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転生したけど魔法が使えないので薬師を目指していたら幼馴染み魔術師が私を溺愛してきます  作者: みゆり


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130/148

130.庭でのバーベキューと風の神の本当の願い



 ティナ達が準備を終えた頃。


 勤務が終わり、作業員達がドヤドヤと庭に姿を現した。夕食はこちらでとると連絡が入っていたのだろう。


 奥の厨房から出てきた料理人らが肉や野菜を次から次へと焼き始める。串焼きもたくさん並び美味しそうだ。


 「わぁ、美味しそう」

 「皆、たくさん用意したから遠慮しないで食べてね」


 ルーデウスが皆に食べるよう声をかける。


 ジュウジュウと肉が焼ける香ばしい匂いがして、ティナの目が輝いていく。作業員達が嬉々として、肉を手に取り頬張った。すごく美味しそうだ。


 「これはすごいな圧巻だ」


 クラヴィスが彼らの様子に圧倒されたように呟いたのを見て、ティナが微笑む。


 「皆でこんな風に食べるのって楽しいわね。ラヴィは初めて?」

 「いや、討伐任務で夜営した時に狩りをして、こんな風に食事をすることはある。だがここまで本格的なのは初めてだ」


 「……狩り」


 彼の話によると、兎や鳥、他の獣などを狩るらしい。ティナは狩りをしたことがなかったので、クラヴィスに色々聞きまくった。


 あまりにも夢中になって訊ねるので、余程興味があるのかと思われたようだ。途中でクスクス笑われる。


 「そんなに興味があるんだな。狩りなら、今度馬に乗って一緒に行ってみようか」

 「いいの? でも私、今まで馬に乗ったことがなくて……」


 「一緒に乗ろう。教えてあげる」

 「ほんと!?ありがとうラヴィ」


 馬に乗ることはおろか、狩りすらしたことがない。初めての体験が出来るなんてと想像してティナの頬が緩んでいく。


 「ティナ、」

 「……?」


 ふと自分を呼ぶ低い声がし、振り向けば竜人族アーティとライカの姿があった。


 聞けばライカがアーティを部屋まで呼びに行ってくれたらしい。


 「ありがとうライカ君、呼びに行ってくれたのね。アーティさん、体はどうですか?」

 「心配かけてすまない。横になったら大分良くなった」


 みると先程よりも彼の顔色が良くなっている気がする。ティナは急いで取り皿にのせた焼き物を待ってくると、二人に食べるよう勧めた。


 「二人ともたくさん食べてくださいね。お肉やお酒いっぱいありますから!あ、ライカ君はジュースね」

 「へぇ、これは美味そうだ」

 「お腹空いた」


 アーティやライカもこの手の調理が好きなようだ。二人とも慣れた仕草で肉にかじりついている。


 「美味いな、これ」

 「でしょう?」


 喜んでもらえて嬉しい。


 そうしてクラヴィスにも持ってこようと、再び焼き物を取りに踵を返す。だがスッとその手を掴まれた。掴んだのはクラヴィスだ。


 「ラヴィ?」

 「俺も行こう」


 「きゅう、」


 一緒に取りに行くことになった。さらにどこからともなくキュンちゃんも現れ、クラヴィスの肩に飛び乗りちょんと座った。彼の肩は広いので安定感があるようだ。


 二人と一匹で焼きたての肉を選び、グラスを手に取った。庭のあちこちにベンチや椅子が置かれている。どこに座っても良いし、移動しても構わないのだ。


 キュンちゃんには肉の柔らかそうな部分を細かくして、口に近づけてあげる。大きな口を開けてぱくんと食べる姿に、ティナは笑みを溢す。


 「ラヴィも美味しい?」

 「ん、」


 クラヴィスの返事に口許を綻ばせ、グラスに口をつけようとしたら気遣わしげな声がかけられる。


 「ティナこそ体調は。酒を飲んでも平気なのか?」

 「ん、大丈夫大丈夫」


 「止めておいた方がいい。まだ病み上がりだから……ってああ、言ってるそばから」


 顔を歪めたクラヴィスの言葉を聞き終わる前に、あっという間にゴクンと飲んでしまった。すごく甘くて美味しい。ベリーのカクテルだ。


 ティナの頬がほんのり赤くなっていく。


 「ふふっ、ラヴィは心配性ね。大丈夫よ」

 「……それが心配なんだ」


 ペースの早い飲みっぷりに渋面を作ったクラヴィスは、はぁと息をこぼす。


 ひとしきり食べ、おかわりを持ってこようとティナは立ち上がった。クラヴィスにはそのままそこに居てもらうよう伝える。


 「ちょっと行ってくるわね。すぐ戻るわ」

 「ああ、」


 焼き物を焼いているスペースへ行くと、新たに魚介類を追加しているのがみえた。貝が食べたいので、焼き上がるのを待つことにする。


 先程まで焼き物を手伝っていたルーデウスは疲れたのか、椅子に座って休憩している。首にかけた布で汗を拭いていた。


 「ルー、お疲れ様」


 労いの声をかけると、ルーデウスが火照った顔でこちらを向いた。まるでお風呂上がりの人だ。


 「ふぅ、やっぱり火のそばは熱いね。汗がすごいよ」


 隣の即席カウンターにある水をカップに注ぎ渡すと、ありがとうと嬉しそうに受け取ってくれた。


 「良かった、ルー、それにティナ。ここにいたんだね」

 「姉さま、」


 その声に顔を上げると、心なしかホッとした様子のソルソフィアが歩いてくる。ティナ達を探していたら、あちこちから仕事の件やら雑務やら寮環境の整備やら話をされ、ようやくここに辿り着いたらしい。


