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転生したけど魔法が使えないので薬師を目指していたら幼馴染み魔術師が私を溺愛してきます  作者: みゆり


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21.筆記試験とクラヴィスさんの手料理



 今日は薬学試験の筆記試験一日目である。


 試験は昼で終わるためそこからは図書館へ寄っても良いし、帰って自宅で勉強しても良いことになっている。


 「ティナさん試験はどうでした?」

 「どうにか……、勉強していた箇所が出たので、たぶん大丈夫そうです」

 「えー、俺はちょっと不安――」


 とりあえず今日の試験は無事に終わり、三人でまた図書館にお籠り中だ。明日も試験なので今日の結果はそれとして受け止め、うまく切り替えなければならない。


 養成機関の試験は全体の六割点数が取れていれば合格で、もしそれ以下の点数であれば残って補習を受けることになっている。


 さらに成績が目に余る程悪ければ、中途退学もあるらしい。


 今日は簡単な問題が多かったが、明日の科目は素材や薬草を組み合わせての効能、副作用等についての問題がたくさん出題される。



 「とにかく暗記しよう。選択肢ありの穴埋めだと助かるんだけど……」


 集中して黙々と教本と授業のノートを頭に入れていたら、あっという間に二時間経っていた。


 ティナは顔を上げて二人に声をかける。


 「今日はもうそろそろ帰りますね」

 「あっ、もうこんな時間か――」

 「そうね。私達も帰りましょう」


 三人は頷き、図書館をあとにした。




 家に帰ると母アリシアから手紙が届いていた。


 便箋を開くと、誕生日にクラヴィスが実家に泊まることを了承したとの返事が書かれてあった。


 他にアリシアからクラヴィスへの手紙もあるので、それは居間の小机の上に置いておいた。きっと帰ってきたら気づくだろう。



 ティナは夕食の準備を始める。


 今夜は魚を使った料理にしよう。正直刺身が食べたいのだが、この世界火を通していない物を食べるのはよろしくないとされている。まぁ、食べるにしても醤油が無いので無理なのだが。



 白身魚のソテーが良さそう。バターも加えて。


 うん、と頷きティナは腕を巻くって料理に取りかかり始めた――




 食事が終わり紅茶を出すと、クラヴィスはアリシアからの手紙を読んでいた。


 「お母さん、なんて書いていたんですか?」

 「……当日は一緒に馬車で来なさいと書いてある」


 「私に来たのと同じ内容ですね。 他には?」

 「いや、特にないよ」


 微かに口許を緩め、クラヴィスは紅茶を飲み始めた。



 でも朝から馬車で発つのは良いけど、お茶会中クラヴィスさんはどうするのだろう。


 家で過ごしているのだろうか、退屈じゃないかな――


 その事を訊ねると、彼は適当に時間を潰すから大丈夫、との返事だった。




◆ ◆ ◆



 翌日――


 試験二日目も無事に終わった。とりあえず今週は来週の実技試験に備えるのみである。


 試験は当日三種の薬からランダムに一つ指定され、それを制限時間内に生成するというものである。生徒はその種別ごと三組に分かれて、各々一斉に始める仕組みになっている。



 流石にティナもこのところの勉強の疲れが溜まっているので、今日は早々に帰ることにした。



 (早めに帰って少し横になろう……)


 ふわぁと一つ欠伸をし、ティナは王城を出た。



 家に着くと着替えて居間のソファーに腰を下ろす。


 ここで勉強するのは最近の習慣になっている。教本をいつもの様に開いていると、やがてうつらうつらと目蓋が落ちていった――




 美味しそうな匂いがする。お腹空いた。


 あれ、お母さん来てるのかな……?



 心地好い微睡み、身じろぎした僅かな感覚にふっと目が覚める。がばりと飛び起きた。


 「いけない。 ……今私すっごく寝てた!?」


 毛布が体にかかっている。あれ、私いつ掛けたかな。


 (クラヴィスさん、そろそろ帰って来る頃じゃないかな。まずい。 ……でも何だろう、この匂い)


 ふっと漂う食欲をそそる匂いに引き寄せられる様に、ティナは台所へ向かった。


 

 

 そこには見たことのある背中、クラヴィスの姿がそこにあった――


 「……クラヴィスさん」


 「ああ、ティナ起きたの? 調子はどう?」


 気配に気づいたのか、彼は首だけをこちらに向けた。


 近寄って彼の手元をみると、焼いたお肉とスープ、サラダ、パン、フルーツが今まさに盛り付けられようとしている所だった。


 

 「たまには俺も作ってみたんだけど、やっぱりティナみたいにはいかないな……。 切って焼くしかできない――」

 「そんなことない! クラヴィスさんありがとうございます。私、すごく感激しました」


 目を輝かせて彼を仰ぎ見る。


 きっとこんな風に料理を作るのは初めてだったのだろう。


 あまり見ないで、と照れ臭そうに呟くクラヴィスの頬はほんのり赤く染まっている。


 それからティナも手伝って、料理をテーブルへ運んだ。彼が私のために作った、ただそれだけで特別に感じる。すごく嬉しい。



 そうして二人で料理を囲んで、幸せを感じる夜を過ごした――


 

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