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死神乙女の幸せな生活  作者: ねこ狸
2/6

一、邂逅

 殺めた魔族の女をぼんやりと眺める。


「……我らが神に仇なす魔族は滅すべし、か。もう嫌…辞めたいな……」


 ふぅっと息を吐き、被っていたフードを取る。現れたのは10代後半程の悩める乙女の顔であった。魔族の女を追いかけていた不気味な面影はなく、年相応の少女の様子である。


「はぁ、帰ろ。」


 そう独りごち、手に持っていた大鎌を徐に投げると、水平を保ちつつ空中に留まる。軽く飛び跳ねてその上に乗った。そうして上空へと浮かび上がる。あっという間に木々の遥か上に到達した。方角を確認し帰路に着こうと進んでいると、ふと、木々の開けた水辺のある地点が目につく。


(今日はこの辺りで休むとしましょうか……)


 夜も大分更けてきたこともあり、落ち着ける場所を見つけると、その場所に向かって下降していった。


(あれ……何だろう?)


 ふと、何かが影があることに気がついた。

 更に近づいていくと暗い影の正体が露わになった。そこにあったのは、物ではなく人、しかもこの場には似つかわしくない幼子だ。夜中の森に子供が1人。周りに大人も居なければ、野営をしている様子でもない。異様な光景に不審が募る。そうして少女をよく観察と、ただの子供ではないことが判明した。まだ小さいものの、先程の女と同様に角が生えている。人間ではない、魔族の幼子だ。


(どうしてこんなところに……)


 その子はキョロキョロと辺りを見回している。誰かを探しているようなそぶりであった。


(どう対処すべきか……)


 教会の教えでは、魔族は悪とされる。しかし、その教えは普遍的ではあれど、絶対のものではない。元となる教典からいくつかの解釈が存在する。

 人間国に出没する魔族は人に危害を加えるものが殆どだ。それ故に征討してきた。だが、この子供は悪事をしでかした訳ではない。

 

 迷いはあったが、やはりこんな小さな子を悪と判断して倒す気にはどうしてもならない。かといって放置していたら魔物の餌になってしまう。見なかったことにして無視するわけにもいかず、声をかけることにした。


「こんばんは。少しお話宜しいですか。」

「……。」


「私はエリーゼ。あなたのお名前は?」

「……。」


 中々返事がこない。無理もない話だ。突然上空から現れた見ず知らずの人間と仲良く話せる方がおかしい。

 黒衣の乙女――エリーゼはある意味では納得した。


(今の私、怪しさ満点よね。警戒するのも無理ないか。)


 しかし、このままでは良くない。気まずい雰囲気の中、徐々に擦り切れていく心を何とか持ち直して言葉を続ける。


「突然ごめんなさい。偶々通りかかったら、あなたが一人でいるのが見えて、放っておけなかったの。」


「……ベラ。」


 ボソッと呟くような声が聞こえた。

 驚きと怯えを隠せない様子で、目線は一瞬こちらに向いたが、基本的には下がったまま、答えてくれた。エリーゼはひとまずホッとする。

 その後両膝を着いて視線を合わせ、話を続ける。


「ベラちゃんね。それじゃあ質問です。ベラちゃんはどうしてここにいるの?一人?」


「……分かんない。起きたらここに居たの。お姉ちゃん、ここどこ?」


「……イーストウォールの森の真ん中よ。魔族の住む国からは遠く離れてる場所ね。どうしてこんなとこに一人で……、お父さんとお母さんは?」


「っ!……」


 ベラと名乗った少女は何かにハッと気付いた様子だが、更に俯き黙り込んでしまった。今にも泣き出しそうな様子である。エリーゼはこんな時の対処法を知らないため、突然の変化に戸惑いを隠せない。


「え、えぇーと、ね、大丈夫?話せる、かな?」


「……ベラ……ね、おかーさ…ま……ぅ、うぇーん!」


 遂には泣き出してしまった。もうどうすることも出来ない。泣き止むまで、ただ寄り添っているだけであった。

 どのくらい時間がだったのだろう。気がつくと、空が明るくなってきた。ベラは泣き疲れて眠ってしまった様だ。エリーゼは、ベラを寄りかかっていた状態からそっと横に寝かせ、何か口にしようかと思い、食事の準備に取り掛かった。木の枝を集め、火を起こす。そして水辺から魚を捕り、串に刺して、火にかける。焼けるまでは、予め所持していた食料を食べている。本来なら、携帯食料だけて事足りないこともないが、2人分用意しなければならない。

 そのうち、ベラが目を覚ました。


「おはよう。ベラちゃん。」


「……おはよう?」


「そういえば、魔族にはちゃんと挨拶する風習がないんだっけ。おはようっていうのはね、朝起きた時に言う言葉なの。朝早いけど、今日も元気で良かったねって意味かしらね。あんまり深く考えずに私たちは使ってるけど。」


「へぇ、そうなんだ……。おはよう!」


「ふふっ、あっ魚が焼けたわ。ご飯にしましょう。はい、どうぞ。」


「……これ、食べていいの?」


 ベラは期待半分、それでいて不安そうな顔で聞いてきた。エリーゼと魚を見比べては目をキラキラと輝かせている。


「もちろんよ。ベラちゃんに食べてもらう為に用意したの。私の分もちゃんとあるし、何よりお腹空いてるでしょう。遠慮しないで食べて。それじゃあ、いただきます。」


「いただきます?」


「あぁ、これからこの魚たちの命を私たちが食べる、つまりは頂くってことよ。」


「へぇ。い、いただきます。」


 知らないことは素直な姿勢で学ぶ、とても良い子だとエリーゼは関心する。しかし、常にどこか遠慮した様子が気になる。ベラを見ると、一生懸命に魚にかぶりついていた。余程お腹が空いていたのであろう。あっという間に一匹を食べ終えた。

 

「良ければ、こっちも食べて。」


 そう言って、携帯食料を差し出す。フルーツを乾燥させ、小麦を練ったものに混ぜて焼いた固形物だ。日持ちがする様になっている。


「ありがとう!甘くて美味しいね!」


 ベラは嬉しそう食べた。その様子を微笑ましそうに眺める。


「さて、食べ終わったかな。それじゃあ食事の終わり挨拶をしましょう。とっても美味しかったですって感謝の気持ちを込めて、ご馳走様でした。」


「ごちそうさまでした。」


「はーい。では、お腹も膨れたし、もう少しお話聞いてもいいかな?」

今日はここまでです。空腹の中書いてたのでセルフ飯テロが起きました……

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