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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
魔国征伐~魔国の西の森にて~(異世界転移12か月後)
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第75話:想定瓦解

「何だ! あれは!?」


「何って、トーイチロでしょ。きもいよね」


「チートスキル? でも、トーイチロのチートスキルは、身体強化なんじゃ」


「誰から聞いたの、それ? あいつのチートスキルは超人ウルトラ。あぁやって大きくなる力よ。まぁ、その副産物として身体能力があがるかもしれないけど。って、これ、言っていいんだっけ?」



 じゃ、俺が以前に戦場で見たのは、その副産物ということか。


 確かに、他の部隊と連携して戦うには不便な力。大きくなるサイズを抑えたとしてもおかしくはない。


 読み違えた!


 こんな恐ろしいチートスキルだなんて!


 いや。


 いやいや、落ち着け。


 確かに強力なチートスキルだ。


 しかし、ただ大きいだけ。こちらにはアキトがいる。Sランクチートスキル聖刻剣士パラディンの攻撃力ならば、一撃でほうむれる。


 あんな巨体は、大きなまとだ。


 問題ない。


 問題ないはず。


 

「いや」



 アキトは、どこにいる?


 思い出されるのは、先ほどの光。要塞から遠い地点で北に向かって放たれたアキトの斬撃。


 最悪の事態として、アキトは、要塞前の戦場に参加していない。そして、参加できない状況にある。


 とすれば、要塞前の戦況は一変する。



「くそっ!」



 いったい何が起きているんだ!?


 俺は、胸の内側で暴れまわる焦りと不安を必死に抑えつけ、むりやり思考をクリアにたもとうとした。


 今は、事態の把握が最優先。


 そのためには、とにかく早く、目の前のシグレを処理しなければ。


 

「ラブル分隊長、こちらに兵を送れるか?」


『戻りが遅いので念のため、3割ほど残しています』


「よし。こちらに向かわせろ。ソマリ分隊、全員、戦闘準備。ここで、シグレを討ち取るぞ」


『そうこなくっちゃ』



 俺は、魔法通信を通して、小声で指示を出し、ソマリ達を構えさせた。


 少し、俺は油断していたようだ。戦場では、状況は刻々と変化していく。その変化を見逃していた。


 事態は一刻を争う。


 クラスメイトとはいえ、シグレの命を保証してやるような余裕はない。


 

「シグレ。もう一度聞くが引く気はないんだな? 俺達と殺し合いをするんだな?」


「殺し合いだなんて物騒ぶっそうね」



 シグレは、特に慌てることもなく、こくりと首を傾げた。明らかに、こちらの戦力をなめている。


 確かに、俺のチートスキルは弱い。しかし、それはシグレとて同じこと。だとしたら、やはり、情報不足だろう。


 俺達の力を見誤っている。


 そこに勝機がある。


 ラブル分隊からの援軍が俺達の位置を回り込んで、シグレの背後に位置づける。


 こちらが配置を終えたとき、それを待っていたかのように、シグレが一歩前に出る。


 同時に俺は告げる。



「戦闘開始!」



 一斉に、ソマリ分隊の兵士が飛びかかる。


 ほんの一瞬きの間に、兵士達は、シグレとの距離を詰める。獣人の脚力に加えて、俺のチートスキル装備強化でのバフ。


 さらに、四方からの同時攻撃。不意で、この攻撃を避けられるはずがない。


 はずが――



「え?」



 結果からいえば、シグレは避けなかった。


 時系列的にいえば、その事象が発生するよりも前に戦闘は終わった。


 ソマリ分隊の兵士が踏み込み、あと一歩で間合いというところ。


 そこで、彼らは消し飛んだ。


 少なくとも俺の目には、そのように見えた。


 シグレに対して踏み込んだ瞬間に、手にしていた大鎌を振るったのだ。


 その仕草は、コマ送りの中で一人だけ動き出した幽霊のようによどみなく、ただ、シグレを軸として、円弧を描き、一薙ひとなぎで、兵士を切り裂いた。



「嘘、だろ?」



 報告と違う。


 シグレの力は身体強化であって、一般の兵士を上回るが、数名で対処可能なレベル。


 そう報告されていた。


 前回の戦線では、本気を出していなかった? いや、ありえない話ではないが。


 これでは、Sランクと言ってもおかしくは……



「殺し合いなんて、そんなことしない」



 俺の混乱をよそに、シグレは鎌に身体を預けるようにして、ふふ、とかるく笑った。



「私が、あなた達を一方的に殺すの」

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