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死神乙女の幸せな生活  作者: ねこ狸
3/6

ニ、事情と説得

じわじわと進んでいきますよ……

実際の時間は大して進んでないけれど。

「ベラちゃんのこと、教えてほしいの。そうしないと、これからどうすればいいかが分からないのよ。どうしても話したくないことだったら、首を振ってくれればいいから、ね。お願い。」


 沈黙が流れる。先程までの和やかな空気が嘘だったかの様に、張り詰めた雰囲気へとシフトする。


「う、うん。」

 

「ありがとう。それじゃあ、お家はこの近くにあるの?」


「ううん。魔族のみんなが住んでるところにベラも住んでる。」


「そう。なら、どうやってこんな遠くに来てしまったのかしら。お父さんかお母さんはここにはいないのかな?」


「……いない、と、思う……」


 一問目に比べて、声が格段に暗くなった。目線も下を向き、ベラを見つめるエリーゼとは合わない。


(親の話題が嫌なのかな……)


「誰か、ベラちゃんをここまで連れてこられそうな人に心当たりは?」


「……。」


 黙り込んでしまった。しかし、首を振るわけではない。話すことを拒んでいるわけではなさそうだ。それでもこのままでは埒があかないので、質問を変えようかとエリーゼが考え込んでいると、か細い声がした。


「お、かあさま。」


「えっ。」


「おかあさまならここまで来られるよ。あのね、森で起きるまで一緒のお家にいたの。それでね……おかあさま、ベラのこと……いらない子だって言ってた。ベラ、捨てられちゃったのかな……。ダメな子だから。」


 消え入りそうな声でポロポロと話し出す。次第に涙もポロポロと流れ落ち、嗚咽をあげる。


(捨てられたなんて……。こんなに小さな子を、魔獣も出て来るこの森に……、信じられない。母親、ね、神の御名の下に……いや、そんなの関係ない……。罪を懺悔させて消してやりましょうか)


 エリーゼからはその衣装以上にどす黒いオーラが湧き出ている。


「お姉ちゃん……?」


 気配に当てられ、流れ落ちていた涙は引っ込む。その代わりに恐怖が身を包み、体が小刻みに震えている。エリーゼは、慌てて気配を引っ込め、笑顔を取り繕う。


「ごめんね、ちょっと考え事してただけよ。大丈夫、大丈夫。あっ、それで、ベラちゃんはこれから行くとこないのよね。だったら、私の家に来ない?良ければ一緒に暮らしましょう。」


 言った本人でも無理がある様感じるが、エリーゼは強引に話題を変更した。引き取るのは出会った時から、頭の片隅には選択肢として入れていたことだったので、思わず言ってしまったものの問題はない。それに対して、大きな反応をあげたのはベラの方だった。

 

「一緒に……?で、でもベラ、邪魔しちゃうよ。ダメな子だもん。お姉ちゃんに迷惑かけちゃうから……」


(どうしてこの子は自分をそんなに悲観して……)


「ベラちゃんは、ダメな子なんかじゃないわ。とても良い子よ。まだ、少ししかお話してないけど、あなたの事がとても好きになったの。ベラちゃんの方こそ、迷惑に思ってないなら一緒にいきましょう?」


「え、えーと……」

 

 中々決心がつかない。しかし、エリーゼの中ではもう既に決まっている。ベラが遠慮がちな性格だということは分かっているので、押し通そうと畳み掛ける。


「ベラちゃんは私の事嫌い?」


「そんなことないよ!ベラもお姉ちゃんと一緒がいい!」


「そう。なら、一緒に帰りましょう。」


「…………うん。」


 エリーゼが手を差し出すと、ベラはその手を掴む。瞳からはまだ迷いが見えるが、了承はとった。体を引き寄せるとそのまま抱き抱え、空で待機していた大鎌に乗る。そして今度は二人で帰路へと着いた。


読んで頂き、ありがとうございます!

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