幻影との戦い(ボス戦)
# 燕翔の双斧
幻影兄弟が同時に跳躍した。二人の体が鏡像のように同期し、空中で螺旋を描く。右腕を振り抜いた刹那、五つのフランキスカ(投げ斧)が光の尾を引きながら散開した。
「斧だ!盾を掲げよ」カルロス大尉が警告の叫びをあげる。
フランキスカは弧を描いて騎兵を取り囲む。最初の斧が地面に突き刺さると同時に爆発的な粉塵が噴き上がり、続いて四方から新たな斧が襲いかかる。
「盾を上げて密集陣を組め!」光雷卿の号令が飛ぶ。近衛兵たちが密集陣を形成した瞬間—
ガガガッ!
フランシスカは飛距離は20メートル、20メートルの円周上を狂ったように旋回する斧が鎧に衝突する。一人の兵士が側頭部に命中を受け崩れ落ちた。
「兄様!」弟のほうが左手で合図を送る。二人は完璧なユニゾンで位置を入れ替えながら投擲を続けた。
「こいつら……」カルロスが呻いた。「斧の軌道が読めん」
幻影の兄が右手で新規の斧を取り出し同時に弟は左手に斧を持って同時に投擲すると二人はお互い逆方向180度の位置に、そこに20メートルで落ちた斧を互いに拾い上げさらに斧を投擲。彼らの周回軌道は20メートルに収まり、20メートルの範囲内を蜂のように飛び回りながら斧を撒き散らす挟撃攻撃。
「これが『フ乱舞』だ!」幻影の兄が嗤う。
斧が地面を穿つたびに石片と泥が吹き上がり視界を塞いだ。光雷卿は愛馬を巧みに操りながら弟のほうへ接近したが—
「甘い!」
兄の斧が後ろの死角からの投擲の斧が馬の臀部を貫いた。馬が嘶いて暴れる隙を突いて前にいた弟の斧が光雷卿の盾に直撃。
「ぐっ……!」
衝撃で腕が痺れる。兄のフランキスカはさらに高度な技術が組み込まれていた。投げた斧の柄に結ばれた紐を手元に戻し再利用する「ロープ付きフランキスカ」だった。
「双子特有の投擲間隔……」カルロスが歯噛みする。「兄の攻撃中に弟が間合いを詰めてくる」
その通りだった。兄の猛攻を避けたと思えば弟が既に至近距離に移動し至近距離から斧を投げつけてくる。そして兄もまた背後から斧を投げてくる。完璧な挟撃。同時投擲で密集陣を少しづつ削っていく。
「囮と本命を交互に担っている!」光雷卿が叫んだ。「奴らは一人ずつ倒せない!」
兄が高々と跳躍し両手を広げた。左右にフランキスカが構えられる。
「これで終わりだ!」弟が地表から低い角度で投げ込んだ。高低からの挟撃。
光雷卿の判断は一瞬だった。全速で馬首を返して飛んでいる幻影の兄へ突進する。
「カルロス!弟のほうを抑えろ!」
「御意!」カルロスが弟の方角へ馬を走らせた。同時に光雷卿は兄の懐へ飛び込む。
幻影の兄が驚愕の表情を浮かべた。至近距離の跳躍での投擲は難しい。そのまま斧を振りかざそうとした瞬間—光雷卿の槍が閃いた。
「もらった!」
光雷卿が勝利を確信した弟の斧が飛んでくる。
光雷卿が避けた瞬間に兄は後方に移動してカルロスの方に斧を投げた。
「なに!?」カルロスが兄の斧を間一髪かわす
双子ならでは同調、お互いの危機回避。
「残念だったな……」兄が不敵に笑う。
弟がと兄がまた二十メートルの距離になると斧を構え再びフ乱舞。空中でフランキスカが展開された。
「また挟撃……!」光雷卿の全身に悪寒が走った。
# 外枠攻略
「閣下!」クラウディオの声が砂塵を割いた。
彼の部下三十騎が光雷卿に追いついた丘陵から駆け下りてくる。ダリオ軍の兵が叫ぶ。
「援護に向かいます!」
しかしクラウディオが制止した。彼は馬上から凝視し続ける。
「待て」彼の声は氷のように冷たかった。「あの斧の挟撃……無謀に突入すれば餌食だ」
部下たちが顔を見合わせる。確かに光雷卿とカルロスの奮闘は見事だが、幻影兄弟の投擲範囲に入った瞬間、犠牲が増えるだけになるだろう。
「ならばどうするのですか!」
クラウディオは兵站を長年してきた、目で見て計算する。斧の軌道と距離を。
「見ろ。斧は決まった距離に落ちる双子がお互いを傷つけないようになっている」彼が指を動かす。「だから、双子から離れれば離れるほど破壊力は低下する、斧がちょうど届かない位置から攻撃する」
「つまり?」
「投擲直後に生じる死角を狙い気を引き。斧の届かない距離の外側から弓で攻める」
彼は素早く指示を出した。
「五騎ずつ班を作れ。A、B班は左右から迂回し兄弟の背後を狙え。C、D班は前方か一気に切りかかり注意を引く。残りの2班と私は投擲後のタイミングを計り一斉射撃を行う」
