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兄弟の絆  作者: 木邑 浩二
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紹介

「彼女の名前は直兼千里さん。兄貴が見たのって彼女だと思うんだけど、どう?」


弟の煌大に引っ張られ、人気のない中学校の非常階段へと連れて来られた剛毅。

そこには昨日見かけた少女が、階段に座っていた。


「兄貴?」


微動だにしない剛毅を心配して、顔を覗き込む。


「兄貴!」


「あ、う、悪い!・・・・・そう、彼女だ」


煌大の声に驚きながら何とか返事をし、しばらく千里を直視し続けたあと煌大に近づく。そして彼にしか聞こえない声でこそこそと話す。


「すごいな!こんなに早く見つけるなんて・・・どうやって調べたんだ」


「そんなことは帰ってから教える。ほら、昼休み終わるから。じゃあな、兄貴」


「え?」


そう言うと二人に背を向け、煌大はさっさとその場から去って行く。


(あとは兄貴がなんとかするだろう)


初対面の二人を放置したことに、若干の罪悪感を感じながらも、剛毅のために一分でも早く会わせることができたことに達成感を覚えていた。


(もうちょっとかかると思ってたけど、すぐに見つかって良かった)


今日も学校で自習をするために早く家を出たら、同級生を投げ飛ばした直兼千里に出会った。

煌大を見た瞬間、千里は逃げようとしたが、瞬時に彼女の腕を掴み、捕獲した。

最初は抵抗され、技をかけようとされたが、偶にプロから指南を受けている煌大にとって、それは意味のないものだった。

煌大から逃げられないと分かると、今のは見なかったことにしてほしいと懇願してきた。

その必死な形相を思い出し、煌大は苦笑する。


(あれじゃあ俺が悪者だよ・・・)


元々誰にも話すつもりはなかったが、これはチャンスだと思い、彼女に今日の昼休み、兄貴に会って欲しいと伝えた。

彼女は口を開けたまま固まっていたが、気を取り戻すと「え?何で?」「無理」「イヤ」と反論してきた。

詳しい事情を聞くと今も稲生修一のせいで被害を被っているらしく、兄貴と個別で会うのがバレたらもっと悲惨になるに決まっているのだという。


(それは確かに)


同感した煌大は、二人が会っている時は誰も近づかないように自分が見張っていると言ったが、それでも千里は頷かなかったので、最後は笑顔で脅迫した。

そして今に至るのだが・・・・・。





二人がいる方向へと視線だけ向ける。


「兄貴、大丈夫かな・・・」


基本的に他人と対する時は上辺か、冷たいかのどちらかになるのだが、たぶん彼女なら大丈夫だと思う。

兄貴が関心を持った他人なのだからーーーーーー。

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