訃報
あの事件から月日が流れた。
事件当初は騒然となったが、今は落ち着きを取り戻し、煌大も勉強と遊びと、たまに鍛錬の日々を過ごしていた。
そんな煌大に、突然剛毅から衝撃な報告がされた。
直兼さんと結婚すると・・・・・。
二人の両親は大大大反対で、揉めに揉めていたが、それには衝撃を受けなかった煌大。それよりも子どもができたことに驚き、何度も剛毅に確かめてしまった。
(兄貴、手が早かったんだな)
意外な兄の一面を知り、驚きながらも心から祝福した。両親達も千里の妊娠で折れる形となり、剛毅の高校卒業後、二人は結婚した。
剛毅と千里の幸せな表情に、煌大も満たされ、不思議と肩の荷が降りた気持ちになった。
それからの煌大は勉強に専念し、高校、大学を卒業。そして、念願の医師免許を取得した。毎日目まぐるしく走り続け、ムカつくことも度々あったが、とても充実していた。
そして、あの日がやってきた。
勤務中、スマホに電話がかかったので、画面を確認すると相手は母だった。
「珍しいね、母さんがこんな時間に・・・・・何、どうしたの?落ち着いて。何言ってるか分からない・・・・・・・・・・・え?」
全く予想していなかった母の言葉に、頭の中が真っ白になる。その後も嗚咽混じりに母は電話越しで叫んでいたが、思考が追いついていかなかった。
電話を切った後も放心状態で、母の言葉だけが頭を駆け巡る。
そしてそれは小さな呟きとなり、世界が真っ黒に染まってしまった。
「・・・・・・兄貴が・・・・・死んだ?」




