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転生したけど魔法が使えないので薬師を目指していたら幼馴染み魔術師が私を溺愛してきます  作者: みゆり


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22.実技試験と親睦会での会合、魔導具の秘密



 いよいよ実技試験が始まった。渡された指示書を開くと体力回復薬五本、と書かれている。


 ティナは調合室にある様々な薬草、素材の中から生成するのに必要な物を選び取っていく。


 揃ったのを確認し、細かく刻んだり適用量を鍋に入れ丁寧に煮詰めていった。


 頃合いをみて、別の器にあけて冷ます。その後は熱湯で消毒した瓶に薬液を流し込んで完成だ。



 (ううん、どうにか上手くいった……かな?)


 ティナは滴る汗を拭った。


 完成した薬は名前をつけ、ラドルートの所へ持っていく。


 「先生、体力回復薬が出来ました」

 「おお、ヴァンドール君。 念のため魔法で確認するから、こちらへ持ってきなさい」

 「分かりました」


 名前をつけているとは云え、薬が誰かの物と混同することもあるらしい。そのため、先生がその場で薬の品質を確認するのだ。


 ラドルートは魔法を薬瓶にかける。するとチカッと光が見えた。それを目に留め先生は頷く。


 「うむ。ヴァンドール君、中々上手く出来とるぞ」

 「わ、ありがとうございます」


 

 良かった。どうにか出来たみたい。


 ティナは心の中でほっと息を吐いた。


 

 こうして実技試験は無事に終わった。


 

 ただ今日はすぐに家には帰れない。この後皆で試験の慰労も兼ねての親睦会があるのだ。しかもABコース合同で。


 「今回はティナも出るんだろ?」

 「うん。 私もたまには出ないとね」

 「そう、ティナさんは初めての参加なのね。 ……それなら、Aコースの女子に気をつけてね」


 カトリーヌが頬に手をあてて、困ったように呟いた。


 なんでもその中に伯爵令嬢とその取り巻きがいて、顔を合わせる度に嫌みを言ってくるらしい。Bコースのことが嫌いなのだ。


 「とにかく上手く流すしかないのよ。困った人だわ。ティナさんもその方に目をつけられない様にね」


 「うわぁ、分かりました。気をつけます」


 それを聞いた時点で帰りたくなってきた。だがもう参加することになっているし、クラヴィスにも今日は親睦会に出るので遅くなるかも知れないと伝えてあるのだ。


 

 まぁ、親睦会は二時からなので終わるのはそれ程遅くならない筈だ。念のためである。



 「開催場所は敷地にある薬草畑のある所か……」


 

 天気が良いので外で行うのだろうか。


 ティナ、マーカス、カトリーヌの三人は城の裏にある広大な敷地に出た。その向こうは鬱蒼と茂る北の森があり、精霊王の棲む森とされていた。歴代の王達の御廟もある禁足地である。


 薬草畑の辺りはクロスの掛かったテーブル数台の上に軽食が用意されていた。脇には飲み物のあるテーブルがある。立食形式なのだろう。



 向こう側をみるとAコースの生徒が集まっている。合同とは言え、やはりさりげなく分かれているようだ。


 「皆さん、今日は試験お疲れ様でした。 どうかお時間許すまでお楽しみください」


 主宰の生徒が乾杯の挨拶をする。


 ティナ達もグラスに好きな飲み物を注ぎ、お互いにそれを近づける。


 「お疲れ様――」


 

 和やかな雰囲気の中、親睦会は始まった。


 料理は城の厨房に依頼して作って貰っているらしい。食堂で余った食材を使っているので、向こうも助かるようだった。


 「……美味しそう。 さすがお城の料理。どれから食べようかな」


 見たことのない料理がズラリと並んでいる。まずい、悩む。



 「バイキングみたいで楽しい。これもこれもあとそれも――」

 「おい、ティナ!」


 「……?」


 皿に盛れるだけ盛っていたら、不快そうにこちらを見る糸目先輩がいた。すごい形相だ。


 「あ、先輩」

 「あ、じゃない。 ったく、約束したろうが」

 「食べてからでも良いですか? とりあえず一通り制覇――」


 「いいから、こっち来い」


 昔から好きだよなそういうの、と糸目先輩に連れ出され、人目のつかない敷地の奥にやって来た。禁足地ギリギリの場所である。


 手近にあった大木の根に腰掛ける。彼は手を翳して私達の周囲に光の粒子を半円形に作りだした。


 「糸目先輩、これって……」

 「防音結界と認識阻害の術式を混合した魔術だ。 これでとりあえず誰も近寄らない。 あとティナ、それ貸せ」

 「……は?」


 彼はティナの胸元のネックレスを指差した。これはクラヴィスに貰った守護の魔導具だ。どうして。



 「外さなくていい。 触らせろ。すぐ終わる」


 私の表情が固まって軽い拒否の意思を感じ取ったのか、先輩が困ったように笑った。


 ようやくコクンと頷くと、長い指が碧石に触れた。接触した箇所が鈍く光る、そして石自体の色彩が陰っていく。機能が停止した、そんな感じがした。



 「そんな顔するな。あとで元に戻してやるから。 今やったのはその魔導具の機能を一時的に限定解除しただけだ。 瑠夏も分かるだろう。そいつはスリープ状態に入っただけだ」


