3.ご飯の代わりに体力回復ポーション飲むのはどうかと思います
与えられた部屋で荷解きをし、衣類や小物類を棚に納め掃除をしていると、あっという間に昼過ぎになっていた。
「ティナさん、昼はどうする?」
背後からの声に振り向くと、クラヴィスがドアの向こうから顔を出してこちらの様子を窺っている。
「何か食材があれば、簡単な物ならすぐ作れると思いますよ。食材庫を見てみてもいいですか?」
こうしてクラヴィスの案内の元、二人で一階の食材収納庫へ向かった。
そこへ辿り着くには台所のすぐ横の通路からひんやりとした石造りの建物に入って行かなければならない。――が、涼しくて気持ち良い。
キョロキョロと棚を確認すると食材らしきものは全く見当たらなかった。せめて、玉子やパンでもあれば良かったのだけれど。
――というか、ナッツやら豆やら、あとこの小瓶はなんだろう。
やたら大量にあり、棚を占領している。さらに向こう側の木箱にはその空き瓶らしきモノが山のように積まれてあった。
「これは……何でしょう」
「……それは、……ポーションです」
「はぁ、ポーション。クラヴィスさんは体調でも悪いんですか?」
「いや……、その……」
どうにも歯切れの悪い答えが返ってくる。
ポーションにも魔力回復や体力回復、傷代謝促進等色々な種類があるのだが。
(これは、どれなんだろう)
ティナは近くにあるその一つを手に取り、蓋を開けて、クン、と匂いを嗅いでみた。ほんのり甘い匂いがするそれは、よくみると黄色の液体だ。
「これって体力回復ポーションじゃないですか。こんなに沢山、いつも飲んでるんですか?」
「毎日は飲んでない! たまに。たまにだ!」
「食材もないし、いつもどうやってご飯食べているんですか。ポーションは確かにすぐ飲んで栄養補給できるし便利かも知れませんけど、そればかりだと良くないと思いますよ」
驚いたと言わんばかりに肩を竦めて彼をみた。
すると、ティナに見られて焦ってしまったのか、クラヴィスがガチャガチャと小瓶を集めて目にうつる所から遠ざけようとしていた。
「わわ、ルドシエルさん! それ沢山あるから端によけるとか無理だから。そのまま置いといてください」
慌ててティナは彼に近づいて、それを止める。
ポーションだって庶民にとっては高いのだ。薬のようなものである。
そして、今までのクラヴィスの食生活について尋ねた。やはり、というか家ではご飯を食べる代わりに回復薬で済ませていたり、周辺の店でテイクアウトしていたとのことだった。
「あまり食べることに興味がわかなくてね。仕事も定時で帰ることもあまりないし面倒で。だから、腹が減ったら適当にその辺の物をつまんだりして、……つまんだりして……」
「ふふっ、男の人一人なら料理とか大変ですよね。あ、でもルドシエルさんなら格好いいしモテそうだから、彼女に作ってもらうとか――」
「格好いい!? ……いやっ、彼女はいないいない、いません!」
「はは、なんでそんな必死なんですか」
頬を染めて何度も否定する姿に思わず笑みがもれる。
この人は黙ってたらものすごいクールで大人な感じなのに、時々子供みたいになったりする。
接するたびに印象が少しずつ変わってくる。不思議だ。
――ルドシエルさんってなんか面白い人かも知れない。
ティナはクラヴィスを見上げて、にっこり笑った。
「お腹すきましたね。買い出しついでにお昼なにか買ってきましょうか」