 すごく疲れた顔をしている。


 「何かもうヘトヘト。こうみえて私、朝から色々頑張ったのに」


 ソルソフィアの目が潤んでいる。ティナはサッとポケットにあったハンカチを差し出した。


 「お疲れ様です、姉さま」

 「ありがとう。……これ貰っても良い?」


 手に取ったハンカチの匂いをうっとりと嗅ぎ出したので、ルーデウスが鬱陶し気味にソルソフィアの頭をパコンとはたいた。


 「痛い、ルー。私だって頑張ったご褒美ほしい」

 「気持ち悪い。変態。大体ティナだって嫌がってるだろ。返してあげなよ」


 実のところ嫌がってはいないのだが、ルーデウスの顔を立ててとりあえずこのハンカチは返してもらう事にした。


 その代わりにとティナは彼女を見上げる。


 「今日は本当に貴重な体験をさせてもらいました。そのお礼といってはなんですが、今度姉さまとルーにまた何か作ってきますね」

 「ほんと!?嬉しい」


 そう約束するとソルソフィアの機嫌が少し直った。感激し小躍りしている。それをみていたルーデウスが呆れた様に肩を竦めた。


 「そういえば、姉さま。私、セレスティア様の真名を教えて頂いたのは、ありがたい事だと思っているのですが……その、ルーでも良かったんじゃないかと」

 「……ティナ、」


 正直あの時、風の神の好意を無下にするのもどうかと思い、成り行きで真名を受けたのだ。


 だがやはり自分には荷が重い。大体こんな小娘が神を召喚できるだなんて、どう考えてもおかしい。


 まだ魔術師団や騎士団に所属しているなら話はわかるが、召喚できても自分にはそれを生かせる場がない。


 「ティナ、そんなこと気にしなくて良いのに」

 「でも……」


 ソルソフィアは話を聞き終えると困った顔をして、ティナの頭を撫でてきた。


 「ルーにとは言うけれど、それは無理だ。実は彼にはどの神も干渉できない。だからこそセレが君を選んだとも言える」

 「え?」


 彼女の言葉を理解するのに少し時間がかかる。つまりルーデウスはどの神も召喚することが出来ない。そういう意味なのだろうか。


 首を傾げるティナにルーデウスがその先を続ける。


 「ティナは僕の魔術が大体、古代魔術を基礎としていることは知っているだろう?」

 「うん、」


 「それは神々がいた頃のものなんだ。それ以降にできた現代魔術は僕は使えない。というか魔術自体が苦手なんだ。……どちらかというと自然界にあるものを操るのが得意かなぁ」


 もしかしたらその事に関係があるかもね、とルーデウスは苦笑いしている。彼自身、神が干渉できない理由がよくわからないのかも知れない。


 確かに竜型のアーティと対峙した時、彼は古代魔術を使っていた。他にも好んでよく使っているのを見たことがある。


 だけど、とティナは眉をよせる。


 「あんなに大きな魔術を軽々と使っておいて、苦手だなんて……他の人が聞いたら絶対に怒るわよ」

 「や、だって本当に苦手なんだよ。普段は見よう見まねで物質を構成しているんだ。魔術っぽく見えるようにね」


 それはそれですごい才能だ。ティナは目を丸くした。


 ルーデウスの言葉の後にソルソフィアが呟いた。


 「あとね、セレの本当の目的は――」


 「アーティさんに会いたいから、でしょう?」


 ティナが即座に答えると、彼女はうんと頷いた。直接的に聞いたわけではなかったが、たまにはアーティに会いたい。真名を受け取った時、そう彼女の気持ちが流れてきた気がした。


 それならとティナは思う。


 (……召喚する時アーティさんもいたら、きっとセレスティア様は喜ぶわね)


 もしタイミングが合えば、彼の前で召喚してみよう。


 ソルソフィアが言うには、自分はセレスティアととても相性が良いらしい。それは彼女の力の象徴たる緑瞳を持っていることと女性であること。


 「でもね、やっぱりセレは君に感謝していて自分の力の欠片を与えたいと思ったのは本当だよ」


 だから別の誰かの方が良いとか思わなくていいんだ、とソルソフィアは目元を緩ませる。


 「……はい。でも魔力が大きすぎるし召喚なんてしたこともないし、正直どうしたら良いか戸惑っています」

 「それなら今度、召喚方法を練習しよう」


 「いいんですか? それなら安心、かも」


 それを聞き、ティナの気持ちが少し軽くなる。彼女に教えてもらうのなら、きっと心配いらない。


 いつの間にか焼き上がっていた魚介類を皿に盛ると、ティナは彼女達に礼を言いその場をあとにした。


 


 

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