 完全に機能を停止させるとアイツが来るかも知れないからな、と遼は忌々しそうに呟いた。


 ティナは息を呑む。


 「……うん、多分来ると思う。 遼ちゃん魔法使えるんだね」

 「まぁね。でもあまり使いたくない。 胡散臭いからなこれは。 あともうリオンか遼でいいぞ、もう僕はティナの前ではちゃんとしてるだろう?」


 柔らかい表情でリオンはティナを見る。



 ――そうだ。 私の前でだけは、彼は糸目でなくなっているのだ。もうとっくの昔に。


 「分かった、そうする」


 「ん、……あとそれは何て云われて着けた?」

 「精霊や外部からの魔力や魔法から身を護ってくれるって――」

 「は、それはそんなかわいい代物じゃない。 その魔導具は持ち主を四六時中監視し、位置情報を測位する機能が付加されている。 相手が子供なら分かる、でもティナは大人だ。そういうの公正じゃないからイラッとする」


 「……! 位置、監視?」


 ネックレスをギュッと握りしめる。多分クラヴィスさんは私の事を心配してなんだろうけど、流石にそれはやり過ぎじゃないだろうか。知らなかった、全然。



 「まぁ、監視盗聴に関しては機能は付加されているけど起動した形跡はなかった。 だから君が不安になることはない。でもあの男、ちゃんと云わないとダメだろ」

 「私、帰ったらクラヴィスさんに聞いてみる……追及、しないと」


 

 そんなティナの様子にリオンは哀れみが混ざった目を向ける。


 「全く、ティナは変なやつに執着されたな。 素直にアイツが教えてくれるといいけど」

 「! クラヴィスさんは変じゃない。 私のことをすごく心配してそれで――」


 「うん分かった。 もしダメになったら僕の所においで。ティナ」


 一生大事にしてあげる、とリオンは微笑んだ。


 

 「マァムのことは今度僕の屋敷に来たときに教えるよ。食べさせてもあげられそうだし――」



 それからリオンの屋敷に行く約束を交わし分かれた後、ティナは浮かない気持ちのまま、親睦会会場へ向かった。




 すると目の前に人が立ち塞がった。


 「ちょっと貴女、Bコースの方よね」

 「はい。ティナ・ヴァンドールと申します」


 目の前の生徒は桃色の髪の鋭い目の女性である。側には三人友達らしき女性もいた。


 

 (あ、この人達もしかして――)


 「私はキャサリン・ルブラントよ。 先程リオン様と何処へ行ってらしたの? 私達、追いかけたのに途中で見失ったのよ。 こんな所で男女が二人きりでいなくなるなんて、はしたないにも程があるわ!」


 髪をふわっと手で払い、ギラリとこちらを睨んでくる。ティナはぶるりと震えた。


 「すみません、ハルシフォムさんに呼ばれて……」

 「まぁ、呼ばれるだなんて。 どうせ貴女みたいな人、あの方に粗相を働いて注意を受けていたのでしょう。そうですわね」


 キャサリンの後ろで三人の取り巻き達がうんうんと頷き同意している。


 

 困った。どうしよう。そもそもリオンて結構人気あるのか。糸目なのに。


 「はい。色々至らない所があって教えていただいていました」

 「ふんっ、そうでしょう。 貴女も庶民なのは仕方ないけれど、もう少し礼節を弁えて行動しなくてはダメよ」


 いいわね、と捨て置いてキャサリン達はくるっと踵を返し、Aコースの集まっている場所へと去っていった。


 

 ふぅと肩を撫で下ろす。怖かった。


 けれど彼女の言いたいことは分かった。とにかくどんな状況であれ、年頃の男女が一緒にいるのは外聞的にも良くないということだ。


 一方的に怒っていたけど、一応筋は通っている気がしたのよね。


 

 きっとあの人が伯爵令嬢だったのだろう。意外と悪い人ではないような――


 

 とりあえずマーカス達の所へ戻ろう。ティナは再び親睦会会場へと足を向けた。


 


 


 

【登場人物】


・リオン・ハルシフォム……糸目なので糸目先輩と呼んでいる。前世は小塚遼。Aコース生徒

・キャサリン・ルブラント伯爵令嬢……薬師養成機関Aコースの生徒


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