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転生したけど魔法が使えないので薬師を目指していたら幼馴染み魔術師が私を溺愛してきます  作者: みゆり


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114/148

114.竜人族のライカ君がうちに遊びに来ました



 「聖遺物?」

 「はい。私はてっきりそれが出てくるのかと思ったんですが……」


 ティナ、ソルソフィアそしてルーデウスの三人はディラグードの家を出て、集落内を散策している最中だ。


 火竜が眷属、つまり神々の落とし物たる聖遺物をその竜は探しているのかとティナは思ったのだ。


 その事をソルソフィアに話すと、彼女は顎に手をやり、ううんと唸った。


 「確かに赤い竜は眷属だが、それと現在出現する火竜と同一かどうかはまだわからない。本当の事は竜自身に聞いてみないとね」


 まだ早計すぎる、と彼女は苦笑し肩を竦めた。


 「だから始めから掘る一択で準備してきたんだね。第一、聖遺物が埋まっているとは限らないだろうに」

 「う……」


 「それに恐らくその竜は眷属ではなくなっている。神が去ったと同時にそれも解除されるんだ。だから今は承継者という位置付けが妥当だろう」


 聖遺物が地に埋まっているとは限らない。つまりそれを誰かがどこか手の届かない所に保管している可能性もあるらしい。


 だが西側の加護は非常に安定しており、過去の噴火によって荒廃した地も今は徐々に緑も増え作物も採れ始めているとの事だ。


 「でもおかしいなぁ。創世神話にそんな事、書かれていなかったはずなのに……」

 「…………」


 傍らでルーデウスが首を捻っている。ティナは何とも言えず苦笑いで返した。そうしてフゥと息を吐く。


 「でも困ったわね。竜人族なら火竜が里に降りてくる理由がわかるかと思ったのに。結局、手掛かりはナシってことかな」

 

 「そうとも言えないよ、ティナ。……実は竜人族は昔は竜と会話が出来たんだ。今は血が薄くなってきたせいか、その能力も失くなっている者が多いようだけど」


 竜と竜人族には不思議な関わりがあり、そのせいか彼らの集落を襲うことはない。また竜は元来大人しい種だそうだ。


 理由もなく襲うことはないのだ。やはり竜の気持ちが知りたい。


 ティナはソルソフィアを見上げた。


 「それなら竜の気持ちが分かる人がいるか、聞いて回りましょうか」

 「いや、それは私も考えた。さっきディラグードから聞いたんだが、そんな力を持つ竜人族はもういないらしい。ただライカ君なら、もしかしたら……と言っていた」


 そうだ、とティナは彼が先祖返りであると言われていた事を思い出す。それはつまり血が濃く、能力も原初の竜人族のものに近いのではないだろうか。


 ただ未だ彼の能力は覚醒していないそうだ。それは子供故らしい。


 それならライカに直接竜と何かなかったか訊ねてみようか。そう思った時、その本人が物凄い勢いで駆けてきた。


 「あっ、いた。爺がお前のとこに遊びに行っても良いって!」

 「ライカ君、」


 飛んできたライカはニカッと八重歯を見せると、ティナの腰にガバリとしがみついた。ふわとお日様の匂いがした。


 相当美味しい物が食べたいようだ。ティナが堪えきれずに笑うと、ライカは不思議そうに目をパチパチ瞬かせる。


 ルーデウスがそれを見て微笑む。


 「良かったね。お爺様の許可も下りたし。そうだ、君は王都に行ったことがあるかい?」

 「ない。ここから遠くに行ったことはない」


 ブンブンとライカは首を横に振った。


 それなら明日あちこち案内してあげる、とルーデウスが目元を和らげる。ライカはそれを聞くなり、嬉しそうに目をキラキラさせた。


 子供の言う事なので、ソルソフィアは一先ずディラグードに確認してくると言い離れていった。そしてしばしの時間が経ち彼女が戻ってくる。


 やはりライカは王都へ遊びに行っても良いとの事だった。


 ソルソフィアが口角をあげる。


 「ずっとここに居ても何も無いから退屈だろう。社会勉強にもなるから賢者様の所で少し学んで来いってさ」


 