兵士たちが理解して配置についた。
幻影の弟が光雷卿に向け斧を投げた。その瞬間クラウディオが目配せした——
「突撃!」
前方のC班五騎が一気に幻影の弟に突撃する。幻影の弟が斧を投擲直後の一瞬の隙を突くように設計されていた。
「何!?」幻影の兄が警戒する。弟が反射的に後ろに跳躍しようとした瞬間。
前方から。D班の五騎が槍を構えて兄に突進した。「今だ!」
しかし幻影の兄は信じられない動きを見せた。兄がロープ付きフランキスカを投げ回転を利用して5人の騎馬の足にロープを絡みつけさせ転ばした。
「やはり簡単には行かないか……」クラウディオが舌打ちする。
だがこの時すでにA.B班目の五騎ずつが幻影の兄弟の後方へ展開していた。彼らは盾を並べて周りが見えないようにし密集陣形を取り投擲を誘発しながら突撃する。予想通り幻影の兄と弟が正面に向かって斧を投げつけた。幻影は達は完全に騎馬隊に気を取られた。
「かかった!」クラウディオが手を振り下ろす。
左翼・右翼・後方からの斧の届かない距離の盾で見えない死角からの同時射撃。数十本の矢が弓なりに曲線を描いて殺到する。幻影兄弟が同時に回避行動をとったが——
「!?」
弟の肩に一本の矢が命中した。僅かながらもバランスを崩す。
「やったぞ!」
クラウディオの声に部下たちが歓声をあげる。しかし次の瞬間——
幻影の兄が凄まじい速度で弟のもとへ跳躍し、傷ついた体を抱きかかえた。そして予備のロープ付き斧を二本同時に投げ放つ。それはまるで生き物のように蛇行しながらクラウディオの隊列へ襲いかかる。
「伏せろ!」
射手たちが身をひるがえした時には遅すぎた。五人の騎馬兵がロープに絡まり落馬する。
「兄貴……大丈夫だよ」弟が弱々しく呻く。
「黙っていろ」兄の眼が憤怒で燃え上がった。
# 砂塵の舞いと粉塵の幻
幻影の兄が皮袋を握りしめ天に放った。大量の小麦の粒子が太陽光に煌めきながら舞い降りる。
「また目くらましか」
「目くらましではない」弟が嘲るように言った。「この粉に火をつければ……」粉塵爆発
光雷卿がやな予感がして叫びが響いた。
「砂だ!砂を投げろ!火を消せ!」
一瞬の躊躇の後、兵たちは本能的に大地から砂を掬い上げ投げ始めた。小麦粉が砂に混じり合い灰色の煙となる。
「愚かな……」幻影の兄が冷笑した。弟が火種を掲げた。「だが充分だ。火よ!」
炎が宙を切り小麦粉に触れた瞬間—ボッと小規模な炸裂。しかし期待された轟音ではなく微かな破裂音が鳴っただけだった。火柱はたちまち萎み、小麦粉と砂の混合物が舞い上がるのみ。
粉塵爆発は小麦粉などの可燃性の微細な粉塵が適切な濃度で空気中に漂う必要がある。今や砂と混じってしまった
「なぜだ!」兄が愕然とし弟を睨んだ。室内ではあんなに爆発したのに、幻影は粉じん爆発の原理分かっていなかった
「何かに守られているのか?」
# 影の迷路
「兄貴……」弟がふらつきながら兄の腕に寄り掛かる。「もう限界だ」
その時だった。右肩に斧が突き刺さった近衛兵が、鮮血の滴る剣を杖代わりに立ち上がる。彼は満身創痍の体を引きずりながら一歩、また一歩と幻影に向かって歩み寄った。
「なぜだ……なぜそんな傷を負ってまで挑む?」
幻影の兄の問いに兵は血に濡れた唇を開いた。
「俺たちは……孤児だ」
彼の声は震えていた。
「飢えで死にかけていた俺たちを光雷卿は……引き挙げてもらった」
「……」
「あの人が冷酷と呼ばれるのも知っている。だが」兵は涙を堪え切れずに頬を伝わせる。「良い所をたくさん知っている、ベルガー家では必要なお方だ」
弟がそっと兄の手を握った。彼らの目に初めて理解の光が宿る。
「俺たちは……」弟が呟いた。「光雷卿の悪い側面しか見てこなかった」
「本当の彼が悪なのか……確かめずに決断してしまった」兄が苦しそうに認めた。
「このまま光雷卿を倒してサリバよくなるのか、また混乱を呼ぶだけだ」
「もうやめよう」幻影の兄が深く息を吐いた。「幻影は死なず消え去るのみ」
幻影の兄が皮袋を握りしめ天に放った、黒い砂が舞い前を見えなくする
「さらばだ光雷卿」
「反乱軍へ告ぐ!」「戦闘は終了だ。反乱軍は解散する!」
混乱の中で将校たちが困惑の表情を浮かべる。
「幻影は消える」
「もし幻影が必要となった時……その時は再び現れるだろう」




