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英雄達の偽曲~親友に裏切られて全て失ったけど【コスプレ】スキルで世界征服に邁進します~  作者: 最終章
魔国征伐~魔国の西の森にて~(異世界転移12か月後)
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第74話:月夜の邂逅

「あれ? クロウよね? 久しぶり過ぎて、正直、若干自信ないんだけど。髪伸びた?」


「姿が変わったっていうなら、おまえの方だけどな。質問を返すが、おまえこそ、シグレでいいんだよな?」


「はは、確かに。あたしは悪魔になっちゃったからね」



 そう言って、シグレは、片手を開いて見せた。


 悪魔。そう表現するのは、まさしく魔人の姿であった。


 褐色の肌に赤い瞳、白銀の髪が月の光を跳ね返して、綿のようにきらめいていた。


 十二単のように着物を数枚重ねた民族衣装は、彼女の細い線をややゆったりと見せた。

 

 異様なのは右手のかま


 身長を超える長さの棒と、その先に禍々《まがまが》しくのしかかる刃。


 重量を確かに感じさせるその武器を、シグレの細い腕は軽々と抱えている。


 確かに天使には見えないと、俺はシグレの言葉に心の中で反応した。


 シグレの戦力は、以前の戦争で報告されている。細かい能力はわからないが、トーイチロと同じパワー系だ。ただ、アキトにはまったくかなわない程度で、兵士でも数でどうにかなるレベルとのこと。


 撤退が少し遅れていたが、そのおかげでソマリ分隊が丸々残っている。


 俺のチートスキルを使えばなんとかできるだろうか。


 いや、それよりも。



「一人で俺達と闘いに来たのか?」


「まぁ、そんなところかな」


「賢明じゃないな。多勢に無勢だし、俺だってチートスキルを持っている」



 それに、この場面では、俺なんかじゃなくて、アキトやカスミをマークするべきだろう。


 シグレの暴走か?


 俺は、もともとシグレとの交流があまりない。その上で言わせてもらえば、彼女は上の命令に逆らうタイプではない。


 女子グループのナンバー2。決して上に立たないが、うまくトップに取り入って、下位に落ちない。


 その笑顔に心はない。おもしろいから笑うのではなく、状況に応じて笑みを浮かべる。


 そういった処世術。そういって生き方。リスク管理の行き届いたコウモリ戦術。


 そんな彼女が、一人で勝手に動くだろうか。



『クロ隊長、どうする?』



 ソマリが、俺に尋ねてくる。



『こいつ、英雄なんだろ。逃げるか? それとも、やっちまうか?』


「徐々に距離をとれ。いつでも撤退できるように。だが、動くのはシグレの目的がわかってからだ」


『おっけー』



 勝てるかもしれないが、ここは無理をする場面じゃない。既に作戦は成功して、戦況は優位となった。シグレを倒すことに意味などない。


 だが、それはシグレにとっても同じことのはず。もしかして、戦況を理解していないのか?



「俺達なんかにかまっていていいのか? 要塞は機能を失った。王国軍は、いずれ正面から突破するぞ」


「え? そうなの? 何だ、フルイデの奴、失敗してんじゃないの」


「おまえ、わかってなくて、ここに来たのか?」


「私には私の仕事があんの。フルイデから、あんたを探すように言われたんだから」


「俺を?」


「そうそう。でも、面倒くさいから戦場を適当にぶらぶらしてたら、偶然、みつけちゃった。今日の私、ついているよね」



 面倒くさいって。


 いや、それよりも。



「何で、フルイデが俺を?」


「さぁ。私の仕事は、クロウと話のできる場をつくるところまでだから」



 フルイデの真意はわからないが、それは、正面突破がされないという前提条件があっての作戦ではないだろうか。


 

「わるいことは言わない。基地に戻れ。シグレの力があれば、撤退できる者の数も増える」



 戦争としては、魔国軍の撤退が成功すると困るのだが、ここは俺達の生存率を上げる方を優先したいところだ。


 シグレは、あごに指を当てて、しばらく考えるそぶりをしてから、うーんと唸った。



「やっぱりいいかな。戦争のことを考えるのは、フルイデの仕事だし」


「どこのサラリーマンだ」



 全体感を持たない平社員みたいだと、俺は咄嗟に突っ込みを入れた。シグレの方はぴんときていないようだったが、気にしてはいなさそうだ。



「それに、まだ負けるって決まったわけじゃないんでしょ?」


「楽観的だな。冷静に戦況を見れば――



 バーン!



 強烈な音が耳を貫く。


 要塞の方からだ。聞いたことのない類の破裂音と、要塞の前に漂う煙、それから浮かび上がる巨大な魔法陣。


 魔法は既に発動しており、そこには魔法陣と同サイズの巨大な生物が出現していた。


 要塞と遜色そんしょくない大きさのそれは、二本足で立ち上がり、そして、



「あはははははははははははははははははは!」



 高笑いをとどろかせた。


 彼の笑いで、木々が揺れる中、シグレは、ゆっくりと視線を俺の方に戻し、それから、にこりと笑ってみせた。



「ほら、まだわからないじゃない」



 二本足の巨人。


 巨大化したトーイチロは、一歩、足を前に出した。

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