 そうしてライカはティナ達と共に王都へ行く事になった。



 

 「……これは何だ?」


 ガチャガチャと白と黒の平たい駒を裏返したり元に戻したりして、ライカが呟いた。


 『これはねぇ、ティナが考えたゲームだよ。オセロって言うんだって』

 「ふぅん、」


 今、契約精霊シアに頼んで二人で簡単なゲームをしてもらっている。


 その間にティナは急いで夕食を作っている。今夜はライカにお子様ランチを作ろうと思っている。ティナ達のは大人様ランチだ。


 ハタ、とティナは留まった。


 (あ、でもランチじゃないわね。ディナーかしら……)


 一人でぷっと吹き出してしまう。


 「ただいま、」


 そうこうしている内にクラヴィスが帰ってきた。居間の扉を開けた瞬間、ソファーにいるお子様達を見て沈黙している。因みにシアは子供姿だ。


 「…………」

 「お帰りなさい。ラヴィ」


 ティナが彼に事情を説明しようと振り向くと、ライカがスッと立ち上がった。とてて、と走りクラヴィスの前で止まる。


 そして真面目な顔でペコリとお辞儀した。


 「今日からお世話になります。ライカです。よろしくお願いします」

 「…………クラヴィスだ。よろしく」


 クラヴィスもペコッと礼をしている。事前にライカに彼の事は伝えていたが、きちんと挨拶ができる事に驚いた。


 集落には彼と同年代の子供がいない。大人達の中で育ったせいか、きちんと躾られているのだ。


 (……もっとヤンチャな子かと思っていたわ)


 ティナもクラヴィスに今日の出来事を話して聞かせる。竜人族という名称にちょっと驚いているようだ。どうやら彼の知らない種族らしい。


 「そんな種族がトゥーラの辺りにいるんだな。それは初耳だ」

 「そうなの。私も今まで知らなかったわ」


 ティナ達の話にライカも頷く。


 「竜人族って言っても見かけ人間だし、ちょっと力が強いだけで他は何も変わらないからな。大人は造った剣とか槍を売りに王都へ行ったりしてるぞ」

 「ライカ君の所、武具を造っているの?」


 「うん、そうだ」

 「すごい」


 今度うちの包丁も研いでほしい。後で頼んでみよう。


 三人で夕食をとりながら話をする。ライカのミニオムライスの上に旗を刺しておいた。何だこれ、と言ってペイっと彼に外されてしまった。仕方ない。


 ライカが顔をパアッと明るくさせる。


 「ティナ、これすごく美味い」

 「良かった。沢山食べてね」


 隣でライカはハンバーグをもぐもぐ食べている。嬉しそうだ。


 正面に座るクラヴィスも美味しそうに食べている。大人様ランチもやはり簡単に胃袋を掌握してしまうツールだ。


 デザートに果物を添えたプリンを出すと、これまたライカは喜んで食べてくれた。ここまで嬉しそうに食べてくれると、こちらも作り甲斐がある。


 ティナはふふっと笑った。


 「明日は私は養成機関があるから、朝姉さまの御屋敷に寄ってライカ君を預ける事になっているの」

 

