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転生したけど魔法が使えないので薬師を目指していたら幼馴染み魔術師が私を溺愛してきます  作者: みゆり


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12.王立図書館でお友達ができました



 本日ティナは一人馬車に乗り、ラルフェリア王国の王立図書館へ来ている。そこは王城から東側に位置しており、城と繋がっているのだ。


 クラヴィスは当直勤務で今朝から明日の昼まで帰って来ない予定だ。


 ティナの方は養成機関が休みで今日の予定が何もなく、ふと王立図書館に行ってみたいと思い立ったのだ。


 こういうタイミングでなければ中々利用する時間が取れなかったので、丁度良かったと思う。


 あの事件もあってか、昨夜はかなり体が疲れていたので、クラヴィスがおすすめの魔力体力混合ポーションをくれた。ありがたく飲ませてもらった。



 そして、これがなかなか効いた。凄かった。



 ぐっすり寝て起きたら、すっかり体が良くなっていたのでびっくりした。クラヴィスの談によると、ティナは薬慣れしてないから物凄く効いたらしい。



 (……でもこれから図書館に行ってくることを伝えたら、あまり良い顔してないというか。心配してたのよね)


 ――結局は渋々ながらも了承してくれたが。


 だがこの図書館、ティナがルーン領にいた時からずっと来てみたかった場所なのだ。この国随一の図書館で、他の領地にある図書館と比べて規模がかなり大きいのだ。


 しかも誰でも利用できる訳ではなく、ある程度の身分がなければ入れない。この国の民と言えど自由に出入りすることが出来ないのだ。


 只、特例としてティナの持っている身分証明兼入城許可証を持つ者は、利用して良いことになっている。


 

 (分かりやすいように、首からぶら下げとこう)


 いそいそと首に掛け、入口の図書館員の確認を受け入館する。


 もう、読みたい本はチェック済みだ。後はお目当てのジャンルの書棚に行くのみ。それから借りたい本を物色して、と。



 (薬草や調合関係の専門書と、あとは――)


 ティナは背伸びして、本に手を伸ばそうとした。


 「あっ」

 「わっ」


 隣にいた人と体がぶつかった。しまった、夢中になって周りを見ていなかった。


 「す、すみません」

 「いえ……、こちらこそ」



 濃緑のローブを羽織った男の人がそこにいた。細目で整った容姿の人だ。


 けれどそれより気になったのは、彼の髪が黒色だったことだ。ティナの目が釘付けになる。


 養成機関支給の物を着ているので、この人も生徒なのだろう。だが、自分のコースに彼のような容姿を持つ者はティナの記憶になかった。



 (……もしかして、Aコースの生徒さんかな?)



 「すいません、私も拾うの手伝います」

 「ああ、どうも」


 彼の抱えていた本が落ちてしまったので、一緒に拾い集める。


 本を拾い上げながら、ティナはチラチラと隣の彼を盗み見た。黒髪を見てしまうと、どうしても嬉しいような懐かしいような気持ちが込み上げてくるのだ。


 「……あの、僕の顔に何か?」


 「――!」

 

 ハッとティナは我に返った。どうやら呆けたまま、彼のことをジロジロと見ていたらしい。


 「いえっ、あの……。 髪がその――」

 「珍しいですよね。これ」

 「はい。あのぅ、それで……」

 

 「で?」

 「…………」


 言われ慣れた言葉なのだろう。青年は即座に返してくる。


 

 ティナ達の間に沈黙が漂った。


 要点を付かないティナに段々苛立ってきたのか、彼は気難しそうに目をすがめた。



 「あ。目も黒いんですね」

 「……そうですが。 所であなたBコースの方ですよね」

 「はい。 あ、ティナ・ヴァンドールと言います。 よろしくお願いします」

 「正直、あまり関わる機会はないと思いますが、僕はリオン・ハルシフォムだ。 よろしく」



 本を抱え直すと、リオンはすぐにティナに礼をして去っていった。 


 関わる機会は確かにないはずなのだが、生憎今日の館内はとても混んでいた。なのでまたしても二人は顔を合わせてしまった。


 「あー、どうも」

 「……また君か」


 リオンはティナを見るなり、疎ましそうに溜め息を吐いた。


 初対面でこの言い方はないだろう、何とも失礼ではないか。ティナは心の中で苦笑いしつつ、隣に座った。


 「あの……」

 「君、図書館内は静かにした方がいいと思うよ」

 「…………」

 

 「で、何?」


 言葉の続きが気になるのか、リオンがこちらに顔を向けてきた。


 「あー、あのハルシフォムさんは、目……悪いんですか?」

 「……どうしてそう思った?」

 「糸目だし、さっきからずっと……、というか始めから私と目を一度も()()()()()()ので」

 

 「は? …………糸目?」



 あ、目、開いた――



 何て言うんだろう。ハルシフォムさんはよくある漫画に出てくる糸目系、の人なのだ。


 しかもあくまでも余談で私の独断と偏見かも知れないが、糸目系は往々にして先輩系もしくは腹黒系が多い。


 糸目がこっちを、ちょっと睨んでいる、気がする。


 そして首を傾け、口角を上げにっこりと微笑んだ。


 「ヴァンドールさんだっけ? そんな言葉ってこの国で使われてるの? 僕はここに来てまだ経ってないから、よく分からなくて」

 「いえ。私の造語です。すみません」

 「そうなんだ。すごいなぁ、他にはどんな造語があるの? 僕、聞いてみたいな。教えて?」



 怖い。今、語尾を強調したこの人。目が糸目だから笑ってるけど、けっこう威圧感がありすぎて。魔王か。


 「……ないです。それしか」

 「えー。残念。 じゃあ僕も面白そうだから、即興で造語作ってみようかな。 ……ええと、東京、とか?」

 

 「…………お上手ですね」


 

 最早なんと返していいのか分からなかった。


 

 こうして私と糸目君は友達(?)になったのだった――

 

お読みくださりありがとうございます。ブックマークなど増えてきていて、励みになっています。楽しんでいただけると嬉しいです。


【登場人物】

・リオン・ハルシフォム……黒髪黒目、薬師養成機関A コースの生徒、多分前世あり。


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