マリイカの奮戦
## ≪マリイカの訪れ≫
##≪ ヒヘルの屋敷≫
白鳥包囲の1日目
ヒヘル市の中央広場に面した閑静な邸宅。暖炉の火がゆらめき、大理石のテーブルには季節の花が活けられている。そこには優雅にお茶を楽しむ二組の女性と子供たちの姿があった。
「光雷卿は今頃、白鳥に着いたころかしら心配ね」マリイカに焼き菓子を進める
「この焼き菓子はハインツが好きなのよ」
銀髪を丁寧に編み込んだ妊婦のファリスが微笑みながら言った。傍らでミラルが小さな手で砂糖菓子を摘んでいる。
「本当にお可愛らしいわ」
赤銅色の髪を持つマリイカが優しく目を細めた。彼女の膝には生後間もないベビーが眠っている。
侍女が慌てて駆け込んできた。
「ファリス夫人、幻影の兵と思われるわものが捕まった模様です」
マリイカが素早く立ち上がる。
「幻影!!もしや幻影はここヒヘルを狙っている、幻影は内部に入り込んでからの攻撃を得意にしている、前に白鳥を落とした時と同じスベッチ《弓》がやられた」
孤児院から幼馴染で白鳥攻防戦で幻影に街の内部に入り込まれ処刑されたスベッチ《弓》を思い出す
マリイカの声は幻影に怒りに燃えるような声で。「敵の狙いはここヒヘルかもしれません」
彼女は子供たちを乳母に預け、壁掛けの兜を手に取った。ファリスも慌てて立ち上がる。
「どうするつもり?」
侍女に言う
「兵をヒヘル広場に集めるように言いなさい、まだ幻影兵が紛れてる可能性があります」
##≪ヒヘル広場≫
集まった兵に対して言う
「反乱(軍)に関係のない者は、落ち着いて座っておれ」(byちょっと張遼エピソード)反乱軍のしてない兵士が座り、反乱軍(幻影)の兵がそのまま立っていた幻影兵が十人以上取り押さえられる。
「これだけの幻影兵間違いなく幻影の狙いはヒヘルの掌握だ!」
マリイカが言う「これから幻影が攻めてきます」
「近くの町や村から兵を、すぐにかき集めなさい時間がありません」
「光雷卿の指示がない怒られるのでは?」
兵士たちが困惑の色を浮かべる中、ファリスが毅然と言い放った。
「すぐ集めてきなさい。これよりヒヘルの指揮官をマリイカにします。皆、言うことを聞くように責任は私が持ちます!」
マリイカはその信頼に応えるべく、冷静ながらも情熱的な声で命じた。
「ヒヘルにいる者は全員仕事をせよ。子供たちは石拾い、老人は熱湯を用意しろ。女子どもも例外ではない」
彼女は目を厳しく輝かせた
「このヒヘルが落ちれば、光雷卿は皆殺しの命令を下すであろう。我が夫ダリオがどうなると思う!」
「光雷卿にダリオ様ならやりかねない……」兵士たちが囁き合う。
マリイカの発破は功を奏した。恐怖に煽られた人々が一斉に動き始める。ファリスも率先して。軽い物資を運び始めた。
「奥様は妊婦なのでお休みください」マリイカが慌てる。
ファリスは微笑んで言い返した。「マリイカが"ヒヘルにいるもの全て仕事せよ"と申されましたよ?」微笑みながら言う
市中の混乱が極まる中、ヒヘル周囲の丘陵から狼煙が上がった。白鳥包囲の六日目の光雷卿がヒヘルの攻撃に気が付いた頃、夕刻──ついに幻影軍が現れる。その数は1万を越える勢い。
「来たか」
マリイカは胸壁に立つ。西の空は紅蓮に染まり始め、敵の旗印が風に翻っていた。ヒヘルとの籠城戦が今まさに始まろうとしていた。
# 焔の城壁
ヒヘル城壁では金属がぶつかる鈍い音が連鎖していた。幻影軍の梯子が次々と石垣にかかり、鉤縄が雨のように降り注ぐ。マリイカの命令一下、女子供までもが必死に戦っていた。