 そうしてまた帰りに彼を迎えに行く予定だ。まるで賢者の家は託児所のような扱いである。


 夕食後、シアとキュンちゃんが再びライカと遊んでくれる。その間に片付けをし、ティナとクラヴィスは紅茶を飲んで一休みだ。


 「王都の城下町の見学もルーが連れていってくれるらしいの。ライカ君とても楽しみみたい」


 けれど気掛かりなのは、彼の赤目だ。黒はまだ見かけるが、この色はほとんど見ない。その事をクラヴィスに話すと、心配いらないと答えが返ってきた。


 「恐らく眷属殿は念のため、彼に認識阻害か目の色を変える魔術をかけるだろう」

 「……そうよね」


 その言葉にティナはホッと息を吐く。それならきっと大丈夫だろう。そのままクラヴィスと雑談を交わしていると、足元にもふもふが触れる気配があった。


 何かを訴えるような目をしたキュンちゃんがそこにいた。


 「きゅう、」

 「いけない。もうこんな時間?キュンちゃん、お風呂に入って休みましょう」


 「俺はここでもう少し本を読んでいるから、ティナ入ってきて良いよ」


 クラヴィスはまだゆっくりしていたいらしい。紅茶を読みながら魔術書を読んでいる。


 ティナはクラヴィスを見た。


 「じゃあ、先に入らせてもらうわね。さ、ライカ君も一緒に入ろう?」

 「うん、待って今行くー」


 軽快に返事をしたライカは、積み重ねて遊んでいた木の家をジャラッと壊して片付け始める。


 その間にタオルや彼用の寝間着を用意する。これはクラヴィスの上司ブラム師団長から頂いた子供服だ。


 ティナが忙しく動き回っていると、背後にヌッとクラヴィスが現れた。全く気配に気づかなくて、思わず声が出そうになった。


 目を見開き彼を見上げる。


 「ちょっとラヴィ、そんな無言で近づいたらビックリするから。……どうしたの?」

 「……何であの子と入るの?」


 心なしか彼がむくれている様に見える。気のせいか。


 「え、何でって言われても……皆で入った方が楽しいでしょ」


 因みに何故か精霊シアも一緒に入ると言い出し準備している。


 どんどん不機嫌な顔になっていくクラヴィスにどうしたら良いものかと戸惑う。


 ポツリと彼が呟く。


 「子供だったら良いの?」

 「まぁ、そういうことになる……かな」


 するとポフンとクラヴィスが魔術で子供の姿に変化した。ティナが初めて出会った頃の黒髪黒目の少年姿だ。


 「ラヴィ、」

 「これなら良いでしょ」


 ようやく彼の真意が伝わって、ティナは慌てふためいた。声が震える。


 「だ、だめ、ダメよ。ラヴィとはどんな姿になっても一緒には入れない!」

 「俺は気にしない」


 少しは気にしてほしい、とティナは思ったがその言葉を押し込める。どうやら彼はライカ達とティナが一緒に入浴するのが羨ましかったようだ。


 とにかくダメだと断固拒否すると、渋々彼は頷いてくれた。


 そうしてようやくティナが脱衣場に行くと、わきゃわきゃと子供達とキュンちゃんが準備していた。我先に浴室へ足を踏み入れたライカが目を丸くしている。


 「俺、こんな風呂見たことない。すごく綺麗だし広い」

 「そうよね。普通の家ならもっと小さいものね」


 ここの家の風呂は大きくて立派だ。ティナも初めてこれを見た時は衝撃的だった。一般家庭の倍はある広さなのだ。


 だがライカの集落には湯の沸く場所があるらしい。それは小さく狭い為、人は入れない。よってそこから巨大な桶に湯を運び、湯浴みをしているそうだ。


 湯船ではすでにキュンちゃんがすぃーと泳ぎつつ、プカプカ浮かんでいる。この子は泳ぎが得意なのだ。


 シアも気持ち良さそうに湯船に浸かっている。ティナは体を洗うライカに声をかけた。


 「ライカ君、背中を流してあげる」

 「ありがと」


 ほいと石鹸のついた布を渡される。彼の背中を擦ってあげると、赤くなっている箇所があるのに気がついた。


 「痒いところはない?」

 「うん、ない」


 ティナはそれに再び目をやる。これは鱗の形にみえる。そこだけほんのり赤く硬い。もしかしたら竜人族にある何かの証なのかも知れない。


 この事は特にライカには聞かなかった。


 そうして湯船に皆でゆっくり浸かり、ティナ達は上がった。


 


 


 

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