…

 

 そんな俺たちの言葉に、自称王様は答える。


 「すまないが、ここは現実。夢ではないのじゃ。そして、お主らを元の世界に返す方法はない。申し訳ないが、分かってほしいのじゃ。」

 「はは…、現実?ここが…?そんなわけ…。」

 「いや、いやぁぁぁぁっぁぁああ!!!」


 ボブはまだ国王の言葉を疑い、ポニーテールは泣き叫ぶ。

 なかなかにカオスだ。

 無理もない。


 そして、そんな時間が少しの間続いた…


 


 「どうじゃ?少しは落ち着いたか?」


 国王からそんな言葉が聞こえてくる。

 少し他人事のように感じれる。

 いや、実際に他人事なのだろう。

 王様にとっては、俺たちの気持ちなんて理解できないし。

 それに、理解するつもりがあるのかもわからない。


 ただ、時間というものはやっぱりある程度のことは解決してくれるらしい。


 二人とも、さっきまでの状況が嘘のように落ち着いている。

 とはいっても、当然精神的な疲労は見て取れるけど…


 「ちょっとは…」


 ボブがそう返す。


 「ふむ。なら、急で申し訳ないんじゃが、予定を進めさせてもらおう。すまんがあれを…」


 国王がそう言って、すぐそばにいた配下に指示を飛ばした。


 「あれ、ですか…?」


 ボブが尋ねる。


 「あぁ、あれじゃ。鑑定装置じゃ。今からお主たちの能力を測定させてもらうのじゃ。」

 「測定、ですか…?」

 「そうじゃ。こっちの世界にはスキルというものが存在する。そして、別の世界から来たものは、その能力が極めて高いことが多いんじゃ。だから、元いた世界から呼ばせてもらったんじゃ。」

 「そうなんですね…」


 国王の言葉に、ボブが儚げにそう答えた。

 そんな理由で、私たちはこんなところに連れてこられたんだ…

 っていうのが、伝わってくる。




 そして割とすぐに、王様の部下が指示されたであろうものを持ってきた。

 丸くて金色の水晶みたいなものが…

 きっとあれが、鑑定装置なんだろう。


 そしてそれを王様の側近が受け取ると、王様が俺たちへと視線を向けてきた。

 

 「ふむ…。ではそこの男のお主、まずはお主からじゃ。そばへ来い。」


 俺かららしい…

 はぁ…

 最初って嫌だなぁ。

 どんなのか分かんないし…


 でも、そんな俺不安な気持ちを汲んでくれる雰囲気でもない…

 嫌だけど、諦めるしかないみたいだ。

 だから俺は、国王の元へと向かう。

 

 何人もの、王様の配下の注目が俺を見つめる。

 居心地が悪くて、生きた心地がしなかった…

 

 そして、国王の目の前までたどり着く。

 そしたら側近が、水晶を俺の目の前に差し出してきた。


 「どうすればいいのですか?」

 「手をかざしてください。」


 側近の言葉のまま、俺は手をかざした。

 すると…


 水晶から、視界いっぱい…

 まばゆい光が、四方いっぱいを光で照らした…


 「おお~、すごい光じゃ!!!!」


 国王から良い感触の言葉が漏れ出す。


 えっ、何!?

 もしかして、すごいの…?

 これ…

 なんか期待していい感じなのっ!?


 俺と国王の期待に応えるように、側近が結果をしゃべり出す。


 「身体能力A…」

 「ほう!」

 「「「「「おおーーーー」」」」」


 国王と周りの変な人たちから明るい声が漏れる。


 ふーん…

 ふ~~~~ん!!!!


 「魔力S…」

 「すごいのじゃ!!!!!」

 「「「「「おおお~~~~~~~~~~~っつつ!!!!」」」」


 この反応…

 これはどう見ても… 

 どう見ても…

 これは期待できるのか?

 できるよなーーっ!!


 やばい、期待で鼻が伸びる。

 いやぁ、もしかして?

 もしかしてぇぇぇぇ!!!?


 そして、側近がまた読み上げる。


 「スキルなしっ!」

 「「ん?」」

 「「「「「へっ…?」」」」」


 スキルなし?

 今、スキルなしって言った…?

 えっ!?

 あっ…

 えっ!!?


 まだ、側近が水晶を覗いている。

 まだ続きがあるみたいだ。


 きっとここから、どんでん返しが…

 あるよね…?


 俺のそんな儚い期待に、側近が答える。


 「習得可能な魔法、なし…。えっ!?」

 「「「「「「「………」」」」」」」


 国王は何も言わない。

 そして、部下も…

 俺ですら、言葉が出てこない…


 はは…

 

 あっれー、おかしいな。

 スキルもなくて、魔法を憶えれない…

 なのに、魔力はS……

 ははは、不思議なことがあるもんだ。

 その魔力Sっていう魔力、いったい何に使うんだろうね。

 俺、すっごく気になるーーーーっ。


 さっきからダンマリの国王の顔を頑張って覗いてみると、うっすらとした嫌な笑みを浮かべてきた。


 ははは…

 これやばいやつ…?

 てか、絶対やばいよねーっ!


 そして、国王が歪んだ笑みのまま口を開いた。


 「追放っ!!!」


 あはは…


 神様、俺何かしました…?

 してないと思うんですけどね…


 こうして、王の玉座でのひと間が終わりを迎えた。


 この後、俺はどうしたのかって…?

 

 それがね…

 記憶にないんだよ。

 全く…


 でも、お腹の痛みが走ったのは憶えてるんだけどね…

 

 くそっ!!

 お前ら、覚えとけよ!!!!

次も、なるべくすぐに…

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