1/4
第一話
とにかく、どこでもいい。あたたかいところでぐっすり眠りたい。
そう思ってもう、三時間はたつだろうか。彼はいまだに真冬の夜空の下をさまよったまま、どこにもたどり着けないでいた。さっきから降りはじめた雪が、すでに冷え切っていた彼の身体をいっそうこごえさせた。
生業にしていた盗みに失敗し、街を追われたのがもう遠い昔のことのようだ。とにかく追っ手をまくために、でたらめに逃げ回ったあげく、彼はいつの間にか街から遠く離れた山の中にいた。とにかく休める場所を探さなくては。意識はすでに、もうろうとしていた。
満天の星空から落ちてくる雪は、あっという間に、もう彼のひざのあたりにまで降りつもった。とっくの昔に感覚がなくなってしまった足を引きづり、彼はのろのろと前に進んでいった。もし、近くに誰にも使われなくなった小屋でもあれば、そこで休めるのだが……。祈るようにそう願った彼の前に現れたのは、うっそうと生い茂る木々と、辺り一面の白化粧だった。息を飲むような美しい雪山の風景が、彼の望みを断ち切った。
もう、ダメだ。このままでは、本当に死んでしまう……。
そう思ってしまうと、もうどうにも身体に力が入らなくなって、そのまま彼は雪の中に倒れこんだ。
そして気がつくと、彼は見知らぬ家の中にいた。




