二人で…
ゴブリンの耳はなんとか剥ぎ取れた。ガサッっていう音ともに。お金になるのか、すごく不安だった。
そしてそんな俺たちは、二匹目のゴブリンを探している。正直ちょっと疲れたけど、クーロ的にはもう少し狩りたいみたいだ。ということで、散策だ。
そして俺はゴブリンを探す間に、クーロに色々と聞くことにした。今更だけど…
「火魔法以外で、ゴブリン倒せたりしないのか?あんなに焦げてたら、お金もらえるか不安だし…」
「それが倒せないんだよねぇ。はは…」
クーロが気まずそうに笑ってくる。
「そ、そうなのか。さっき言ってた風魔法はどうなんだ?」
「えっとね…」
クーロが気まずそうに頬を掻きだした。
これは…
俺はじっとクーロの言葉を待つ。そして…
「相手を吹っ飛ばすことしかできないんだ。だから、誰かが止めを刺さないといけないんだよね。」
止め…
クーロはさっきのゴブリンが焼けてた時、確か口を手で押さえてたもんな。でも、一応聞くだけ聞くか…
「クーロは…」
「私、血、無理なの…」
はっ?
「なんで冒険者やってんだ、それでっ!!」
血見れないって、致命傷過ぎるだろ。どうすんだよ、この先…
俺の言葉にクーロがカっと強い視線を向けてきた。そして…
「他にやれることがなかったんだからしょうがないじゃんっ!!!」
怒鳴られた。
「すみません…」
「いや、こっちこそ…」
二人とも互いに視線を外した。ちょっと気まずい時間が進む。だけど、クーロがすぐにそんな均衡を破ってきた。
「君が止めを刺してくれない?だって君…」
クーロは急にそこで黙った。
「おいっ。君、なんだよ。今何言おうとしたっ!!!」
俺の言葉にクーロは一度だけ視線を外した。だけどすぐに…
「だって君、役立たずじゃん…」
「ガハッ!!!」
心が痛かった。だって、本当のことだから。さっきの戦闘だって、ゴブリンの攻撃を躱しただけで、俺、確かに何もしてないし。
でもさ、しょうがないじゃん。俺の手にあるのは、この短い短剣だけなんだから。これで、どうしろと…
うぅ…
そんな傷ついた俺に、クーロが優しく声をかけてくれた。
「ごめん。ちょっとだけ言い過ぎたよ。」
ちょっとだけ…
優しいのは声だけだったよ。
うぅ…
そして、クーロの言葉はまだ続く。
「でもさ、まじめに君が止め刺してくれない?その短剣もあることだし…」
短剣…
俺はクーロに言われて、短剣を見つめる。長さ、20センチくらいの…
どう見ても短い…
これで止め?それはなんというか、すごく手に感触が…
やりたくない…
だけど、他に俺がやれることもない…
つまり…
「はい、わかりました…」
きっと俺には、こういうしか選択肢はなかったんだ。捨てられないためには…
なんでこの世界って、こんなにハードなんだろう…
もっと、優しくてもよかっただろ。俺に…
俺の悲しさなんてつゆ知らず、クーロのにこやかとした言葉が聞こえてきた。
「ということでよろしくーっ!」
すごく、嬉しそうだった。
きっと、やりたくないことを自分がやらなくていいからに違いない。
羨ましい…
ということで、俺たちは真剣に散策を再開した。
約10分後、また俺たちはゴブリンを見つけた。運が良いのか悪いのか…
そして、当のゴブリンは木に背中を預けて座っていた。さっきと同様、どう見てもねらい目だ。
俺とクーロは二人して、移動を始める。座っているゴブリンから右側の木陰へと…
作戦はこうだ。
クーロが魔法で、違う木に向かってゴブリンを吹っ飛ばす。その衝撃で怯んでいる間に、俺がゴブリンへと止めを。そしてダメそうならすぐに撤退だ。だって、俺たちは弱いんだからっ!
そして、ようやく予定していた木陰に辿り着いた。
「いける?」
クーロから確認の声が飛んでくる。
ふー…
俺は短剣を握りしめる。
「もちろん。」
俺の言葉にクーロは小さく頷く。そして…
「いくよ。『ウインドボール』」
そう呟いた。すると…
クーロの目の前に風が塊になるように、周りから集まる。そして、それが収束していく。ガサガサと、草木の音を立てる。それによって、ゴブリンがこっちへと視線を向けてきたが、遅かったみたいだ。なぜなら…
クーロがすぐに風の玉を発射したから。
発射された魔法は、グングンと伸びながらゴブリンへと向かう。結構良いスピードが出てそうだ。そして…
「ぐぎゃぁぁぁっ!」
ゴブリンに当たったみたいだ。
ゴブリンが一瞬、耐えるために踏ん張った。だけどすぐに、魔法の勢いに押されて後ろの木へと飛んでいった。そして木へとぶつかって、口から息を吐いた。
俺はすぐに、その後を追う。目標の木まではだいたい10メートル。あいつが起きてこないために、なるべく急いで。
そして木へと到着すると、ゴブリンは木へとぶつかった衝撃で伸びていた。作戦通りだ。
でも、しんどいのはここから…
俺はしゃがんでゴブリンの首へと短剣を添える。
ふー…
そして、息を吐いた。
勇気が必要だったからだ。自分から利欲のために生物を殺す…
でも、そんなに時間はない。俺は吐いた息を再び肺へと戻した。そして、ゴブリンの首元へと集中する。そして短剣に力を入れた。
ヌプッ
そんな感触が手に届いた。
気持ち悪い。でも、しょうがない。やるしかないんだっ!
俺は手の感触を我慢して、短剣を進める。
途中で固い物にぶち当たる。だけど、気にしない。気にしてはいけない。
俺がゴブリンの首を切断し終えた後、目の前のゴブリンは遠い目をしていた。
はぁ…
心に何かが重くのしかかった気がする。
手や服の周りには血がついてる。それに感触も忘れられそうにない。
だけど、自分で魔物をやったという達成感はたしかに胸の中にあった。
俺はクーロの方へ振り返る。すると…
クーロは口を手で押さえて蹲っていた。
「うえ…」
ほんと、こいつは…




