三、帰宅
ようやく家に到着しました。
そうしてたどり着いたのは、イーストウォールの森を西に抜けたそばにあるカロンの村。王国の最西端に属しており、村といっても冒険者ギルドや、教会があり、そこそこの規模はある。
エリーゼは、森の入り口で降り立ち、首元に手を当て、何かを呟いた。すると、その身を包んでいたローブは消え去り、麻のブラウスにスカートという村娘のファッションへと入れ替わった。
「すごい!今の何!?」
隣で見ていたベラから、すかさず質問が飛ぶ。リボンを取り出し、髪を結わえながら答える。
「精霊様の加護による魔法よ。私たち人間は、魔族みたいに個々の特殊能力がある訳ではなくて、この世界を司る火、水、風、土、それから光と闇の精霊から、力を分けて頂くの。よし、詳しくは家に着いてから教えてあげる。」
「うん!」
髪を結び終わり、話を区切ると、元気の良い返事が返ってきた。ベラには、大きめのキャスケットを被せ、村の入り口へと歩き出す。村は、大人の人よりも背の高い柵が周りを囲んでいるので、森を抜けたら柵に沿って進んでいった。入り口に着くと、門が付いており2人の男性が立っている。
「おや、エリーゼちゃん、お帰りさない。それで、そっちの子は……?」
「ロブさん、ただいま戻りました。この子は……同居人です。なにか許可が必要ですか?」
笑顔で答えた。対して、門番は頭にハテナを浮かべている。
「え?同居人……?っと、すまん。あんたと一緒なら村に入るのは特に問題ないさ。ただ、住むってんなら教会に申し込む必要があるよ。」
「はい。教えて下さってありがとうございます。それでは失礼しますね。お仕事頑張ってください!」
やり取りを済ませ、家へと足を進める。途中、商店街では、ベラがキョロキョロと辺りのお店を見ては、足をそちらへ進めてしまうこともあった。はぐれないよう、手を繋いで歩く。
細い路地に入って少し進むと、赤い屋根の縦に長い、小さな一軒家が見える。
「着いた。ここよ。」
鍵を開け、中に入ると、左手すぐに階段がついているのが目につく。奥には小さなキッチンとダイニングが。食事はここで行うようだ。右側にはスライド式のドアがある。開けると浴室があった。
二階に登ると、机やベッドなどが見られた。天井が一箇所、人が一人通れる程度の穴が空いている。エリーゼ曰く、屋根裏があり、収納に使っているらしい。
「へぇー、ここに住んでいいの?」
「ええ、そうよ。お茶淹れるから、二階のソファに座って待ってて。」
ダイニングにも椅子はあるが、一つしかないので、テーブル二人で座れるソファのある二階を選んだ。
ベラは言葉を受け、階段を上がっていった。
(一緒に住むのだし、色々と買い揃えないとね……)
そんなことを考えながら、紅茶とお菓子をトレーに乗せて二階に上がる。
「さて、それでは精霊や魔法の話の続きをしましょうか。」
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