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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
魔国防衛戦~エドガー湿原にて~(異世界転移9か月後)
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第8話:戦場

「隊長! クロ隊長! おい、起きろ、クソ隊長!」



 肩をさぶられて、俺は目を開いた。


 別に寝ていたわけではないが、どうにも昔のことが思い出された。夢を見ていたという意味では、同じことかもしれない。



「起きているよ、ソマリ。そんなに揺らすな」


「あほか! 戦場で寝るんじゃねぇ!」



 だから、寝ていないって。


 

「落ち着け、ソマリ。戦線は維持できている。こちらから攻める必要はない」


「何を弱気な!」


「無茶言うなよ。俺達の部隊の戦力じゃ、魔国軍の部隊を撃退できない。ここは、戦線を維持できれば御の字なんだよ。おまえもちゃんと休め」


「だぁ、くそ! 命令すんな!」


「一応、上官なんだけど」



 土嚢どのうに背中をあずけたソマリは、ふんと鼻を鳴らして、頭にえた猫耳ねこみみがぴくりと跳ねた。赤毛の獣人女で、俺よりも二つ年上の兵士。剣の腕前は確かだが、気性が荒く、突っ走る傾向がある。


 

「無駄ですよ、ソマリ。この英雄様は慎重なんですから。命をけて功績こうせきをあげようなんて気概はありませんよ」


「無駄死にはごめんなだけだ、ボンベイ。まぁ、あんたがご所望ならば、特攻させてやってもいいぜ」


「冗談ですよ、クロ隊長。本気にしないでください」



 軽口かるくちを叩いたのは、ボンベイだった。背の高い男で、何かと皮肉を口にするものの、命令には忠実で重宝ちょうほうしている。


 ちなみに、ボンベイはこの場にはいない。彼は彼の持ち場から、通信魔法ネットワークで俺に話しかけている。


 この魔法はは、この世界に元からあったものだ。数人程度とチャットできる魔法で、戦場ではかなり役に立つ。ただ、誰にでもできるわけではなく、通信を維持いじする魔法使いが必要だが。


 王国と魔国の境界にあるエドガー湿原しつげん。そこに突入してきた魔国軍に対しての防衛戦。


 いくつかある戦線の一つに、俺の部隊は配置されていた。


 基本的に国力は王国の方が上であり、さらに、地の利がある分、王国軍の方が有利といえる。


 魔国という名の通り、かの国にいるのは、魔人である。異形いぎょうの人種であり、人間からは嫌われている。


 魔人だからといっても、単体ではさほど脅威きょういにならない。魔力と身体能力が少し高い程度で、実際に、魔国自体は、王国よりも小さい国だ。


 いや、小さかったという方が正確か。


 それは、『祝福の日』以前、つまり、俺達がこの世界にやってくる以前の話だ。今では、魔国軍は、王国軍の脅威となっている。


 ()()()()()()、魔国軍が急速に強化された。


 その理由は、この銃撃音じゅうげきおんだ。


 

「チートか」



 ぽつりと俺がこぼすと、横でソマリが悪態あくたいをついていた。



「くそっ、魔人の奴らは前から気に食わなかったが、あんな卑怯ひきょうな魔法を使うなんて、本当にクズだよな! 正々堂々と戦えってんだ!」



 あれは魔法じゃないけどな。



「こちらも砲撃魔法キャノンは使っているだろ。それに射程しゃていの長い武器を使うのは、戦争の常道だ」



 まぁ、えらそうなことを言っても、実際の戦場なんて、この半年くらいの経験しかないんだけど。


 サブカルにれていたおかげで、聞きかじり程度にミリタリの知識を持っていた俺は、実戦で一つ一つを確認していた。


 まぁ、使えた知識はほんの一握りだが。


 何にしろ、俺は、すべての知識と思考を総動員しなければならない。この戦場を生き残るために。


 銃撃音が小さくなり始めたのを契機けいきに、俺は、姿勢を起こした。



「ラブル分隊、バリニーズ分隊は戦線を維持! ソマリ分隊は俺に続け! ボンベイ分隊は砲撃で援護えんごしろ!」


「お、やっと出番かよ。待ちくたびれたぜ!」



 ソマリが、のそりと立ち上がる。いや、立ち上がるのはやめろ。土嚢の意味がないだろ。


 はぁ。


 俺は一度ため息をついてから、タイミングを合わせて、土嚢を飛び越えた。


 ちょうどである。


 向かいの魔国軍も、こちらに走り込んできたのだ。


 これは読んでいた。魔国軍が攻勢に出るタイミングで、銃声が弱まる傾向がある。そこを突いて、攻勢に出ようと考えていたのだ。攻勢に出た魔国軍の戦線の防御は薄くなる。


 少しずれた地点をすれ違うつもりだった。


 だけれども、実際には、どんぴしゃで魔国軍の突入の正面であった。


 え? マジで?


 うまくいかないな。


 俺は、たてを前に出して、銃弾を弾き飛ばしながら直進した。



「俺の魔法は近くにいないと効果がないぞ! 俺から離れたらハチの巣だからな!」


「「「おう!!!」」」



 駆け込んでくる魔国軍の兵士と激突する。


 距離を詰めてしまえば、銃など関係ない。むしろお荷物だ。それは魔国軍も承知しょうちしているようで、突入してきた部隊は剣を手にしている。


 俺は、正面の魔人を体当たりで吹き飛ばして、続いて、突入してきた敵を剣で斬り捨てた。



「気をつけろ! 英雄がいるぞ!」



 魔国軍側から声があがる。


 同時に、魔国軍の陣営じんえいから、何かが飛ばされてきた。


 いや、跳んできた。


 魔人である。


 褐色かっしょくの肌に、赤い瞳、頭に二本のつのが生えており、異形といって過言でない。彼は、着地するや否や、そのいやしい笑みを俺の方に向けた。



「久しぶりだな! クロくん!」


「ずいぶんな変わりようだな、トーイチロ」



 見た目は変わってしまったが、そこに立つ彼は、クラスメイトの楠本豆一郎くすもと とういちろうで間違いなかった。


 七三に分けられた髪と、銀縁ぎんぶちの眼鏡が魔人の風体ふうていにまったく似合っていなくて、俺は思わず笑った。

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