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兄弟の絆  作者: 木邑 浩二
22/30

「お、起きたか?」


重たい目を開けると、両手両足を縛られているのが分かった。周囲を見渡すと、場所は分からなかったが、剥がれた壁紙や壊れた備品、うっすらと積もったホコリ等、今は使われていない建物に連れてこられたようだ。

正面には煌大が投げ飛ばした男と、彼の仲間達がいる。そして彼らの近くに、床で気を失っている千里がいた。


「直兼さん!」


「弟、俺達は無視かよ」


煌大は自分と千里の間に割って入った男を睨みつける。男は相変わらずニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ、煌大を見下ろす。


「ったく、兄貴と一緒で本当に可愛げのない弟だ。俺の弟を見習え」


男が首を後ろに傾けると、仲間達の中から一人の男が進み出る。その男と会うのは三度目だ。今日、剛毅と喧嘩した日、そして・・・・・・・・

被っていたフードを脱ぐと、男の隣に並ぶ。

その姿に煌大は鼻で笑う。


「やっぱりお前か・・・稲生」


「・・・何だ、気づいていたのか?」


「ついさっきだけどな。学校でお前が俺に会いに来なければ分からなかった。で、隣にいるのはお前の兄貴ってわけか」


煌大の冷ややかな目が、修一から隆一へと注がれる。


「そうだ。稲生隆一、俺の兄さんだ」


「どうだ、俺の弟は可愛いだろう?」


稲生の兄、隆一が自慢気に修一の肩を抱く。人を襲っておいてどこが可愛い弟なのか、まったく理解できない。自分の兄はバカ兄と思っていたが、稲生の兄はクズ兄だとよく分かった。


「・・・・・それで?何度も人を襲っておいて、これからどうするんだ?」


修一の目が細められる。


「そんなの決まってるだろう?俺の忠告を無視したんだ。その償いをお前の身体に刻まないと」


煌大は鼻で笑う。


「兄貴に助けてもらわないと何もできないくせに」


「!」


修一が煌大との距離を更に詰めると脇腹を蹴る。


「ッ!!」


「杞龍、現状認識ができていないな」


どれだけ凄まれても暴力をふるわれても、煌大の感情がマイナス思考へと落ちることはなく、不敵に笑う。


「お前の目的が俺なら直兼さんは家に帰せ。家族が心配してるはずだし、このまま直兼さんが家に帰らなければ警察沙汰になる。今ならまだ間にぃ!!」


「俺に指図するな!」


煌大の態度に腹を立てた修一は、再び感情のままに煌大の脇腹を蹴り、彼の苦しむ姿に満足気な表情を見せる。


「彼女は家に帰さない。彼女にも罰を与えるんだ。俺のことしか考えられないように、彼女の身体に俺を刻み込むんだ。嬉しさで涙する彼女の姿が目に浮かぶ」


(・・・・・こいつ、狂ってる!)


あまりに身勝手な言い分に、煌大は戦慄を覚える。そんなことをすれば彼女は身体と心に一生の傷が残る。

そんなことを許すわけにはいかない。


「じゃあ、こいつは俺達である程度ヤッておく。あ、もちろんトリはお前に残しておくから、お前は彼女に良い夢見せてやれ」


下品な笑いを見せながら弟の背をバシバシと叩く隆一。兄の激励に修一は笑うと横たわる千里へと歩みを進める。


「兄さん、間違って杞龍を殺さないでくれよ。俺がトドメを刺すんだから」


「任せとけ」


腐った兄弟はお互いに背を向け、それぞれの獲物に向かう。

煌大の目前には、隆一を中心に男達が並び、醜悪な笑みを見せる。手には鉄パイプやバット等の武器を持ち、手にナックルをはめている男もいる。中腰になった隆一は、煌大の髪を掴み無理矢理顔をあげさせる。先程から言葉を発しない煌大を見て、ついにビビったのだと思った。


「さっきまでの勢いはどこにいった?」


「・・・・・・」


「兄ちゃんに助けを求めたって無駄だぜ。兄ちゃんがこの場所にたどり着けるわけねーから。俺の気が済むまでじっくりと付き合ってもらうぜ」


舌なめずりをする隆一に、煌大はとびっきりの笑顔を見せる。


「俺はさっさと帰りたいんで、早く終わらせてもらいます。それに兄貴はもうすぐ着きます」


「あ?」


「だって俺達はこの世界の誰よりも兄弟の絆が強いですから」

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