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兄弟の絆  作者: 木邑 浩二
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仲直り

「直兼様は無事ご自宅に送り届けたとのことです」


「ありがとうございます。鳴﨑さん」


「ありがとうございます」


鳴﨑が手配した車に乗り込むと、先に建物内から避難させた千里の報告を受けた。

千里は煌大達とは別の車で自宅に送られる途中に目を覚ましたようで、最初は状況が理解できず、酷く狼狽していたそうだ。

一緒にいたはずの煌大がいなくなり、車両には見知らぬ女性ばかり。パニックにならないほうがおかしい。女性達は、千紫寺商事系列の民間警備会社の警備員で、柔道や剣道の有段者でもある。安心させるために煌大と剛毅は千里にスマホでメッセージを送った。しかし、知り合いが一人もいないのは不安になると分かってはいたが、さすがに血まみれの格好で自宅まで送るわけにはいかず、鳴﨑にお願いしたのだ。

そして、自分達もこのまま自宅に帰れば、さすがの母も卒倒すると思い、今夜は千紫寺家に泊まることにした。何か勘づくかも知れないが、その時は腹を括ると決めた兄弟だった。

鳴﨑が助手席、煌大と剛毅が後部座席に座ると車が発進した。


(ちょっと疲れたな・・・)


建物内でのことは千紫寺家がうまく処理してくれると鳴﨑が教えてくれたが、人殺しをしたのだから、しばらくは周りが荒れるだろうと思った。

初めて刀を使って人を殺した。

普通なら罪悪感や後悔に苦しんだり、または歓喜するのかもしれない。

でも、煌大は何も感じなかった。怒りはあるのだが、彼らに対してそれ以上の激しい感情は湧いてこなかった。


「煌大、ケガしたんじゃないか?」


隣に座る剛毅が煌大の腕を優しく掴むと、心配そうに確認する。もちろんケガするはずもないのだが、とりあえず兄の好きにさせる。


「兄貴は?」


「俺は大丈夫だ」


「そっか・・・・・なら良かった」


「・・・・・・」


沈黙が二人を包む。そういえばケンカしていたのを思い出し、何となく気まずくなる。でも、いつまでもこのままでもいられない。


(俺から謝るか)


意を決し謝罪の言葉を口にしようとすると、剛毅に先を超された。


「煌大、ごめん。俺が悪かった」


「・・・・・・・」


「あの日もそうだったけど、今日だって俺がいなくても、煌大だけで片付けられたと思う。【火坐丸】もいるし、きっとこれからも」


「もういいよ」


煌大のハッキリとした口調が、剛毅の言葉を遮る。


「俺も言い過ぎたから、ごめん」


「煌大・・・」


煌大から謝罪を受けると思わなかった剛毅。その瞳は微かに潤んでいる。


「それから、俺のことは放っておいていいから、直兼さんのことを一番に考えてよ」


嘘偽りのない本心を伝えたのだが、剛毅の不気味な笑みに一瞬ゾッとする。


「それは無理だ」


「は?」


煌大が不満気な顔をすると、突然剛毅に頭をグシャグシャに撫でられる。


「ちょ、兄貴!何するんだよ」


「煌大と千里に優劣なんかない・・・・いつも二人のことを考えてるし、想ってるよ。いや、やっぱり煌大のほうが一番だな」


「何だよ、それ」


童心に返ったかのように、無邪気な笑顔で返答する剛毅。その答えに納得できない煌大だったが、同時に素直に嬉しいと思ってしまった。

心の中で千里に謝りながら、今だけは許して欲しいと思うのだった。

その後、車内でも千紫寺邸でも、ずっと剛毅にかまわれ続けた煌大。きっと今までの喧嘩の反動だと諦め、兄の好きなようにさせた。

眠りに就く前、ふと、今日見た夢を思い出した。

女性の容姿はもう朧気にしか思い出せないが、これで証明になったかな、と思いながら、すぐに深い眠りに就き、翌朝、夢のことはすべて忘れてしまっていた。

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