粛清
「・・・・・お前、どうやって」
真冬だというのに全身から汗が吹き出す隆一。自分より体格は小柄で、圧倒的に弱そうな少年に恐怖を感じてしまっている。
(何でこんなクソガキに・・・・・!)
「縄抜けなんて、俺の家では当たり前です。敵に捕まる可能性もありますから・・・・それにあなたの縛り方、全然だめです。あんなのじゃ何もしてないのと一緒です」
自分をコケにした言い方に、隆一は唇を噛みしめる。
「この、クソガキが!」
隆一は怒りを糧に素手で煌大に殴りかかる。必死な隆一の形相に、煌大は小さな溜息を吐く。
「刀を使うのは気が引けますけど、仕方ないですよね」
突進してくる隆一の拳を避けると、躊躇うことなく彼の右腕を突き刺す。
「ぁああ!!」
「あんたは兄貴に暴言を吐き、俺の時間を邪魔し、直兼さんを襲った」
隆一の耳に煌大の声は届いていない。彼は腕の痛みを堪えながら、今度は左腕で襲いかかるが、難なくかわされ、今度は左腕を突き刺される。
「あああ!!!」
両腕から血を流す隆一。その目は怒りで血走り、煌大を睨み続ける。
その闘志に内心賛辞を送りつつ、無駄な足掻きだと煌大は思う。弱い者を痛めつける趣味はなかったが、こんなクズを一瞬で殺す優しさは、今の煌大にはなかった。
「あなたは苦しんで苦しんで苦しんで死んでください」
「きっ!・・・ぁ・・・・は・・・・・ぁ」
三度目の攻撃を仕掛けようとした隆一だったが、それは叶わなかった。突如息苦しさを感じ、自分の喉に目を向けると、刀が喉を貫通していた。
そして、奥深くまで貫かれると一気に抜かれ、その場に倒れ込む。朦朧とする意識の中で、煌大の声が、彼の聞いた最後の声となった。
隆一が絶命したのを確認すると、取り囲む男達へと視線を向ける。男達は人が死ぬのを初めて目にしたようで、身体は震え、誰も口を開くことができない。
煌大は彼らに謝罪も逃亡も許すつもりはなかった。
死だけが彼らを許す選択だった。
男達もそれを感じ取ったのか、各々武器や盾になる物を手にし、煌大や剛毅に襲いかかる。数で勝てると淡い希望を抱いて・・・・・・。
数分後。二人の兄弟の足元には、死体と血の色で彩られていた。