「梯子を焼け! 油壷を投げろ!」
彼女の赤銅色の髪が煤で黒く汚れている。鎧の肩当は既には敵兵の矢が掠めた傷があった。それでも彼女は叫び続ける。
喉が潰れそうになりながら。
「怯むな! 石を投げろ!熱湯を落とせ !町に兵を入れるな」
城壁の上では幼い少年が集めた石を大人に渡しに行き、それを大人が投げる、老人が台所で熱湯を作る、満たした鉄釜の熱湯を城壁から落としていく。マリイカは見渡して唇を噛んだ。敵は明らかに予想より多い。白鳥に陽動作戦をかけつつ一万以上の兵が投入されているようだ。
「敵が多すぎる……!」彼女が呟いたとき、胸壁で悲鳴が上がった。反乱兵が一人、城壁を乗り越えたのだ。
マリイカは咄嗟に短槍を掴み敵兵と相対した。
「死ぬ覚悟はあるか?」彼女の声は冷徹だった。
「貴様こそ死ね! 命乞いなら聞いてやる!」敵兵が唾棄した。
槍が火花を散らす。激しい肉弾戦が繰り広げられた。マリイカの頬を切り裂いた刃が鋭く光る。しかし彼女は怯まなかった。一瞬の隙を突いて敵の首筋に短剣を深く沈ませた。血飛沫が青空に弧を描く。
倒れた兵士を押しのけるように次の敵が迫る。
「光雷卿が必ず来る! 守り切ればいい! 諦めるな!」
ファリスは城内の倉庫で物資を確認しながら指示を飛ばしていた。
「油はあと五甕しかない! 熱湯は一刻ごとに作れる限りだ!」
「このままでは……三日もつかしら」と弱気になりそうなところマリイカがやってくる、「大丈夫だ光雷卿は必ず来てくれます」マリイカが言う「一番大変なのは貴方なのにごめんなさい」
「敵は西門を集中攻撃しています! 外堀が埋まりそうです!」
伝令が息を切らして駆け込んだ。
「了解だ!」マリイカが即答し城壁を疾風のように駆ける。城の西端に達すると彼女の指揮で防衛陣形が再編成されていく。老若男女が列をなして土嚢を積み上げる。
「矢を放て、石を投げ続けろ! 熱湯も惜しむな!」
「しかし水瓶が空に!」老人が汗を拭いながら訴える。
「井戸から汲んでくる者を増やせ! 夜明けまで保たせろ!」
彼女自身も瓦礫を持ち上げて土壁の補強に加わった。袖口が破れても気に留めない。
夜半、疲労の色濃い兵士に檄を飛ばす。「あと一日耐え抜けば光雷卿が到着する!」
「信じてよいのか?」老兵が問い返す。
「光雷卿は既に出立している! 騎馬隊は最速で駆けてくる!」
マリイカは分かっていないが嘘も方便との叫びに兵士たちがやる気を出させ。僅かながら勇気づる。
夜明けと共に幻影軍の包囲網がさらに狭まる。東門ではついに跳ね橋が破壊された。
「東門を捨てろ!」彼女は苦渋の選択を下す。「ヒヘルの屋敷に兵力を集中させる!」
マリイカの果断な采配がなければヒヘルはとっくに陥落していただろう。だが戦いが始まって三日目──ついに矢筒が空になる瞬間が訪れた。石も尽き熱湯も底をつきかけている。
「敵が来る! 数が減らない!」
伝令が蒼白になって報告する。
「西の防御壁に亀裂! 敵兵が殺到しています!」
マリイカは槍を取る。瞳が炎のように燃えている。「一人でも多くの敵を倒せ!」
その時──街が見える場所に。
騎馬の一団が砂塵を巻き上げて疾駆してきた。先頭は紛れもなく光雷卿だった。その傍らにはカルロス大尉と近衛騎兵隊がわずか百騎ほど。
幻影が現れる「遅いじゃないか光雷卿」実はこれは幻影の罠、光雷卿を釣りだすための、こうして幻影と光雷卿の戦いが始まる




