そっちか…
俺とクーロは今冒険者ギルドへと向かっている、らしい。らしいだよ。だって、俺知らないからさぁ。
で、だ。隣を歩いてるクーロは頬をぷくーと膨らませている。おかしい。あれだけ、俺と相棒をぼこぼこにしたのに、まだ不機嫌だなんて。
「クーロ、許してくれないか?」
俺の言葉にクーロはぷくーを解除した。そして、こっちをすごい速度で振り向いてくる。
「ねぇ君、今まで私のこと”さん”付けじゃなかった?気のせいだっけ?」
くっ。無駄に鋭い。
「き、気のせいじゃない?」
「いや、それならそれでいいんだけどね。なんか、すごく違和感がしてさ。」
「そっか。あはは…。」
言えるかっ!もうコイツにさん付けいっか、と思ったとか。
そんなひと間があったものの、俺たちは目的地へと歩いていく。すると…
「あっ!!!」
クーロがその美人の風貌からは想像できない可愛らしい声を上げた。
そしてクーロはタタタと小走りしていく。そして、彼女の行き先にはお店の前に小さい男の子がいた。
「どうしたの?僕…。」
少年に合わせるようにかがんだ彼女から、そんな言葉が聞こえてきた。もしかしたら、迷子なのかもしれない。
「今、ママとお買い物してるとこなの。ママは今お店の中で。」
少年はニコッと可愛らしい笑顔をだった。で、迷子ではないみたいだ。
なるほど…。
「なら、問題もなさそうだし、俺たちもギルドに…」
「可愛い。本当可愛い。」
突然クーロがそう口にした。
背丈はまだ低くて、5歳くらいに見える。女性にはクリティカルな年代なのかもしれない。それに見た目も、確かに可愛いらしいし。
「お姉ちゃんも可愛いよ。」
そして、きっとクーロの言葉のお返しに少年がそう言葉にする。
できた、良い子だな。
俺がそう思っていると、クーロから声が聞こえ来た。
「あ~~~~~、ほんと可愛い。柔らかい髪質に、ちょっとだらしなく伸びた長さ。すごく心揺さぶるね。髪だけじゃないね。ごめんね。クリッとした黒い瞳、黒という何ものも寄せ付けないはずの色。なのに君の瞳は、奥が見通せるくらいに、薄く光っている。きっと君の心の純粋さを表してるんだね。いや、もしかしたら、君が描く夢、未来という希望が君の瞳を照らしてるのかもしれない。すごく力強い瞳をしてるね。なのに、少し垂れてる君の目尻、そのせいで少し不安そうにしているのと思ってしまうよ。でもね、それは全く悪いことではないの。だってさっ、少し垂れてるおかげで、君の表情はより優しくよりゆったりとした印象を見る人全員が抱くと思うよ。そう思うと、すごくいいと思わない?それに…」
俺さ、てっきりカルネ君をただ狙ってる変態かと思ってたんだよ。でも、違ったんだな。コイツたぶん、男の子が好きなんだな。きっとさ…。
はは…
リアルで初めて見たよ。ショタコンって…。
俺が少し面食らっていると、目の前の化け物が奇声を発し始めた。
「あ~~~~~~~~~~~~っ!!!!!ほんとに可愛い。どうしてこんなに可愛いんだろ。もうさ、見るだけでこう、お腹の奥の方がギュィ~~~~~~~~~~~~~~ンと来るんだよ。ハァハァ。ほんと、どうしちゃったんだろ、私…。いや、それよりもこの子をもっとどうにかしてあげたいよ。いいかな、ほんといいかな。ねぇ僕?ちょっとだけ、ほんのちょっとだけさ、お姉さんとそこの陰に行かないっ?ほんと、何もしないからさっ!ほんとにっ!」
バカの奇声に、少年は不安そうな瞳になった。
だから…
「あ~~~~~っ、ほんとその瞳良いっ!!!!!!優しそうな垂れ目と不安とでもう一億倍くらい可愛い。やばい、本当にやばい。ハァハァ。このままじゃ私、本当に捕まっちゃう~~~っ!でも、もういっか。こんなの我慢してる方が身体に悪いもんねっ。もうさ…」
バシッ
「いった~~~~~っ!!!」
俺は彼女の頭をしばいた。
初めて、人を叩いた気がする。いやでもいっか。コイツだったら。
「~~~~っ!!!」
彼女が痛みに悶えてる。そして、その隙に、少年の親御さんが少年と一緒に逃げ去っていた。
「あ~~~~っ!何するんだよ~~っ!!?君のせいで…」
彼女から恨む視線が向かってきた。
「俺、君が追い出された理由が、ちゃんと分かった気がするよ。」
「どういうこと…?」
彼女は頭にハテナマークを浮かべていた。
「えっとさ…、いやいいや。めんどくさい…。」
「ねぇ、どういうことだよ~っ!」
言っても良かったよ。だけどさ、この年まで治らなかったんだから、もう無理だよ。
こうして、俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
はぁ、転生したい。




