クエストの前に…
クエスト登録を終えた俺たちが今何をしているかと言うと…
「どのクエストがいいんだ?」
「そ~だねぇ…」
二人でクエストボードににらめっこしている。そして、クーロ的には目ぼしいクエストが見当たらないみたいだ。
ふ~ん…
俺はテキトーにクエストを眺める。
アルミラージ、何それ。なんか強そう。
オーク…。名前はわかるけど…
分かんねぇ…
うん、クーロに任せよう。それが最善だ。そうに決まってる。
ということで、俺はクーロを信頼することにした。きっと彼女なら、俺がいても問題がない、いや、俺が死なないクエストを選んでくれるだろう。きっとそうだ。別に丸投げとかそう言うのではないんだからね。
そして、クーロの選別は終わったみたいだ。彼女はこっちへと振り向いた。そして…
「うん。常時クエストのゴブリン討伐にしよう。私たちには、ここに貼ってあるのは無理そうだからね。」
ゴブリン…
う…
なんか心が…
いや、落ち着け。それよりもだ。
「常時クエスト…?」
「あー、うん。そ、常時クエストだよ。魔物とかって、特に繁殖能力の高い奴らだね。そいつらって、定期的に殺さないと繁殖して数が馬鹿みたいに多くなるんだよ。だから、ギルドがそいつらを殺ってねっていうお願いを込めて、魔物の危険度よりも少しだけ割高にしてくれてるクエストだよ。」
「なるほどな。確かにゴブリンは繁殖力高そうだから、殲滅しとかないといけないよな。ゴブリンだけは本当に念入りに…」
自然と、使命感が湧いてきたよ。ゴブリンを殺すことだけはさぁ。
「う、うん。」
なんか、クーロが動揺してるけど…
まっ、気にしなくていっか。
「で、その常時クエストってどう受けるんだ?」
「受付に口頭で言うだけでいいし、言わなくてもいいらしいよ。そこは任せるらしい。」
「言わなくてもいい…?なんで?」
「聞いた話では、低ランクの冒険者の動向は、簡単に死なないように少し注意深く見るらしいんだよ。でも、たくさんの冒険者がその依頼のためだけに受付に行くと、受付がパンクしちゃうらしいんだよ。だから中級以上は、受けるときは来るなだって。」
「なるほど…。」
簡単に死なないようにってとこがちょっと気になるけど、まぁいっか。
「じゃー、俺たちは?」
「もちろん、行くよ。」
俺の問に対するクーロの声は早かった。
「お、おう。それって…」
「うん?」
俺が半端に言ってしまったばっかりに、クーロは俺の続きの言葉が気になったらしい。それはそうだ。
だけどなー、クーロに、もしかして冒険者ランク低い?って聞きにくいんだよなぁ。
いやさ、死活問題なんだけどさ。でも、助けてもらって、しかも色々教えてくれてる人に、あなた冒険者ランクいくつなの?って聞きにくいんだよなー。もし、低かったらさぁ。
いやまぁ、そんな気にすることでもないんかもしれないけど。
まぁでも、さすがに聞くべきかだよな。
「クーロってさ…」
「そこの君ーっ!!!」
女の声で大声がした方を振り向く。すると、すぐそこに男女3人がこっちを向いて立っていた。もう少しだけ言うと、その3人は女二人に男一人だった。
そして俺は、その3人と不思議なくらいに目がばっちりとあっていた。
一応、俺は自分を指差す。すると、3人組が一斉に頷いてきた。
なるほど…
「何か用?」
俺の言葉に中央の男が返事してくる。
「ああ。さっき受付の近くにいたからステータスの話聞いちまったんだけどよー、良かったら俺たちとパーティ組まないか?」
盗み聞きかー。勝手に聞くなよな。ったく…。
「もしかしなくても、勧誘か?」
「ああ。だってよー、身体能力がAで、魔力Sだろ?まじで、お前さんすげーよ。さすがに一度は勧誘するぜ。ダメ元でもな。」
中央の男は、ニコッと人の良さそうな笑顔を向けてきた。
あ〜、なんか心が痛い。
こんなに褒められてるのに。どうして、貶されてるようにしか聞こえないんだろ。ほんとなんでだろうな。
誰か俺に、魔法適性を下さい。今すぐに。
さて…
「そうか。ありがとうな。でも俺、もうこの人と組むことになってるから…」
命の恩人を見捨ててなんて行けねぇよな。
まぁ、実際は俺の能力でだけど…
「そっかー。まぁ、しゃーねーよな。でもお前さん、そいつって…」
「タケーロ、早く行くよっ!」
「えっ?」
男の話の途中で、まるで話を遮るようにクーロに俺は引っ張られて行った。
えっ、なんかすごく気になる話がでてきたんだけど。絶対碌な話じゃないんだけど。えっ、すげー怖いんだけど。
こうして、俺は無理やり受付へと連れて行かれた。
ということで、俺とクーロは再度リリスさんとお話してる。というか、諸々の話が終わって、今は余談だ。女二人の…。
「でも、良かったですね。クーロさん。ようやくパーティが出来て…」
ん?
「本当にそうだよ。これでひと安心できるよ。」
「一時はどうなることかと…」
ん?
「あはは、ご迷惑を掛けました。」
「大丈夫ですよ。」
なんか、すごく不穏な会話を女二人がしている。すごく、ほんとにすごく嫌な予感がするんだけど。
しかもそれ、絶対さっきの男の人の話と関係あるよね。ねぇっ!
ただ、何故か聞く暇がなかった。不思議なことに…。
やることをやり終えた俺たちは、ようやくクエストへと向かった。
そして、ちゃんと話を聞かなかった自分を、俺は後々恨むことになった。
10分ごと置き…
10分は設定の問題なんで許して…




