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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
魔国征伐~魔国の西の森にて~(異世界転移12か月後)
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第80話:魔獣

 そのとき、何が起こったのかわからなかった。


 

「何、こいつ?」



 わからないのは俺だけではなかった。シグレも驚いた声をあげている。この状況は、シグレの意図したものではないらしい。


 この怪物は。


 ただ迷い込んだらしい。


 4本足の獣、人を丸のみにしそうなほど大きく、群青色の毛で覆われており、狼のような風体ふうていをしている。ただ、つのが生えており、顔に目は5個ある。開かれた口には、鋭い牙が無数に生えており、よだれをだらだらと流していた。尾は蛇となっており、10本ほどの蛇が、それぞれこちらの様子をうかがっている。


 魔獣?


 ふと一つの言葉が頭をよぎる。


 報告にあった村を襲う獣。俺は、シグレのことなのではないかと半ば思っていたが、どうやら本当にいたらしい。


 魔獣は、俺をじっとみつめたかと思うと、シグレに目を向け、牙をむき出し、それから、



「ごぉぉあぁぁぁぁ!」



 低い声で吠えた。


 続けざまに、尻尾の蛇が、シグレに襲いかかった。突然のことにシグレは慌てていたが、大鎌で蛇の頭を器用に狩りとっていく。


 だが、蛇の頭は、斬ったそばから生えてくる。次々と襲ってくる蛇に、シグレはさすがに気味わるがった。



「もう! 何なのよ、これ!」


 

 シグレは、大きく後ろに引いて、くるりと身体をひるがえし、大鎌をかつぎ直した。


 そして、地を蹴り、魔獣の胴体に向かった。



「死ね!」



 隊員を散々(さんざん)切り裂いた大鎌。当たれば、さすがに魔獣の腹を裂いただろうか。しかし、魔獣はその巨体を器用に動かし、大鎌をかわした。


 逆に、魔獣は、カウンターのように突っ込み、シグレの身体を、その頭で突きとばした。



「きゃっ!」



 その速度と重量は凶器であって、シグレのかるい身体は、木々をなぎ倒し、遠方まで吹き飛ばされた。



「いったい何なんだ?」



 俺は状況の変化についていけなかった。シグレに殺されるかと思えば、魔獣の乱入。シグレは吹き飛んだが、今、俺は魔獣ににらみつけられている。


 シグレに斬り殺されるのではなく、魔獣に食い殺されるのか。


 死ぬのなら、どちらでも同じだが。


 俺が、もはや諦めている中、魔獣は、鼻を押し付け、臭いをいだ。血のにおいを楽しんでいるのかと思いきや、いきなり、俺の身体に噛みついた。


 死ぬ。


 と思った。


 しかし、そのときは一向に来なかった。


 牙はちくちくと痛いものの、魔獣は俺の身体をくわえるだけで食い殺しはせず、そのまま走り出した。


 俺は抵抗しなかった。


 いや、抵抗できなかった。片腕と片足を切り取られ、血を流しすぎた。もはや意識が朦朧もうろうとして、痛みもよくわからない。


 俺は、魔獣の規則的な足の運びに揺られながら、森の奥へと引き込まれていった。


 巣に運ばれるのだろうか。


 そんな真っ当な思考を裏切って、魔獣は、しばらく走った後に、俺の身体を放り出した。特別な場所というわけでもない。ただの森の木々の合間で、俺の身体は転がされた。


 シグレからは引き離された。


 どうやら追ってはきていない。彼女のことだ。自分に危害を加え得る魔獣に対して、深追いはしないだろう。


 これで安心して、俺を食えるということか。


 だが、それも違う。


 魔獣は、俺のまわりを何度かまわった後に、臭いを嗅いで、ぺろりと舐めたかと思うと、そのまま、どこかへ行ってしまった。


 まるで、俺をシグレから救ったかのように。


 魔獣におんを売った覚えはないが。


 とはいったものの、血は止まっておらず、少し延命したに過ぎない。


 俺は、残った左手と歯でシャツを切り裂き、右腕と左足の止血を行った。


 

「あぁ!」



 シグレから逃れたことで、少し気が抜けたのか、痛みが立ち昇ってくる。脳に針を刺すような痛みが、ひっきりなしにやってきて、意識を奪おうとする。


 だが、俺はなんとかふんばった。


 まだ生きている。


 部隊が全滅した。ソマリが殺された。腕も足も失った。それでも、まだ俺には王国に帰ってやることがある。


 俺には、まだ守るべきものがあるんだ。


 何が起こっているのかわからないが、生きのびたのならば足掻あがいてやる。俺はずっとそうやって生きてきた。


 俺が、痛みにのたうち回っていたところ、魔法通信のノイズが入った。


 ここがどこだかわからないが、誰かの魔法通信が届く範囲にいるようだ。個人回線で、俺に直接つなごうとしている。これだけノイズが激しいということは、誰かを中継しているようで、もしかすると本部からかもしれない。


 ノイズは声となり、知人の声となった。



「クロ! クロ! 返事をして! クロ!」



 ルミは泣きながら呼び掛けていた。

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