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兄弟の絆  作者: 木邑 浩二
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失態

最近の煌大は学校が終わると図書館で勉強するのが日課となっていたが、今日は息抜きと交流を兼ねて、友達とカラオケに行き、今はゲームセンターに来ていた。


「煌大かなり取ったな」


「フィギュアにぬいぐるみ、お菓子とその他いろいろ」


「取るのに夢中になり過ぎた・・・いるのあったらとって」


「お、マジで?やったー!」


「じゃあ煌大には俺が取ったやつやるよ」


「ありがと」


煌大が両手で抱き抱えていた景品はすぐになくなり、代わりに友達が取った猫のぬいぐるみとチョコレートが残った。クレーンゲームは景品を取るよりも、取る瞬間が好きな煌大。そのため、景品にはあまり興味がなかく、友達が喜んで受け取ってくれて嬉しかった。


(いい気分転換になったな〜)


「じゃあハンバーガー食って帰るか」


「いいね」


「確かここのゲーセンの近くにあったよな」


戦利品を鞄や袋に詰め込み、ハンバーガーの店へ行こうと、ゲームセンターを出ようとすると、入口で入店客とかち合ってしまう。


「っ!すみません!」


「気をつけろよ!・・・・・・あれ?お前」


(・・・・・・・この声)


煌大はぶつかった肩を擦りながら謝ると、ゆっくりと顔を上げた。

ぶつかった体格のいい男が凝視してくるので、不快に感じつつも、見たことのある顔だと思った。


「杞龍の弟じゃねーか」


「・・・・・あ」


前に剛毅と千里を会わせるために高校の校舎に行った時、剛毅と煌大を似てない兄弟だと言った、不快な男だった。

男も同級生達とゲームセンターに遊びに来たようで、後ろに五、六人の男女がいた。

煌大はさっさとこの場を去ろうと会釈だけして店を出ようとしたが、男に腕を掴まれた。


「おい!先輩にそんな態度はねーだろ?」


「兄ちゃんがイケメンだからって、態度でかくねーか?」


「杞龍君の弟なのに全然似てないじゃん!」


「なんか生意気そー」


好き勝手なことをぼやく先輩達に、これ以上関わりたくない煌大。しかし面倒ごとは起こしたくないし、後ろにいる友達に迷惑がかかるのも避けたい。


(どうしようかな・・・)


逡巡していた煌大だが、男が放った一言で、頭を駆け回っていた様々な対処法が瞬時に吹き飛んだ。


「兄貴が顔だけのクズなら、弟は顔もクズだな」


掴まれた腕から逃れた煌大は男の懐に入り込むと、逆に男の右腕を掴み、背負い投げた。


「!?」


男の身体は地面に叩きつけられ、自分の身に何が起こったのか、理解できないでいた。

周りにいた煌大の友達や男の仲間、そしてゲームセンターの客達は呆然と二人を見つめるしかできなかった。

天井をボーッと見つめる男の視界に、陰ができた。


「間違えないでください。クズはお前で、兄貴は最高にかっこいいんだ!」


「!」


地面に落ちた鞄を拾うと、煌大と友達はそのまま店を出て行った。

見たことのない煌大の一面を見れてしまい、友達は興奮が冷めず、夕飯代わりのハンバーガー店でもその話題で持ちきりだった。

当の本人は相槌を打ちつつ、面倒にならなければいいなと思いながら、ハンバーガーを頬張っていた。

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