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兄弟の絆  作者: 木邑 浩二
13/30

原因

「おはよう杞龍君!」


「直兼さん、おはよう」


二学期に入り、制服が夏服から冬服に変わっても、煌大は学校での早朝自主学習を継続していた。

今日もいつものように早く登校していると、彼の姿を見つけた直兼千里が声をかけ隣に並ぶ。


「学校に行くには早いけど、どうしたの?」


「昨日授業で分からないところがあって、杞龍先輩に聞いたら杞龍君に聞いたほうがいいって言われて、早く来たの」


ニッコリ笑顔で教えてくれた千里に煌大は苦笑するしかなかった。


(兄貴は勉強に興味ないからな・・・・・)


将来が決まっている剛毅にとって勉強は無意味なもので、必要がないと思っている。唯、補習を受けて訓練の時間が割かれないよう、欠点はとらないように気をつけている。

真面目に勉強すれば、そこそこの点数はとれるのに、困った兄だと思う。

あの夏祭りの日から、剛毅と千里の仲は、かなり近づいたと思うのだが、まだ、恋人には発展していないようだ。

剛毅が千里に対して好意を持っているのは明らかで、千里も少なからず剛毅に気があると、煌大は思っている。

剛毅が年齢を気にしているのか?と思ったが、兄はそんなことを気にするタイプではなかったし、もしかしたら恋人という発想がないのかもしれないと思うひどい弟だった。


(ま、なるようになるか)


「本当に仲がいいんだね」


「!」


思考に耽っていた煌大は、千里の声で現実に引き戻される。


「誰が?」


「杞龍君と杞龍先輩」


千里がほんの少しだけ不満そうな目で煌大を見つめる。二人の身長はほとんど変わらないが、少しだけ煌大のほうが高いので、千里には少し上目遣いで見られてしまう。


「電話とかで話してても、杞龍君の話しが多いんだよ。煌大は優しくて強くてしっかりしてるとか、煌大はかわいいとか、煌大は甘い物が好きで酸っぱい物が苦手だとか、今日は一緒に遊んだとか、今日は図書館で勉強してるとか、一日に何回も」


「・・・・・マジで?」


「マジ」


煌大は足を止め、頭を抱える。


(原因は俺か!まったくあのバカ兄貴!好きな女の子に弟のことばっかり話してどーすんだ!自分のこと話すとか、直兼さんのこと聞けよ!)


剛毅の対応の酷さに、こみ上げる怒りを抑えながら、深々と千里に謝罪する。


「アホな兄貴でごめん。帰ったら殴っとく」


しょぼくれる煌大に千里は微笑する。


「ちょっとうらやましいと思っただけだから、殴るのはやめて」


「・・・・・兄貴は過剰なところがあるから」


深く溜め息をつく煌大。


「何か原因があるの?」


「・・・・・」


何気なく質問しただけだと分かってはいたが、思わず言葉につまってしまった。瞬時に変わった雰囲気を察して、千里はバツの悪い顔になってしまう。


「ごめん、私」


「兄貴と俺、似てないと思う?」


「え?」


明るい声で口を開いたかと思うと、突然の意味不明な質問に千里は呆気にとられる。そして煌大が再び歩き始めたので、その後を追いかけ横に並ぶ。


「小さい頃から親戚や友達とかに俺達は似てないって言われ続けてて・・・まぁ、今も言われるけど、彼らにとっては冗談半分なんだと思う。でも兄貴はそれが許せないみたいで、ある日言った奴をボコボコにしたんだ」


「・・・・・」


「元々俺にはよく構ってくれてたけど、それからは過剰で、今でも似てないっていう奴には殴りかかろうとするし・・・・・最近はいくらか落ち着いてるかな。もちろん俺達は本当の兄弟だけど・・・・・だから、ちょっと異常な兄弟で、ごめん」


少しの沈黙の後、千里が煌大の腕を掴み、真っ直ぐ見つめる。


「私は似てると思うよ。ちょっと空気読めないところとか、強引なところとか、マイペースなところとか、あと、二人ともお互いを大切に想ってるところとか!」


「あ、ありがとう・・・」


千里は無邪気な笑顔を見せる。正直ドン引きされると思ったのだが、まさかの援護(と言えないこともない?)に驚く。


(さすが兄貴の選んだ女の子)


「でも、それだけ兄貴のことを知ってくれてるってことは、期待してもいいのかな?」


勝利をほぼ確信したかのような笑みを浮かべる煌大に、少し前を歩く千里は首だけ向けると、意地の悪い笑みを魅せる。


「何言ってるの?まだまだ審査中だよ」

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