序、死神乙女
とても短いです。0話みたいな位置付けですかね。
「こ、降参だよ。見逃しておくれ!もう人間に悪さなんかしないからさ」
一人の女が、影の如くゆらゆらと近づく人物に向かって震える声で話す。女の左腕はすでに無く、全身傷だらけである。深い森の中、女は血塗れの身体を何とか動かし、逃げ回っていた。しかし、木の根に足を取られて転んでしまう。全身が震え、立つ力が湧かない。それでも何とか四つん這いになりながらも逃れようと懸命に身体を動かす。その力すらなくなると、命乞いをする様に、追っ手の方へ向き変える。
「助けておくれよ。心を入れ替えるからさぁ。ちっ、あたしを誰だと思ってんだい!こっちに来んな!」
どれだけ訴えようともう一人の人物は足を止めない。暗い茂みから、その姿を鮮明に現した。頭から足まで全身を包む漆黒のローブ、対照的に、フードから覗く腰の下まで伸びる真っ直ぐな白い髪。そして血のように赤く、何処となく焦点の合わない瞳が、恐怖に怯える女へと向けられた。
「っ、ひぃ!あたしを助けてくれたら、何だってしてやるよ。金かい?権力だって好きなものをくれてやれるよ!あたしの旦那はなんたって……」
「眠りなさい。」
一言呟き、漆黒の人物は手に持っていた大鎌を振り回す。女の首をあっさりと刎ねた。鮮血が吹き出す。身体は力を失い、崩れ落ちた。
「……輪廻の加護が在らんことを。」
漆黒の人物はさらに女の元へ歩みを進める。そして女の側頭部に生えていた角を刈り取った。ローブに仕舞い込むと、辺りの空気に混ざり込む様に、ぼんやりと立ち尽くしている。
楽しんで頂けるよう頑張ります♪